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たった一つの願い  作者: 神城リーナ
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1.アメリカからの帰国

今私は雲海の上を飛ぶ飛行機の中で白みかけた夜空を眺めながら、これから始めて暮らす日本の生活に凄く不安な気持ちでどうしたらいいのかさえ解らない、

そんな虚ろな気持ちのままただぼ~~っと段々と明るくなってゆく空を見ている。

飛行機に乗ってもう1日近く立っているのだろうか?

すご~~くなが~~い時間をこうして真っ暗な窓の外を見ていたような気がする


私の横ではお父さんがスースーと寝息を立てながら眠っている。

こんな不安な状態だというのに、よく眠れるわね・・お父さんったら・・


『お父さんだって辛いんだから、私が悲しい顔は見せれない』


お父さんの前だけででも、笑っていようって決めたんだから!!


お母さん・・


私を置いて何で死んじゃったの?

私なんかを助けるために、私さえ庇わなかったら、生きていられたかもしれないのに!!


『お母さんがまだ死んでしまったという実感さえない私』


私が意識を取り戻した時には、お母さんはもう居なかった・・

それがまだ信じられない。


あれはまだ2か月近く前

昨年の12月24日のクリスマスイブの日、外は凄く寒くて吹雪になっていたそんな中を、クリスマスイブの料理をする為に、スーパーに買い物に来ていた母アンジェリーナと私は吹雪の中を買い物袋を下げて二人で家路を急いでいた。


私はママに手を引かれながら

「ママ、寒いね~帰ったら温かいもの食べたいね。」

と私がいったら、ママは、

「じゃあ~リーナの好きなコーンスープ作ってあげるね」

と笑って答えてくれたんだ。

その笑顔が今でもすぐそばにいるように思い出せる。


ちなみに、なぜ男の私がリーナなんて名前かというと、ママもパパも生まれるのは女の子だと思っていて名前もママのアンジェリーナからとったリーナしか考えていなかったらしい。だから服も女の子の服しかかってなくてそのまま女の子としてその時まで育ってしまった。


 そんな話をしながら歩いていたら、吹雪が一段と酷くなり、風に煽られた自動車が突然私と、ママの方に突っ込んで来た。逃げる暇もなく私とママはその車にはねられ私は気を失った。

 ママは、咄嗟に私をかばってくれた為に、即死状態だったらしい。




私も、1か月の間意識が戻らずに昏睡状態で生死をさまよっていたらしい。

パパももう私も死ぬのではと諦めかけていたところだったみたい。

私の体は全身の神経がズタズタに切れていて、治ったとしても一生車いすの生活だろうとお父さんは言われていた。

多分お父さんとしては、私は死んだ方が楽だったのかもしれない。

でも意識がもどってから、私は連日の辛いリハビリに耐えてどういう訳か驚異的な回復力で回復して一週間前に退院した所なの。


退院はできたけれど失意のどん底のパパとまだ小さな私ではこのままアメリカで暮らすのは難しいと帰国を決めたのだった。


子供の私でも、パパの落ち込んだ姿を見ていることが出来なかった。殆どご飯も食べずに毎日どんどん痩せていくパパを見て、子供心にパパになにかしてあげたい・・・・

 そんな思いで、かわいいワンピースを着て、エプロンを着けママがよく作ってくれたご飯を、パパに作ってあげた。そしてパパを小さな私の体で抱きしめながら、「今日からは私がママの代わりをしてあげるね」とパパの頬にそっと口づけをした。


パパも、笑顔で私を抱きしめてくれて、

「ありがとう。リーナは優しいね。大好きだよ。元気が出てきたよ。そのままでいてくれよな」


って笑顔で答えてくれながら、私の作った料理を一口食べ・・・


「ママの作ってくれた味じゃないか。。。」


ってビックリして、

「リーナママに料理習ってたのか?」

と驚いて聞いてきた。


私も、ママの料理の手伝いはしていたけれど、自分で作った事はなかった。

自分でも不思議なのだけど、事故にあって以来今まであやふやだった記憶が鮮明に思い出せるようになっていた。

今思うと、それが完全記憶っていうんだろうと思える。 

でもその時はパパに心配かけたくなくって、

「そうパパびっくりさせようと思ってママにこっそり習ってたんだよ」

と答えてあげた。


それから毎日、ママの癖を思い出して、


ママの仕草


ママの喋り方


食事の作り方


すべて記憶の中から完全に読み出して、パパに精一杯の笑顔で接してあげた。

パパも、そんな私を見て


「ママがそこにいるみたいだよ。」


とだんだん元気を取り戻してくれる。

それが嬉しくて、ママの仕草でパパをそっと抱きしめる。


パパは、私のほっぺに優しくキスをして

「今年リーナも小学校に上がる。だから日本に帰ろうと思う。リーナも日本に帰ってくれるか?」

とやさしく聞いてくれた。


だから私は


「パパの行く所だったらどこでも付いてゆくよ」

と笑顔で返事を返してあげたんだ。


そして昨日、ジョン・F・ケネディ国際空港 からこの飛行機に乗って、私とお父さんは成田空港に向かっている。


私のまだ一度も見たことのない国、日本

お父さんだけが知っている世界


私はそんな世界の中でどうやって生きてゆけばいいの・・・お母さん


つづく・・・



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