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Ep.4 初めてのダンジョン、初めてのXXX

前回のあらすじ

町の酒場でゴタゴタに巻き込まれながらも、無事に女戦士「ポルト」を仲間に迎えた一行。

酒場のマスターから、南の洞窟と、その近くにある魔物が作った砦の調査を頼まれ、一行はまず魔物が作った砦を調査することに。

ポルトが仲間になって数日後、青年たちは砦の近くの木陰に身をひそめていた。

砦にはゴブリンを始めとした魔物たちが出入りしており、真正面から入ろうとすれば砦にいる全ての魔物に襲われかねない。

かと言って迂回しようにも、狼などの五感に優れた魔物が周囲を張っており、なかなかに入りづらい。


「…どうしよう、このままだと入れないよ…」

「キアノスでそれだと、俺たちじゃ無理だな…どうする、クレム?」

「…夜中まで待つ、というのはどうでしょうか?」


人間の砦相手なら、大体は夜中に襲撃するのが定番である。しかし、ポルトがその可能性を否定した。


「おそらくだけど、夜行性の魔物がたくさんいるよ」

「うん…そういう魔物の気配がいっぱい…」

「マジか…ゲッ」


話の途中で、昼夜関係ない上に強敵のサンドゴーレムが砦に入ってるのが見えてしまい、打つ手が消えてしまった。


「…諦めて、洞窟を先に探索するか?」

「そうしようよ」

「自分も賛成」

「その方が早そうですね」


というわけで、一行は洞窟に向かうのであった。


・・・・・


洞窟というのはすべからく暗い。松明でもカンテラでも、とにかく明かりを確保しないとまともに探索できない。

今回は洞窟の調査が分かっていたため、青年がカンテラを持って探索していくことに。


「カンテラ持ってきててよかった」

「暗闇は厄介ですからね…」

「突然魔物が出てきてもおかしくないよね!」


そんな中、カンテラで照らされた先にキアノスの姿が。

カンテラに寄り添った3人よりだいぶ前にいるため、普通なら結構な暗闇にいることになるのだが。


「キアノスー、そんな前にいて大丈夫かー?」

「うん!ボク、夜でも目がよく見えるんだ!」

「…それもそうですね、彼女も本来は夜行性ですから」

「いいなー…」


淫魔サキュバス、あるいは夢魔インキュバスという存在は夜に活発に動き出すものである。

そのためか、夜闇の中であろうと見通せる目をちゃんと持っていた。


「あっ、魔物がいる!」

「敵意はありますか?」

「あるよ!」

「分かった!クレム、カンテラを頼む!ポルト、行くぞ!」

「分かりました」

「よーし!」


青年が剣を、ポルトが斧を構えて突き進む。クレムは左手にカンテラを、右手に木の杖を持ってついていくのであった。

その明かりの先で、キアノスは減退魔法ウィークンを魔物に掛けていた。


・・・・・


四人のコンビネーションにより、大きな問題もなく地下深くまで潜り込めた。

だが、その地下深くにいたのは…


「…隠れてっ!」


思わずポルトが飛び退き、三人も身を隠す。これまでとは格が全然違う気がする魔物がそこにいたのだ。


「あれはなんだ…俺から見てもやばい予感しかしない」

「臭いが強烈すぎるよ…!」

「あれ程の不浄…あれが町に来てしまっては…!」


人間三人が臆してしまったが、唯一キアノスだけはやる気になっていた。


「…マブロ、今のボクたちなら、行けるよ」

「マジか?」「本当?」

「ボクが強化魔法・改(ハイブースター)をマブロとポルトに掛けるから、それで攻撃して!」

「そうなると…私は防御魔法ディフェンダーを掛けたほうが良さそうですね」

「うん、ボクとクレム、さんは支援に集中するよ」

「分かった…ポルト、やるぞ!」

「おーっ!」

「それでは…防御魔法ディフェンダー」「強化魔法・改(ハイブースター)!」


・・・・・


勝負は一瞬だった。

「行くぞぉぉ!」「よっしゃぁぁ!」

二人が雄叫びをあげながら突撃、そして魔物がふりむいた瞬間に

閃光魔法フラッシャー

クレムが閃光で魔物の視界を奪い、その隙に強化された二人が一閃。たったそれだけ、それが致命傷。


倒れた魔物の向こうに豪華な箱が置かれていた。見るからに宝箱である。

「おおっ、宝箱!?」

「開けてみようよ!」

二人がワクワクしながら駆け出す。

「ちょっと、中味を探知しないと」

クレムがいうより早く宝箱が開かれる、と同時に箱から煙が吹き出した。

「「うわーっ!?」」

「まったくもう…!転移魔法リターナー!」


・・・・・


モスウッド近辺に転移した一行、しかしお互いの姿は一部とんでもない変わり方をしていた。


「うわっ、右腕がウロコだらけ…!」

「背中が少し重たいですね…」

「左腕が重たいーっ!」


早い話が、身体の一部が魔物化してしまったのだ。そして、元から魔物であるキアノスはというと。


「うわわ、これじゃ町に入れないよ!」

「…というか、淫魔サキュバスって本来はそんな見た目してるんだな…」


完全に魔物の姿に戻ってしまっていた。

青白い肌に、桃色の髪をなびかせ、コウモリの羽とハートの尻尾をもつ、人型の魔物。

それが淫魔サキュバスであり、キアノスの正体であった。


「おーもーいー!!」

「こっちもだんだんウロコが増えてきてる気がするぞ…クレム、僧侶の魔法でなんとかなるか?」

「試してみます。治癒魔法リカバリー


治癒魔法リカバリーを唱えた瞬間、クレムの背中から羽が消え失せた。

「…大丈夫そうです。すぐに掛けますね」

「はやくっ!この腕怖い!」


こうして、一部魔物化は無事解消されたのである…が、問題はキアノスである。


「どうしよう、着てた服もどこかに行っちゃった…」

「人間っぽくなったりはしないのか?俺は後ろを向くから」

「分かった…やっ!」


…しかし、何も起こらない。キアノスは未だに魔物の姿である。


「…ダメなようですね」

「どどど、どうしよう…!」

「一体、何が足りないんだ…?魔力か?」

「それかもしれない…クレム、さん、魔力薬をちょうだい?」

「仕方ありませんね…」

「ンクッ…それじゃあ…やっ!!」


…それでも何も起こらず。


「なんだろう、魔力を使ってない気がする…」

「魔力いっぱいからやってみたら?」

「どうかなぁ…」


その後、魔力薬をいくつか飲み、魔力に満ちた状態で掛けるも…


「…だめだーっ!」

「えーっ!?」

「そうなると…町には入れませんから、今晩はこの辺りで野宿していただくことになります」

「それは大丈夫なんだけど…なんで変装できないんだろう…」

「…うーん…いや、まさかな…とりあえず、明日の昼頃にまたここで会おうな」

「分かった…」


青年に別の予感が漂ったものの、この場は諦めて町に戻ったのであった。


・・・・・


夜中、青年は宿屋から月を見上げていた。

この日は文句なしの満月で、お酒が飲める人はこの景色で飲めるんだろうな…と思ったその時。


「…ん?キアノ…ス…!?」


青年の前に、身体自体がほのかに光ってる淫魔サキュバスが現れたのだ。


「はぁ…はぁ…マブロ…マブロぉ…」

「ど、どうしたんだよ…しかも、なんか弱ってないか…?」

「あのねぇ…ボク、なんで戻れないか、思い出したんだぁ…」

「思い出したって…おわっ!?」


弱ってると言うか、火照ってるキアノスに押し倒されてしまった。そして、彼女の唇が青年の唇にくっつく。なんとキスである。


「ボクたち淫魔サキュバスはぁ…男の人の精が、重要だったんだよぉ…」

「…本当にそっちだったのかよ…」


そう、「別の予感」とは精力不足。旅に着いてきてから、彼女が「そういう事」をやってた形跡はなかったし、青年自身もその辺りを全く気にしてなかった。

これまではそれでもなんとかなってたのかも知れないが、あの煙で魔物に戻されてしまったことで、精力不足の影響が顕著に出てしまったのだろう。

更にこの満月である。一部の魔物は月の光で強くなる…という噂があったが、どうやら彼女サキュバスもらしい。強くなるのは力だけなく、欲望も強くなったようだ。


「お願い、マブロぉ…ボクに…ボクにぃ…」

「…そういうことなら、付き合ってやる。ただ、場所は移したほうがいいな…」

「マブロ…マブロぉ…!」


こうして青年とキアノス(サキュバス)は宿から姿を消し、翌朝になっても戻ってくることはなかった。


・・・・・


翌昼、二人が予定の場所で見たものは


「すぅ…すぅ…マブロ…」

安らかに眠る、人間に化けたキアノスと

「キアノス…ごめんな…」

キアノスを抱きしめ、なにかにうなされる青年であった。


「これは…どうやって起こしましょうか?」

「ここはやっぱり…起きろーっ!!!」


「うわっ、キアノスっ!!…あれ、夢?」

「むにゃむにゃ…」


(続く)

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