きみがくれた世界
ある少女が困っている神様を助けました。
少女に感謝した神様は、世界をきみの望むままに変えてあげるといいました。
そう、はじまりはまるで昔話にある恩返しのように。
* * *
夢は心の投影だ。それを知っているぼくにとって夢はつまらないものにしか映らない。
でも、そんな僕もときどき、始まりの夢をみる。
――世界はきみのものだ……。世界の在り様をきみは変革できる。
きみの願いならば、ぼくはどんな世界も作り上げてみせよう。
だけど、きみはいつもこう言うんだ。
「……必要ないわ」
――――まさか断られるとは思わなかったな。
「だって、一人の意思で変わってしまう世界なんて、凄くつまらない。そう思わない?」
「平和な世界は美しいし、正しい……けど、一人で何かも変えて、何もかも思い通りになって……そこに果たして自由があるといえるのかな」
「もし、一人の意思ですべてが変わってしまう世界があるなら、私は、そんな世界滅んじゃえって、思っちゃう」
少女はさも当たり前かのように、そんな物騒な言葉を並べ立てる。 けれど、その瞳はどこまでも純粋だった。
だから、そんなきみに興味をもって、純粋なきみにあてられて、ぼくはこう言ったのだと思う。
――面白いな、きみは。
だけど、その後に少女から紡がれる言葉はもっと意外なものだった。
「ふふふ、あなたもとっても面白いわ……そうだ、あなたもこっちへこない?」
――ぼくがこの世界へ?
「ええ、きっと神様として遠くから眺めるよりもきっと楽しいわ」
笑いながら、少女は手を差しだしてくる。
そうして差しだされた彼女の手を、きみがくれた始まりの手を、ぼくは取る。
ずっとつまらないと思っていた夢。
でも、ぼくにとってその夢だけは間違いなく、黄金の夢だった。