イドを放つゲーム
ある有名なロバのゲーム実況者は言った。
「俺がゲームに求めているのは即時性、世界観、多様性、やり込み性。これらは俺が一番ゲームに求めているものだ。これらがなければゲームは楽しくない。」
少し暴論に聞こえるかもしれないがゲーム制作には重要だ。これをモットーにあるゲーム会社は革新的なゲームを開発した。『ヤり直せ!高校生活!!』タイトルから見る通り18禁ゲームだ。
しかし何故このゲームが革新的かと言うと物語がプレイヤーの思うツボに変えれるのだ。従来のこのような類のゲームは決められたシナリオに決められたタイミングでしか性行為を行えなかった。vrが発達し始めた頃でもパターン化された性行為や喘ぎ声。つい最近になるまで18禁ゲームには自由度が全くなかった。
この問題を解決してくれたのが「ヤり直せ!高校生活!!」このゲームが発売された頃、vrは新たな一歩を進んでいた。人類はついに夢の世界に足を踏み込む事ができるようになったのだ。脳に直接データを送り込み、夢の中で記憶を元に世界を構築し性癖を元にキャラクターを作り自分好みのバーチャルな世界へと飛び込めるのだ。
この技術を使い一番性の衝動が激しい学生時代を再現し後はプレイヤーに好きなようにしてもらうのだ。純粋に恋する事もできればハーレムを築ける事もできる。誰にも干渉されない自分の部屋や体育館倉庫で行うのも良し。大胆に教室でもいいし全校生徒の前でも良いのだ。あわよくばヤらずにただ高校生活を楽しむのも良し。他にもxxxを持ってきてxxxをかましたりxxxになってxxxxxxxxxでもいいのだ。想像はしたくないがそそるなら地獄絵図のような光景を作ってもいいのだ。
しかし都合が良すぎるのもあまりゲームとしてはよくない。そのためこの世界は現実に忠実だ。賛否両論だが登場人物全員に人間性がある。場合によってはバッドエンドにもなりえるしルートが解放しないかもしれない。だがたかがゲームだ。失敗したらやり直せる。
そんな現実と夢の境が分からなくなるある意味危険なゲーム「ヤり直せ!高校生活!!」のプレイヤーは男女問わず多い。自分の欲望を思う存分発散できる安息の地として活用している。だが中にはモラルを疑うプレイヤーもいる。その内の一人、安藤淳がそうだ。
「ハァ...ハァ....ハァ...」
彼女をカナヅチで1発で仕留めた。男女問わずに恋愛の対象だということを明かしたら酷く拒絶されたのだ。いつもの癖で我慢した。だがもう限界だった。耐えきれなかった。
「やっちゃったよ...僕どうなっちゃうんだろう...」
自身の全てを受け入れてくれるかもしれない唯一の人間はもういない。だが期待するのを諦めた途端、内側から何かが解放された。
「やっぱり僕ってちょっと変わってるな」
学校帰りの彼女を尾行し路地裏まで連れて行き殺害までの行程に今まで体感した事ないほどのスリルと達成感に興奮し快感を得た。これが初めてのオーガズムという物なのだろうか。いやまだだ。人の出がないこの場なら...
そして更なる快感を得るため自身を慰める行為に至ろうとしていた。
「ッ!!」
なにかが思いとどめた。
「ダメだ!これ以上周りと違う方向に行ったら僕はどうなってしまうんだ!落ち着け。僕は今日何もしてない。誰にも会ってない。そう、僕は一人だ。いつもと変わらず一人だ!」
目の前の現場に背を向けとにかく走った。体中真っ赤に染まっているがそんなことに気を使っている余裕はなかった。だがあれ以上あの場にいれば何をしでかすか分からない。行先は自分の部屋。とにかく冷静になろう。人を殺めたから気が動転していただけだ。
「大丈夫。僕はおかしくない。」
部屋に入ってもまだ息が荒い。走ったからなのか動揺からか、とにかく疲れた。寝てまた明日考えよう。寝る前ふとスマホに手を出した。何か忘れてしまったことがあるような気がする。いろいろと詮索したら見つけた。気づかぬうちに撮ってしまった彼女の成れの果ての画像を。そしてまたあの衝動が戻ってくる。
「そうじゃん。アイツが悪いんじゃないか。あんだけ思わせぶりな態度とっといて。俺はもう限界だったんだよ。なんなんだアイツは。人を踏みにじりやがって!」
あの場でやれば良かったと後悔した。自分を慰めるのは彼女に対する最低の侮辱だ。自分のためではない。怒りと興奮が最高に達した瞬間疲れなど忘れ行動に移した。しかし手を動かせば動かすほど目的が変わってくる。目の前の画像が慰めに至高の作品となった。自分にはこういう作品を作れる才能がある。新たな才能を見つけて自信がついた。行動の最中、次の作品の妄想が膨らんだ。そんなことを考えてるうちに発射の時が来た。今まで心身ともに溜まってきたものが限界の度を越えた。爆発した瞬間、これまでにない快感を得た。
「ふぅ...」
こんな最高の瞬間を逃していたのか。数分間呆然としていた。エクスタシーという物をしり自分に酔い始めた。だがある時を境にそんな気持ちは一切なくなった。気づいたらその行為に及んでしまった自分がみじめになり罪悪感、倦怠感などの負の感情がすべて押しかかってきた。
「僕は何をしてるんだ...」
元々まともではない自分がさらにまともではなくなってしまった。
「人一人の人生を奪ってしてはいけない事をした!許されないことをしてしまった!僕は人として終わってしまったんだ!彼女を罰する権利は僕にない!」
明日明後日は週末なため休みだ。とにかく寝込む。そして考えよう。これからの人生、自分の罪をどう償うか、死ぬならどう死のうか。だがこの日から快感と罪悪感の繰り返しによる地獄の日々だった。
1日過ぎると気が180度変わっていた。またあの画像に手をつけた。あの場面と画像を思い出すたびに心臓の鼓動を早めた。これを見て興奮している自分がいる。その頃は彼女への償いなど忘れていた。
「いいざまだなぁ!俺の事を黙って受け入れれば良かったんだよ!何故見捨てた!」
発射から数分後、またあの苦悩が戻ってくる。
「僕はおかしい。正気じゃない。人の命をこんなに軽々しく見るのか僕は。また罪を犯してしまうかもいれない。生きていていいのか。」
自分の違う面。人を殺めてからおかしくなってしまった自分、もうあの頃に戻れない事に悲しくなっていく。
日曜日の夜、いつものよう行動に移そうとしていた。だが当初のようなゾクゾクした気分、体中に電気が走るような快感がなく中々エクスタシーまでにたどり着けない。そしてあることに気づいた。
「なんか飽きたな。これ。」
新たな刺激を求めた。この画像ではもう興奮できない。そのためタイプな子を探す。だが違うジャンルに挑戦してみる。次のターゲットは男子に決めた。
翌日何事もなかったかのように登校した。学校までの道のり、とにかく目を光らせた。他にもやりやすい奴はいないか。意外にもこの町には俺好みの人間が多い。
校内中大騒ぎだ。やはりクラスでは生徒一人が遺体で発見された話題で盛り上がってる。
「ねぇ聞いた?あの娘死んじゃったらしいよ?」
「それな。身近な奴死ぬと精神的にくるよな...」
「犯人はまだ見つかってないらしい。こんな町で起きるぐらいだから意外に身近いるかもよ。」
「うわぁ性の喜びを知らずに死にたくねぇ。」
「あんたなんか誰も狙わないから大丈夫。気にするな。」
(頭の悪そうな会話だ。だがまあまあ顔はイケるな。あんな奴らを痛ぶるのも楽しいかもしれない。)
そんな中クラスの端に目を向けてみればぴったりなヤツがいた。女子のように弱々しく顔も中々イケる男子だった。ターゲットにはちょうど良い。とにかく彼を尾行してみよう。休み時間でも一人にいるような奴だ。俺と同じで帰り道も一人だろう。
放課後、奴を追った。やはり一人だ。人が多い道を避けとにかく家に向かう姿はまさに俺そのものだ。つまらなそうな生き方だが似たような世界で生きてる。なんだか余計に欲しくなった。しかし路線を変えた。道を進んで行けば行くほど人の出入りが多くなる。大道路に出た。そこで奴は他校のグループと合流しそのまま近くのカフェに足を運んだ。中で奴は学校では見たことがない笑顔。大きな笑い声も聞こえてくる。
どうやらアイツも俺とは違うようだ。クソッタレ。期待をさせやがって。そしたらなんだか無性に腹が立った。わざわざ足を運んで見ればこのざまだ。まさか俺の尾行を気づいていたのか?俺にこの光景を見せつけるためか?こんなに苦しんでる俺をさらに懲らしめるのか?多分そうだろう。なら制裁を与えねば。
数時間出てくるのを待った。その間苛立ちと興奮が頂点に達していた。ウズウズが止まらない。早く発散したい。どう料理してやろうか。色んな発想が頭に溢れ出た。まだ奴は店を出る様子はない。しかし俺は溜まった物を早く出したくてたまらない。こんなに時間を使っといてなんだが待つのは嫌いな性根だ。ここまで興奮してしまうと集中力が切れてしまうかもしれん。逃してしまうかもしれない。一番神経を使うスリルも楽しめない。なら一時的に発散させよう。
「ふぅ...」
近くのトイレで済ました。先ほどまでの妄想で補うという荒業を開拓できた。だがしかし現物がないと少々厳しく時間がかかった。だがそれと同時にバレるかもしれないスリルがまた心地よかった。
「僕は何をしているんだ....」
発散したら目が覚めた。
「また同じ事をやろうとしていたのか!わざわざ罪を重ねるのか。なんのために。自分の性欲を発散するためだけに命を弄ぶのか。こんな事許されない!」
その後もう急ぎで家に向かった。様々な感情が混ざりすぎておかしくなり気づいたら涙が目を覆っていた。部屋に入りまずパソコンに向かった。自分の異常な性癖を変えたい。ネットを漁り生身で息をし動き回り喘ぐ人間の性行為を片っ端に見た。とにかく普通になりたい。しかし全く興奮できない。なんならたまに見かける人権を無視した行為に及ぶ画像や動画のサムネで興奮した。
(やはりこっちの方がいい。俺はこっちの道へ歩くべきだ。)
また心が動きはじめた。しかしある広告に目が止まり動きが少し止まった。「ヤり直せ!高校生活!!」。サイトへと飛び説明欄を読んだ。まさしく僕が今最も欲しい世界がここにある。そして自分をさらけ出せる場所だ。気づいたら購入画面へと進んでいた。僕は逃げる。ここで異常な僕を抑え込む。これ以上被害を出したくない。値段は張るが貯金を使い果たした。
薬を飲み頭に装置をつけコンセントを繋げベッドに横たわった。どのタイミングかはわからないが気づいたら校舎の中。普段と変わらないが何か違う。とりあえず一周しそして気づいた。今夢の中にいる。辺りの人間は全員が好みのタイプだ。
「これはたまらねえな。コイツら全員俺の物か。ヨダレが止まらねえ。どうしてやろうか。」
気がついたら学校にいた。どこか見たことあるようでない。そして不思議にも校内中異様に静かだ。だが暗い。何故だ。よく見れば窓から入ってくる光は日光ではなく月光。どうやら夜か。
「助...」
その声が聞こえた方向へ向くと水しぶきの音と共に扉のガラスが一面真っ赤になった。体が硬直した。目の前の出来事が理解できない。なぜ学校でこんなことが起きているのか。もしかしたら生きてるかもしれない。助けられるかもしれない。不意に僕の体が動いた。開けてみると男が股間を死体に擦り付けていた。顔面は真っ赤に濡れていたが満面の笑みになっているのが分かる。そしてよく見れば見覚えのある顔。僕だ。
「ん?」
目が合った
「ああ、俺か。参加するか?やばいほど気持ちいいぜ。カッターは初めてだったから時間かかったけど(笑)」
すでに絶命してるであろう女性の髪をつかみながら彼は言った。
「な、何をしてる!その手を離せ!彼女は玩具じゃないんだぞ!」
「ああ今は女の感じじゃなかった?なんならそこのロッカーに男もいるぜ。テープで黙らしてるけど。」
「ッ...!!」
軽々と恐ろしいことを言うこいつに唖然としてしまった。
「正気かお前は!」
「何言ってんの。これは俺たちが買ったゲームだぜ?それも夢の中。現実に忠実だけど現実じゃない。自分がやりたい事を思う存分できる。お前だって本当はやりたいんでしょ?」
「僕はこんなの望んじゃいない!人の命を軽く扱うな!自分の勝手な判断で他人を苦しめることなんか許されることじゃない!」
「しょうがない。オレたちの性癖はこれじゃん。現実世界でも試したけどまだそこまでの度胸がなかったからこっちで始めたんじゃないか。」
「そんな性癖僕にはない!」
「でも彼女をやった時すげえ興奮したじゃん。」
ぐうの音も出ない。
「その時は、気が動転してておかしかったんだ...」
「気が動転しただけであんなことするかね。もう素直になれよ。今まで辛かったろ?自分の正体をバラしたくなくていつも抱え込んでたじゃん。これが俺たちの本性なんだよ。しょうがない。どうせ周りからは嫌な目で見られるだけだ。だったらここでさらけ出そうぜ。」
耐え難いことだが心の隅で思っていたことをどんどん言われる。
「やめてくれ!自分のために他人を巻き込みたくない。それに僕は自分の罪から背を向けない。彼女を殺した罪を僕は一生背負って生きていき償っていく。これ以上犠牲者を出したくない。」
「だから言ってるじゃん。こいつらは所詮データだ。本物じゃない。まあすっげえ本物に近いけど。別にこいつらをやっても何の罪にならない。」
「君には道徳心というものがないのか?!」
「あーもうわかった。口で言ってもしょうがない。ほらこれ渡すからやってみろ。」
そういって奴は真っ赤なカッターを投げ渡した。
「ちょっと待ってろ。」
そのあとロッカーから体中縛られ口を塞がれた少年を連れだした。暗くてはっきりしないが頭に怪我をしているのが分かった。気絶させここまで運んだのだろう。何も喋れない状況でも少年の目には救いを求めていたのが分かった。その後床に叩つけ顔を固定した。毛虫のように動き回りとにかく逃げる努力をしていた。「おい彼って...」
「そうそう。何時間もストーキングした子に似てるよな。見つけたとき一目散にやったよ。やっぱ夢だからこの世界は記憶をもとに作られてるんだな。」
その時、心臓の鼓動が早まった。うずうずが止まらない。
「、、、んんん!!」
テープ越しでも命乞いをしているのが分かる。さらに早まった。
「やっぱりやりたくてしょうがなかったんじゃないか。ビンビンじゃねえか(笑)」
絶望した。やはり自分には怪奇的な本性があった。早く行動に移したくてしょうがない。震えながらもカッターを手に持ちどんどん首に近づけた。
「ん!!!んんんん!!!!!」
ほんの少し切るくらいならいいかな。
「んんん!」
死なない程度にやればまだ大丈夫だろう。
「んんんんん!んんんんん!」
殺すんじゃない、傷をつけるだけだ。
「んんんんんんんん!」
今は夢だ。本当に死ぬわけじゃない。
「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!」
あの時出来なかったんだから今やろう。今しかない。
「死ぬたくない...」
血とはまた違う液体が顔を濡らしていた。透明だったが月光が反射していた。それはそうだよな。自分もこんな状況だったら嫌だよな。
「?!」
首がめちゃくちゃ熱い。そして気が遠くなる。なるほどこうやって死んでいくのか。こんな思いをさせるとこだったのか。
「マジかよ...そこまでしてやりたくないか...たかが夢ごときで...」
仰向けになり目がかすむ中彼は僕を見下げながらいった。
「痛いか?今強制終了してやる。結構深い眠りだったから目覚めるには時間がかかる。俺もお前だからなんとなくお前の気持ちも分かるよ。まあ現実世界でもがんばれよ。俺はここで楽しく暮らしていくぜ。また新しい俺ができないように頑張れよ。」
その瞬間真っ黒になった。何も感じない。恐怖や悲しみもない。でも考えることはできた。これからの人生どうしていくか。どうやって償っていくか。自分のこの本性とどう向き合っていくか。頑張っていくかあきらめるか。最初の数日はそんな事ばかり考えた。だんだん自分のことを思い出していった。子供の頃の思い出。好きだった番組、音楽、映画、食べ物。大笑いした出来事。腹ただしかった出来事。悲しかった出来事。色々と濃い人生だ。自慢できる人生だ。これからはどうなるか分からないが振り返ってみれば乗り越えられたんだ。たぶん行けるだろう。無理だったらそん時はそん時だ。
やっと光が見えた。久しぶりに色を見た気分だ。時計を見れば13時間しか経っていない。あんなに長かったのに。そんなことよりまず僕がしなきゃいけないのは警察署に行くことだ。
「どうしよ。あと4,5人は欲しいな。でも冷蔵庫がもう収まらないし匂いもきつくなってきた。でもこのカーペットだけは完成さしたいなぁ。」
彼はまだあのゲームの中にいるのか
「あ、音楽止まってた。さぁて次はどれにしようかなぁ?」
それとももう存在しないのか
「うーん、やっぱり夢の中にいるんだからこの曲だよな。『夢の中で』。」
それは私たちにはわからない。
初めて小説を執筆しました。ひどい文章力なのは承知です。本当は漫画家志望なのですが尊敬する富樫先生が絵の勉強よりストーリーの勉強ということで自分が描いたストーリーがどう評価されるのか気になり自分で創作した物語を公開してみようと思い小説家になろうに投稿しました。表現力も壊滅的なので伝わってるかわかりませんが頑張って一人の男の二面性を描いてみました。あまり深く考えずパッと思いついたので設定も結構がばがばです。内容があれなので読む人にとっては不快に思うかもしれません。今もいくつか温めてるストーリーがありますがほとんど人間の暴力性についての作品ばかりです。なのであまり万人受けしないかもしれません。今後ともたまたま見かけたら応援よろしくお願いします。