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ピンクうさぎに危機迫る!

エヴァニアス市に着いて俺たちはまず昼飯を食べることにした。

食べるのは俺だけで、リミエルはテーブルの上でそれを眺めているだけだが。

「海の魚…が…生で出てくるとは…」

なんの変哲も無い魚の切り身だが、内陸部では生のものなどあるはずもなく、こんな新鮮な状態のものを食べるのは初めてだった。

「我が国は気候が温暖であるからの。年中食べ物の腐敗と戦わねばならぬ。塩に漬ける。焼く。干す。燻す。特に内陸部では川魚はともかく海産物は処理せずに輸送などできぬ。それが要らぬほどの高速輸送など夢のまた夢じゃからの。しかしエヴァニアスの観光資源として守ってやらねばならぬものでもあるの…」

リミエルのうんちく話を聞きながらでもこの切り身は美味い。これはかかっているソースも相当だな。酸っぱさとまろやかさか絶妙だ。得体の知れないものもあるが総じて美味い。怖いもの見たさで食べてみても…

露店を喰い歩きしていると、あっちじゃ、こっちじゃ、と行先を指図するピンクうさぎ。

本体も連れてきてやりたいところだが叶わぬ夢か。

残りの路銀は銀貨12枚。あまり贅沢はできないな。

「心配するでないぞ。エヴァニアス市にもリード商会の支部があるはずじゃ。支部とは言ってもリード商会の元本部じゃからの。かなり大きな建物のはずじゃ。そこで我の預金を下せば良い」

いや、ピンクうさぎが巫女姫本人だなんて

「我が描く魔法印が鍵になるのじゃ」

「いや、下手な動きは目立つだけだろ。俺のを下ろすからいい」

「お主、割に頭も回るのお」

返事をする代わりにピンクうさぎを鞄に押し込む。

(どうしたのじゃ)

つけられている…。

リミエルが鞄の中からひょっこりと顔を出し後ろを見た。

(あやつは…馬車で居合わせた奴じゃな)

カディと入れ替わりで降りた男の片割れのようだ。

カディが裏切ったか…いや、なんとも言えないか。

仕掛けてくるのでもなければそのままにしておいた方がいい。どうせ来るなら夜襲だろう。付かず離れず付いてくる男は気になったが宿を決めた頃には姿を消していた。


「そうだ、お主風呂には入るじゃろ?」

夕食を食べ、膨れた腹をさすりながらくつろいでいると唐突にリミエルか言った。

「だいぶ我が体も埃にまみれたからの。お主が風呂を出た後でも洗って欲しいのじゃ」

「それは構わないが、乾くのか?」

「我が神の力を信じよ!」

そんな事に神の力を使うなよ…。

大浴場に行くべく支度をしているとリミエルは何やら思案顔のようだった。

ピンクうさぎの表情が読めるようになるとは…だいぶ頭がやられているようだ…。


「ふむ、さてやるとするかの」

故あってこんな形をしているがリミエリーナは巫女姫である。魂の大半を預けたその身にできぬ事はほぼない。元の体と大きく違うのは神の力の流量である。

本体が時間をかけて取り組めばそれこそ台風を止めるほどの奇跡を起こすことが可能ではあるが、ぬいぐるみの身ではそれも叶わない。起こす奇跡に対して注ぎ込める神の力が桁違いに少ないのだ。

同じ術を行うにしても時間がかかる。

だからエルを遠ざけたのだ。

まずは邪魔が入らぬように部屋全体を結界で包む。

部屋の四隅に銀の礫。

中央に金の礫と緑聖石。

鉄火石の粉で円を描き、詠唱に入る。


「我はリミエルーナ…

古の盟約に従い炎の王の侍者…

勇なるものを求めん…」


カチャリ


「本当にぬいぐるみだぜ?」

(バカな!)

部屋にかけた結界はリミエルに害をなすもの、その意思を持つものをすべからく遠ざけるものだ。

それが近親者であろうと、従者であろうと、だ。

魔力の渦を自身の周りに展開し、どのような攻撃にも対処できる姿勢をとる。

「ああ、自己紹介がまだだったな。オレはリビエナルー教第一席異端審問官のヒューリック=リビエナリアだ」

第一席異端審問官…!!

まさかこのタイミングで…!

戦う姿勢を見せずにヒューリックは言った。


「こっちの都合で悪いがついてきてくれ」


(この男が穏健派であることを祈るしかないの…)

リミエルはリビエナルー教徒に捕まってしまったのだ…。

なんだか不穏な流れに…!

さっさと風呂出て来いー!

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