表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

Ep.5 砦に残された光と手がかり

前回のあらすじ

砦は厳重に警備されたため、先に洞窟を攻略した一行。最深部にいた強そうな魔物を不意打ちかつ速攻で仕留め、奥にある宝箱を開けた…のだが、それがなんと罠箱。

罠により淫魔サキュバスに戻ってしまったキアノスは人間の姿に戻るため、そして満月によって増幅した欲望を叶えるため、青年を性的な意味で貪り食らったのであった…ちなみに合意の上で、青年は無事であった。

キアノスにはその晩の記憶が無かった。具体的には三人と別れ、月が出てくるまでは記憶があるのだが、その後どうにもならなくてふて寝したはず…らしいのだ。

一方、青年にはその晩の記憶がちゃんと残っており、キアノスがどうやって人間に変装しなおせたかも知っている。だが…


「えっと…昨晩のボクは、何をやっちゃったの?」

「大丈夫だ、何もなかった。俺が様子を見に来て、そのまま寝ちまっただけだから…」


知らないならそれでいて欲しい、とはぐらかしてはみたが…


「…なぜ深夜に様子を見に行ったのか、気になりますね」

「自分もすごく気になる!」

「えっ!いや、それは…」

「マブロ…本当のことを教えて!」

「おーしーえーてー!」

「教えてください。キアノスさんが戻れた理由も含めてです」

「わかった、わかったから!」


三人とも興味津々になってしまったため、仕方なく昨晩のことを説明すると。


「…ボ、ボク、そんな、事を…」

キアノスは自分に怯え

「…………キュゥ…」

ポルトは真っ赤になって倒れてしまい

「…キアノスさんの危機を救ったのですから、別に隠さなくても…でも…」

クレムはなんだかしょんぼりしてしまった。


「うぅ…ボクは、どう頑張っても魔物なんだね…」

「それは…仕方ないよな」

「でも、身体が暖かい…マブロが、ボクを満たしてくれたから…」

「…そう言ってくれると助かる」

「そうなると…今後は宿を2部屋取ることにしますか」

「クレムたちがそれでいいならな…おーい、ポルトー?」

「…ふぇぇ…」

「これは…治癒魔法リカバリー

「…ふぇっ!?あ、あの、自分は…えっと…」

「落ち着け、何もしないから!」

「だ、だよね、マブロってそこまでケダモノじゃないよね!」

「ケダモノって…」


・・・・・


ひと騒動あったものの、キアノスが元に戻れたので旅を再開した一行。

まずは後回しにした洞窟近くの砦に行ったのだが…


「…なんだ、もぬけの殻?」

「何かが隠れてる感じもないね…どうしたんだろう?」

「とはいえ、調査は行うべきです。入りましょう」 


というわけで入った一行だが、魔物のまの字も出てこない。逆に怖くなる静かさであった。

魔物が作ったらしく、床も丸太そのままだったりと不安定であるが…ゴーレムが乗っても壊れてなかったので足元は落とし穴以外で警戒する必要は無さそうであった。

よっぽど慌てて出ていったのか、砦の中はそこそこ散乱しており、中には森の中から見つけたであろう珍しいものがちらほら落ちていた。

その中から銅色の木の実を見つけたポルトが大はしゃぎ。


「あ!これは赤銅木の実(しゃくどうぼくのみ)!」

「ん?珍しいのか?」

「うん、赤銅木しゃくどうぼくそのものが珍しくて!」

「この木の実、何かに使えそうですか?」

「えっと、お店で高値で買ってくれるんだけど、本来の使いみちは…確か、お薬がなんとかって店員さんが言ってたよ」

「お薬の…では持っておきましょう。使うかも知れませんので」

「はーい!」


そうして探索しながら最後の部屋にたどり着いた一行。最後の部屋もやはりもぬけの殻だったが…


「なんだこの旗」


不思議な紋様が描かれた、四角い旗がそこに掲げられていた。

それこそ、国旗にでも使うようなデザインである。問題は…


「この紋様は…サザンリーフでは見たことありませんね」

「自分も!少なくともモスウッドと、ブライテンスフィアは関係ないよ!」

「ブライテンスフィア?」

「この先にある港町!」

「港があるのか…この旗も、一応持っていくか?」

「ですね。この旗から魔王に繋がるかも知れませんので」

「うん…あ、これって…」


旗の下に、何やら箱があった。


「待ってください。識別魔法スキャニング…」


今度は二人も我慢した。また変な目に合うのはゴメンだし、キアノスに何かあったら特に青年が大変な目に合うのだ。

そうして識別された中味は。


「…罠はないようです。玉と、杖と、腕輪…でしょうか」

「じゃあ、開けるよ!」

「どうぞ」


ポルトが開けた箱の中には、黄色く透き通った玉と、赤い宝石が埋め込まれた杖、それと白く輝く腕輪が入っていた。

しかし、開けた瞬間にキアノスが後ずさりしてしまった。


「ど、どうした?」

「なんだろう…ちょっと、怖くて…」

「確かに、聖なる気がすごいです。魔物にとっては怖いものかもしれませんね」

「そんなものがなんでここに…これはクレムがつけるべきか?」

「…よろしいのですか?」

「うんうん!」

「そう、だと思う…ボクには付けられなさそう…」

「それでは、失礼します」


クレムが腕輪を付け、新たな杖を握ると、周囲の雰囲気が清らかになった…気がした。


「力が…みなぎります!」

「なんか、物凄い装備なんだな…って、キアノス?」


後ろを振り返ると、キアノスが部屋の隅で縮こまっていた。まるで雷に怯える子供のようだ…見た目は子供だけど。


「どうしたんだ、そんなに離れて」

「な、なんというか、クレム、さんが怖くて…」

「それほどですか…では、腕輪は外したほうが良さそうですね」


クレムが腕輪を外すと、雰囲気が元に戻った…気がした。キアノスもなんとかクレムに近づけるようになったようだ。


「クレムが強くなるなら、自分たちはもっと前に出てもいいよね?」

「そうですね…不意打ちされると怖いですが、それは…キアノスさん」

「ふぇっ?」

「万が一の時は、お願いします」

「う…うん…」


「そして、この黄色い玉はどうするか…これも持っておくか?」

「そうしましょう…こちらはキアノスさんにおまかせします」

「分かった…!」


そう言ってキアノスが黄色い玉を持った瞬間。


「うわ、あぁぁぁ!!」

「キアノス!」「キアノスさん!」


黄色い閃光が彼女を包み、光が止んだ後は。


「…あれ、服がちょっとキツイ…ボクは、どうなったの?」

「…キアノス、なんか大きくなってないか?」


黄色い玉が無くなっており…それを取り込んだのか、少し成長したキアノスの姿があった。

その影響で、服がパツンパツンになってしまってる。


「ど、どうしよう…これだと小さすぎるよ…」

「…一度モスウッドに戻りましょう」

「だな…このままだと俺の目に毒だ」

「えっ、マブロの目が悪くなっちゃうの…?」

「いや、そういう意味じゃない」


・・・・・


モスウッドに戻り、キアノスの衣服と戦闘衣服を新調した一行。

それから乗合馬車を利用し、一行は港町「ブライテンスフィア」に滞在していた。目的は船に乗り、大都市「イーストフォート」に向かうことであったが。


「イーストフォート行きは翌朝出発だそうです」

「翌朝か…今日中に、ひとしきり買い揃えたほうがいいかもな」

「オッケー!」

「ボクは…マブロと、お買い物したいな…」

「では、ポルトさんは私にお付き合いください。では、また宿屋で」

「あいよー。んじゃ、行こうぜ」

「またねー!」


そうして町を散策する、青年とキアノスの二人。

前は下手すると親子だったが、キアノスが成長したことで多少なりともカップルっぽくなった。

ただ、青年にとってはいい話だけってわけでもなく。


「…キアノス、その、だな…腕にしがみつくのは、そろそろ止めにしないか?」

「えー…ボクはこうしていたいな…」

「…後少しだけな」


キアノスには当初から歩いてる途中で腕にしがみつくくせがあったのだが、成長したことで青年にとっては恥ずかしくなってしまったのだ。

特に、ポルトほどではないが存在感が出てきた胸が問題であり…


「あ、もしかして…」

「察してくれたか?ちょっとやばいんだよ…」

「…後で、ボクがなんとかしてあげるから!」

「そうじゃない!」


一線超えてしまったからか、成長したからか…躊躇が若干無くなったキアノスに、振り回される青年であった。


(続く)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ