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ゴミ捨て場のレイナ  作者: 凪
第1章 さよなら、大切な日々
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雪の日

 新しい年になってから、雪が3日間降り続いた。

 ゴミ捨て場は真っ白な雪山と化した。


 いつもは目覚めるたびにゴミの山を見てユウウツになるが、雪で覆われているときは忘れられる。レイナは、トムやアミと一緒に雪だるまを作り、段ボールで雪山を滑り降りた。

 

 タクマのピアノの様子を見に行くと、ジンが既に雨除けの雪を下ろしていたようだ。

 タクマは体が弱いので、雪の中に長時間いると熱を出して寝込んでしまう。だから、ジンとトムがいつも代わりにタクマの小屋の周辺の雪かきをしているのだ。


 小屋をのぞくと、「母さんの具合がよくなくて」と、自分も白い顔をしながらタクマは言った。

 着ぶくれていても細かく震えているところを見ると、寒さが堪えるらしい。


「温かいスープとか、何か持ってこようか?」

「ありがとう。でも、大丈夫」

 言葉とは裏腹に、消え入りそうな声だ。


 レイナはすぐにジンの小屋に行って相談した。

「隙間風を防いだほうがいいだろうな」と、ジンはどこかに出かけて行った。レイナはトムと薪ストーブにあたりながら待っていた。


 トムは親にゴミ捨て場に捨てられたので、基本一人暮らしだ。

 自分の小屋もあるが、夜はマサじいさんやジンの小屋で寝泊まりしている。子供が一人だけだと、人買いがさらって行ってしまうのだと、大人たちから聞いた。


 やがて、ジンは透明なシート一巻とガムテープを持って来た。

「何、これ?」

「プチプチって言うんだ。これ、つぶすと面白いぞ」

 ジンは端の方を切って、レイナとトムにくれた。二人は恐る恐る指でつぶしてみて、歓声を上げる。


「遊ぶのは後にして、タクマのところに行くぞ」

 どうやら、ゴミ捨て場の作業員が集う小屋に忍び込んで持って来たらしい。小屋は作業員が不在の時はカギがかかっているが、ジンはいつも難なく開けていた。


 3人でタクマの小屋の内側にシートを張り巡らせた。

「すごい、風が全然入って来なくなった」

 心なしか、タクマの頬に赤みが戻ってきた。


 ベッドから起き上がれないマヤは「いつもありがとう」とか細い声でお礼を言う。この寒さで、一段と弱っているように見える。

「ただ、換気は悪くなるから、気をつけなきゃダメだぞ」

 ジンが釘を刺し、3人は小屋を出た。


 レイナが振り返ると、タクマはずっとドアのところに立って見送ってくれていた。レイナが手を振ると、タクマも手を振る。


「いよっ、お二人さん、熱いねえ」

 トムが囃すと、「お前、そんなジジくさい言葉、どこで覚えたんだよ?」とジンはトムの頭を軽く叩いた。

 レイナは弾かれたように笑う。その声は雪にすぐ溶けていった。



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