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明けない夜  作者: ケケロ脱走兵
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13/40

(13)

        「社会を捉えなおす


            ⑧


 1972年に民間の研究機関「ローマ・クラブ」がマサチューセ


ッツ工科大学のデニス・メドウズ氏を主査とする国際チームに委託


してシステムダイナミクスの手法を駆使して取り纏めた研究の報告


書『成長の限界』は、高度経済成長に浮かれていた日本国民に冷水


を浴びせ掛け、ちょうどその翌年には中東戦争に端を発する「オイ


ル・ショック」も起こって、科学技術がもたらす明るい未来を信じ


て疑わなかった誰もが不安へと駆り立てられた。あれから40年を


経てその予測結果を検証してみれば、埋もれた鉱物資源の枯渇など


の予測は確かに外れたかもしれないが、しかし大局的な予測、たと


えば地球温暖化や人口爆発といった数値は予測ライン上に収まって


いる。つまり地球は40年前とほとんどその大きさを変えずに自転


しながら太陽の周りを公転し、そこで生きる人間は自然環境を破壊


しながら予測通りに増加して『成長の限界』に近づいたことだけは


紛れもない事実である。つまり『成長の限界』が発表されて以来、


我々の頭の中から「限界」の文字が消えてなくなることはなかった


。しかし、コペルニクスが地動説を著わすずっと前から地球は有限


の惑星だったし、なにも突然地球が小さくなった訳ではない。ただ


我々の成長というか侵蝕と言うべきなのか、近代化に伴ってエネル


ギー消費が膨大に増加し限界を越えた環境への負荷が深刻化してい


る。すでに近代文明社会は自然環境の下で持続性を維持することが


できなくなっています。


 それでは、「世界限界論」を回避するためには一体どうすればい


いのでしょうか?まず、その元凶である近代文明を転換させる「ポ


スト近代」が求められます。そして、それにはどうしても科学技術


は欠かせません。そもそも自然循環に則して暮らしていた前近代で


は地球温暖化も環境破壊も大きな問題ではありませんでした。だか


らといって近代以前に還れと言うのは簡単ですが行えるはずがあり


ません。そこで、「世界限界論」を回避するためには科学技術がも


たらした環境負荷を何としても軽減させなければなりません。つま


り、科学技術が蒔た種は科学技術によって刈り取らねばならない。


その取り組みは既に始まっていますが、その最大のものは代替エネ


ルギーです。そもそも地球上のほとんどのエネルギー源は太陽エネ


ルギーですが、石油とは「有機物が熟成したもの、太陽光による二


酸化炭素の光合成で出来た植物、藻などの有機物が海底に堆積し石


油になったもので」(Wikipedia「石油」)、それら化石燃料はすべ


て過去の太陽エネルギーのレガシー(遺産)であり、遺産はいずれ使


い果たされるでしょう。かつて芸人の上岡竜太郎はテレビ番組で、


「石油は絶対なくなりませんよ。せやかて、これまでに堆積した有


機物が時間とともに石油になっていくんやから」と、まるで「アキ


レスと亀」のパラドックスのような真しやかなジョークを言ってま


したが、実際にはアキレスは亀をすぐに追い抜くように、遺産がど


れほど利子を生んでも膨大な消費に敵うわけがありません。つまり


、そもそも近代文明は過去の遺産に依存して発展してきたのです。


そして太陽光発電を始めとして風力にしろ水力にしろバイオマスに


しても、地熱エネルギー以外それら再生可能エネルギーの源はすべ


て太陽エネルギーです。では、レガシーエネルギーに依存せずに再


生可能エネルギーだけで今の電力消費を賄うことが適うのだろうか


と言うと、いろいろ試算されていますが結論から言えば多分それは


無理です。さらにEV車(電気自動車)が普及すれば電力消費量は桁


違いに跳ね上がります。仮に再生可能エネルギーが現在の消費量の


半分まで代替することが可能だとすれば、それだけで生活を賄うた


めには、我々は1970年代頃まで後戻りしなければなりません。


70年代がそれほど不便な時代だったとは聞きませんが、現在の便


利な暮らしに慣れた人にとっては不便を感じるかもしれません。つ


まり「世界限界論」を回避するためには科学技術の進歩を待つより


も先ず我々自身が変わらなければなりません。多分それは禁煙やダ


イエットによる苦しみよりもはるかに苦しい忍耐が求められること


でしょう。

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