Ep.9 戦士ポルト
前回のあらすじ(?)
水の四天王を倒すべく、海底神殿に向かった一行。次々と出てくる魔物を、新調した武器で薙ぎ払っていく。キアノスの持つ武器は呪われた武器である…のだが、魔物にとってはむしろ好都合なのであった。
そして水の四天王と対峙。彼によってキアノスとポルトが操られ、ピンチになった青年とクレム。だが、青年によって何かが満たされたクレムが魔法を連発、なんとか撃破したのであった。
海底神殿の捜索が一通り終わった後、クレムの転移魔法で街に帰還した一行。
もう夜明けであり、空がかすかに青くなっていた。
「眠い…」
「ボクも…」
「早く、宿に戻りましょう…」
「そうだね…」
眠気をこらえてなんとか街の宿屋に戻り、部屋分けも忘れて4人で眠りこけるのであった…
・・・・・
翌日、イーストフォートはあいにくの雨。
昨晩の疲れが取れてないのもあり、この日は冒険者ギルドに向かうのみとした。今度は四人一緒に、である。
「いらっしゃいませ…あ、魔王関連の情報をお求めですか?」
「その通りだ。水の四天王はとっちめたんだが、次の情報が入らなくてな…」
「それと、この装備の鑑定もお願いします」
クレムが出したのは、海底神殿の宝箱にあった二つの腕輪。激戦を終え、疲れが溜まってた一行はその場で装備せずに持って帰ってきたのだ。
「かしこまりました、それでは鑑定料をお願いします」
「はい…これで」
「では、お預かりします。情報も合わせて探しますので、しばらくお待ちください」
受付の人が奥に下がる。ふと青年が後ろを見ると、キアノスとポルトが他の男たちに声を掛けられていた。
男たちはしつこく声を掛けてたようだが、ポルトが怒ってるようで力で振り払っている。
男の一人が怒り掴みかかろうとしたところに、彼女の拳が炸裂し、一撃でギルドから飛び出してしまった。それを見た他の男たちはあっさりと退散。
キアノスがなんか慌ててたが、ポルトに抱きしめられたことで少しは落ち着いたようだ。
「お待たせしました」
受付の人の声で前を向き直す。腕輪と、情報が書かれたであろう手紙が渡された。
「まずは鑑定結果からです。これらは「不可知の腕輪」と呼ばれる、隠密用の装備です。呪い等は検出されませんでした」
「隠密ってことは、気配を遮断するとか?」
「鑑定した結果、気配は遮断できませんが姿を遮断できることが分かりました」
「姿を…つまり、透明人間ですか?」
「そうですね。二個双方をはめることで、装備者が透明になります。ただし、先程も言いましたが気配を遮断する効果は確認されませんでしたので、過信は禁物です」
「なるほどな…」
一通りの説明で納得した青年は、腕輪を荷物入れに戻した。
一方、受付の人は手紙を持って次の説明を行う。
「次に魔王に関する情報ですが、こちらはまだ有力な手がかりが見つかってません」
「そんな簡単に情報は出ないか…」
「ただし、先日ご案内した水の四天王に匹敵する、危険な魔物の存在が確認されました。それも二体です」
「二体…!?」
「はい。一つは街の北、ハンズロックと呼ばれる渓谷にて確認されました。この峡谷はいつも突風が吹くのですが、ここ最近はその風が異常に強くなってしまって探索すらままならない状況です」
「その原因が、魔物であると?」
「はい。風が強くなる直前に探索した冒険者から「大きな亀に襲われた」と報告がありました。この亀が件の四天王ではないかと思われます」
「確かに、山間の峡谷に亀って滅多に無いからな…」
「いることにはいますが、ここまで遠いと違いますね」
地図を見ながら話を聞く二人。精度はそこまで高くないものの、ハンズロックと呼ばれる峡谷が海から遠く離れた場所にあるのは一目瞭然であった。
「もう一つは逆に街の南、ペア・ボルケーノと呼ばれる火山です。この地にドラゴンが降り立ったと報告があり、報告以降に魔物の統率が確認されています」
「ドラゴン!?」
「はい。ドラゴンといえば伝説の魔物ですから、数多の冒険者が向かったのですが…」
「…その全員が、大怪我を負うか、亡くなってしまったと」
「はい…大怪我で帰ってきた人は、みなさん揃って統率された魔物たちに追い返されてしまったそうです。また、登録者の二割ほどが亡くなってしまいまして…」
「うわっ…被害甚大じゃねぇか」
「なので、よっぽどの実績がある方にのみ、情報を案内することにしております。みなさんは水の四天王を討伐し、海底神殿を制圧しましたので、実績十分と判断しました」
「そりゃありがたい…ん?海底神殿を制圧した、までは報告してないよな?」
「ギルドの調査班より報告がありましたので」
「なるほどな…」
「現時点で提供できる情報は以上です。また情報が増えましたら、ご案内します」
「ありがとうございました」
「ありがとな!」
・・・・・
退屈してた二人を連れ、宿屋に戻った一行。戻ってもなお、ポルトはカンカンに怒っていた。
「聞いてよマブロ!自分、すっごく嫌なやつに声を掛けられたんだよ!」
「そういや、俺が待ってる間になんかあったな…何があったんだ?」
「証拠もないのに、キアノスに魔物は出て行けとか言い出してきてさ!頭にきたから殴った!」
「証拠もないのに?」
「うん…ボク、魔物だってバレないようにジッとしてたんだけど…」
「自分もキアノスは魔物じゃない、って言ったのに!」
「それは…怒っても仕方ありませんね」
どうやら男たちはキアノスに因縁をつけ、それにキレたポルトが本気で殴り飛ばしたようだった。
…まあ、その因縁が正しかったのは危なかった。バレていたら身の危険である。あるいは何らかの理由でその男たちには分かっていたのだろうか?
その後もポルトの怒りは収まらないようで、彼女が珍しく愚痴を延々と垂れ流すのであった。
・・・・・
その夜。雨はあがったが、空は曇っているため月はうっすらしか見えない。
今日の青年はポルトと相部屋なのだが、そのポルトが酒場から帰ってこない…と思ったところで、ドアが開く音がした。
「お帰り、ポル…ト…」
「はぁ…はぁ…ただい、ま…」
「…おい、何があった!?」
帰ってきたポルトは、なんと血まみれであった。うっすらとした月明かりでも分かるほど、身体がところどころ赤黒く染まっていたのだ。
「ギルドの、嫌なやつに…襲われたんだ…」
「まさか、因縁ふっかけてきたやつか!?」
「うん…不意打ちされて、殴られて…自分は…自分は…!」
「落ち着け落ち着け…順番に話せ、な?」
「分かった…」
ポルトが語ったのは以下の通りである。
酒場からの帰り、背後から急に襲われて殴られた。その衝撃で気を失い、倒れてしまった。
次に気づいた時はどこかの裏路地で、件の嫌な奴らが集団で殴ったり蹴ったりしてきた。
その後、服を破いてきて、ものすごく嫌な予感がしたので、なんとか立ち上がって嫌な奴らと殴り合い。
かろうじて殴り勝った彼女は、身体の痛みをこらえて、なんとか宿屋にたどり着いた。
「…悪いが、カンテラを使うぞ」
カンテラに火をともした先に浮かんできたのは
「…ポルト…!」
血まみれな上にアザも大量に刻まれ、破かれた衣服がかろうじて局所を隠していた、痛々しいポルトの姿だった。
顔に傷やアザが出来てなかったのは、不幸中の幸いだろうか。
「ちょっと待て、今クレムを呼ぶ…いや、あいつらが襲ってくる可能性もあるか…くそっ!」
「マブロ…ごめんなさい…」
「何も謝らなくていいだろ!あいつら…!」
「どうされまし…ポルトさん…!」
「クレム!至急、回復魔法を頼む!」
「はい…回復魔法・改!」
おそらく喧騒を叱りに来たのであろうクレムも、事態を把握してすぐに処置してくれたのであった。
・・・・・
夜は続く。宿屋の一室は怒気に包まれていた。
キアノスは別室で寝ており、ポルトも安静にしている。そして、青年とクレムが話をしていた。
「こうなってしまったら、もう無視は出来ませんね」
「ああ、危うくヤラれるところだったんだ…もう、キレていいよな?」
「ですね…しかし、こうして強硬手段に出てくるとは…」
「俺たちの村は良い人ばっかだったけど、こういうゲスな野郎もいるんだよな…くそっ」
それから、しばしの無言。しばらくの後、クレムが静かにつぶやく。
「…マブロさん、私は今、怒っています」
静かに、しかしその語気は間違いなく強く。
「この暗い感情は、どこに向けたら良いのでしょうか」
「もちろん、あいつらだ…」
「…あの人たちは大罪を犯しました。罰を下しても、良いですよね…!」
「ああ…いつか、絶対に…!」
カンテラが灯す光の横で、二人は昏い決意をしたのであった。
(続く)




