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空高く竜は舞う

こんにちは! ワセリン太郎です!


第二話行きます!



※現在進行形で連載中の、お下劣ウンコ小説【ビニール傘と金属バット ~レアさん、やりすぎですよ~】(N2931DD)の続編です。

https://ncode.syosetu.com/n2931dd/


 本作(続編)では、登場人物、世界観等についての基本的な説明を省略して描いておりますので、お時間がございましたら、お手数ですが前作からお読み頂けると幸いでございます。ちなみに本作からお読みになられると、多分、全く意味がわかりません!!

「……バイト? 英梨華(えりか)ちゃん、アルバイトがしたいの?」


 休み時間、アタシの独り言を聞いた隣の席の智子が、こちらを覗き込んで興味深そうに訪ねてくる。


「うーん。帰宅部だし、まだ一年生だし、とりあえずバイトでもしてみようかなぁ……ってね。ウチ、お母さんがお金にがめついから、お小遣い少ないんだよ。まあアタシだけじゃなくて、お父さんも少ないみたいだけど。智子ん()は?」


 苦笑しながら彼女は答えた。


「うーん、どうなのかなぁ。そもそも、よそのお(うち)の平均金額がわからないし……実際、みんなは幾らぐらい貰ってるんだろうね? あ、ちなみに我が家はお小遣いはありません。必要な時に両親に言って、それが必要なものなら買って貰える……ってカンジだよ?」


「そっかぁ……」


 まあ、優等生でいいとこのお嬢様である、彼女らしい返答。

 

 だがアタシはこう思う。智子のようなお小遣い制度の方が、実は年間トータルで見た場合非常にお得なのでは? と。いや、絶対にそうだ、そうに決まってる!


 まあ彼女の父親は、地元では有名な大企業に勤めてるみたいだし、年中母親が『貯金! 節約! 節水! 節電!!』などと大騒ぎしている我が家と比べてはいけないのだろう。よし、だめだ。バイトして稼ぐしかない。


 まあ“何を買う”といった目的があるわけでもないんだけど、そこは当然、お金というものは幾らあっても困るものではない。それに、何かどうしても欲しい物が出てきてから慌てても手遅れ。世の中、先手必勝なのだ。ああ、アタシって何て賢いんだろう。


「それで英梨華ちゃんは、どんなアルバイトがしたいの?」


 うっ、そこを考えてなかった。


「ど、どんなバイトがあるのかな? 智子知ってる??」


「調べてないんだ」


「うん、まあ……あっ、帰りにコンビニでバイト情報誌見てみる!」


「それってさ。英梨華ちゃんの性格だと……情報誌を見てたら、そのままコンビニのガラス窓に貼られてる『バイト募集』の張り紙に目移りして、“これでいっか”みたいな感じで決まっちゃうパターンじゃないかな?」


 うっ、この女鋭い……


 アタシがそう思って渋い顔をした時だった、突然背後から聞き慣れた声が掛けられたのは。


「英梨華や。お主、バイトがしたいのかえ?」


 うわ、鶴千代か。まずい。


 下手に情報を与え、『ウチも一緒にやる!』などと言い出されてはかなわない。もしそうなると、こやつはバイト先で騒ぎを起こす可能性が非常に高いので、アタシにまでとばっちり(・・・・・)が来る危険性がある。よし、何とかごまかそう。


「いや、例え話みたいなモンだしさ、あんま気にしないで」


 またややこしい話になる前に話題を変えよう……と考えていると、あごをさすって聞いていた鶴千代が、変な事を言い出したのだ。


「ときに英梨華や。アルバイトであれば、お主のジイサマを頼ればよいのじゃぞ。何も街中で就労し、レジ打ちをしたり、飲食店で注文取りをするだけがバイトではないでの」


「ジイサマって……ヒゲのじいちゃん?」


「うむ」


 母方の祖父であるヒゲのじいちゃんか。白い長髭で、いつもオシャレなスーツに身を包んでおり、アタシにこっそりとお小遣いをくれては……母に見つかって『あまりウチの子を甘やかさないで!』と怒鳴られているのだ。


 いやちょっと待って、何か言い方が引っかかる。一体、鶴千代はどんなバイトを想定しているのだろう?


 そもそも“街中での一般的なお仕事”以外、この高校に上がりたてのアタシに務まるワケがない。いや、それすらキチンとこなせるかが不安なのに。


 だいたい働いた事がないので、未経験でも何とかなる程度のお仕事を……って、そもそも何なのよ、“街中以外のお仕事”って。逆に興味が出てきた。ダムか? ダムの点検作業とかなのか?? そんなん無理だぞ、どう考えても。


 アタシと似たような感想を持ったのか、智子が鶴千代へと問いただした。


「鶴千代ちゃん、何か“街中じゃない場所でのお仕事”っていう風に聞こえたんだけど?」


「うむ、詳しくは言えぬのじゃ」


「そ、そうなんだ……」


「許せ、智子」


「う、うん……」


 何なのよ、“言えないバイト”って!? アタシ絶対やだよ、そんな怪しげな事させられるのは! あ、でもジイちゃんがどうこうとか言ってたっけ……? 何だ、ホント一体どんな仕事なんだ?


 そういえば、祖父がどんな仕事をしているのか、アタシはよく知らない。何か会社の社長さんをしているんだとか……昔、父から聞いた事はあるのだが。あれ、そういやウチのお父さん自体、どこに勤めてるんだっけ? 何処かの事務をしているとか何とか……あれれ? 何で家族のアタシがそれを知らないんだろう??


 そう考えた瞬間、一瞬意識がグニャリと揺れ、急激に左の手首が熱を帯びる。驚いてシャツの袖元をめくり、その部分を凝視するが……特に変わった様子は見られなかった。


「ちょっと英梨華ちゃん、大丈夫?? どこか具合が悪いんじゃ……」


 机の上で急にぐらついたアタシを見て、智子が心配そうに肩を支えて来た。


「う、ううん……ありがと。大丈夫」


「ふむ、やはり間違いなさそうじゃの。ちと待っておれ、英梨華」


 アタシの様子を眺め、そう言い放った鶴千代は……手首に巻いたブレスレット型のウェアラブルフォンを操作し、誰かに電話をかけ始める。


 だが本当に、今のグラリは一体何だったのだろう? まさか病気か何かだろうか? ちょっと怖い。いやでも、アタシは生まれてこの方、一度たりとも(・・・・・・)病気になった事がない健康優良児なのだ。

 生まれて、物心つく前はどうだったのか知らないが、記憶がはっきりしてからは、風邪にすら掛かった事がない。なので実は……皆が『風邪で熱が出て苦しい』などと言う感覚が、体感的に全く理解できないのである。あれってホントにどんな感じなんだろ? あっ、もしかしてこれが風邪か!? そうなのか!?


 そんな事を思っていると、先程から鶴千代が電話を掛けていた相手が通話に出たらしく、彼女が大きな声で……


「うむ、ウチじゃ! 鶴千代じゃ! ジイサマ(・・・・)、お久しゅう。いやの、実は英梨華のやつが……うむ、うむ、そうじゃな。うむ、そうじゃ」


 ん? ウチのおじいちゃんと電話してるのだろうか?


 そして彼女は非常に大きな声で、とんでもない事を口走ったのだった。


「そうじゃ! とうとう英梨華のヤツめも“あの日”がすぐそこまで来ておるという事じゃな! うむ、今夜は家で赤飯でも炊いてもらおうかの!!」


──ちょっ!? 大声で何て事を言ってくれてんの(・・・・・)コイツ──!?


 突然どよめき、ざわつきだす教室内。


「つ、鶴千代ちゃん、それ、アルバイトの話だよね!?」


 智子が必死にフォローしてくれるが、時既に遅し。男子達は良くわかっていない様子だが、女子生徒達がその内容を聞き逃す筈がない。更に追い打ちを掛け、大声で皆の誤解を招く大馬鹿者。


「うむ! 遅れに遅れておったので心配したのじゃが、これでようやく英梨華も“大人の階段”というやつを一歩前進したという事じゃの! いや、めでたいめでたい!」


「ちょっ、鶴千代おま! フッザケんな、いい加減にしろ──!!」


 その時、クラスで一番のお調子者である(みつる)が小走りに近付いて来る。


 それからヤツは珍しく余計な勘を働かせ、非常にアタマの悪そうなダミ声で、馬鹿な小学生男子がノリでやりそうな、あまりに直球な内容を質問しようと……もういい、アタシの逆鱗に触れた。


「えっ、なになに? ああっ! 英梨華、おめー! もしかしてアレか? “せい(・・)……」


  ブチイッッッッツ!!


 ──刹那──


 重心を落として腰溜めに拳を握り込み、教室の床へと脚力を預け、強く沈める。そして…


…ダンッ!!


「──“昇〇拳”──!!!」


 不意に、知らない言葉が口をついて出た。


──バキイッッッツ!!


 天高く放たれたアタシの右拳が空を裂いて唸り、それが満の顎を捉えた瞬間、同時に右膝がヤツの鳩尾を深く抉る。それは斜め上空へと伸び上がる様な、重い一撃。


 直撃(クリティカル)


「うああっ!(うああっ!(うああっ!(うああっ!)))!!」


 クソボケ(みつる)の叫び声にエコーが掛かり、華麗に宙へと駆け昇るアタシ。その着地から少し遅れ、破廉恥男の体が床で激しくバウンドした。


 一瞬、静まりかえる教室。そして……皆から大きな歓声が挙がる。主に、日頃から満に腹を立てていた女子生徒。誰だ? 今、『ユーウィン! パーフェクト!!』とか言って口笛吹いたヤツ。チッ、まあいいわ。


「おお、今のは良いのが入ったの! おっ、死んだ! 満の奴めが死におった!!」


 興奮し、騒ぐ鶴千代。それから喧騒に気付き、満が転がった先へと視線を移すと……床に倒れたヤツは、他の女生徒達の集団から囲まれて蹴られ、袋叩きの憂き目に合っている。


「「死ね! この変態! デリカシーゼロ男!!」」


──ばきっ! ぼこっ! ぐしゃっ!!


「ギ……ギギギ……」


 バカめ、いつもセクハラまがいの発言ばかりしているからだ。この時ばかりは女子集団の恐ろしさをその身に刻み、心の底から恐怖するがいい!! このボンクラめ、日頃の行いを悔い改め、深く深く懺悔(はんせい)しろ! あと、〇ねっ!!

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