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じゃじゃ馬うさぎとエセ従者

酒場の主人を転がして飛び出た俺は一瞬自問自答する。

このピンクうさぎ売り払った方が

「無礼な奴じゃな!」

自答する暇もなかった。

たかだか350イルだとしても命の水代はまけられない。ちゃんと請求するからな、国王に。

4000イル、ちゃんと準備しとけよ。

「ぼったくりじゃな…お主…」

「それはともかく、命を狙われる覚えは…」

「それはお主もよく知っておろう。我が巫女姫じゃからよ」

「考えるから、読み取ってくれ、喋りながら走るのは、無理だ!」

「お安い御用じゃ」

4名のリビエナルー教徒は一直線にこちらへ向かってくる。

目測で距離は…200エード。馬が必要だな…。あ、

「今失礼なことを考えたじゃろう!」

流石にじゃじゃ馬といえど巫女姫を駆ろうとは…思ってないからな?

「ふむ…我の魔力をお主の生命力に変換し助けてやらんでもないぞ」

なにそれ便利。

「しかしな、それには絆が必要じゃ。見たところお主、マハードラ教徒のようじゃが、ちと敬虔さが足りんようじゃの。絆とするにはちと弱い。どうじゃ、我の護衛、いや、従者とならんか。我に物怖じせず物申すところなどまさに適役じゃと思うがの」

従者って…。俺は賞金稼ぎだぞ?およそ巫女姫の従者どころではなく、チンピラと大して変わらない。姫の名に傷が

「付くわけなかろう、お主も言うとったじゃろう、我はじゃじゃ馬姫と呼ばれて久しいわ。従者の貴賎で我の可愛らしさにはかすり傷も付かぬわ!」

あ、知ってたのね、じゃじゃ馬姫って呼ばれてるの。

「我の器は海より大きいからの!」

それでは姫、

「あいわかった。

〜我ここにあり神の前にて宣言す…

善なるものよ勇なるものよ信なるものよ…

我が血肉を分けし神民ゼントゥール=エルに祝福を…

我と共にあり…共に神に誓う…

我が剣となれゼントゥール=エル!!」

ピンクうさぎを掴む左手から熱が伝わってくる。しかし、熱いわけではない。

まるで寒い冬の朝両手で包んだスープカップのような、じんわりと染み込む優しい熱。

走り続けて早鐘を打つ心臓の音も穏やかになる。

呼吸も嘘のように楽になった。

「すごいじゃろう!これが神の力じゃ!神への感謝を忘れるでないぞ!」

得意満面のピンクうさぎである。

しかし街道をひた走る俺の後ろ200エード程を距離を保ち追跡してくるリビエナルー教徒。

止まれば戦闘は避けられない。巻くか突き放すか、それか倒すか…。

いずれにせよこのまま街道を徒歩で行くにも限界がある。

そもそもの問題だ。なぜリミエルはこの姿なのか。なぜ捕まっていたのか…。

「それはじゃな、我の趣味じゃ」

趣味か、それなら仕方な…くないわ!

「そういうでない。退屈じゃぞ、巫女姫なんというものは。食うには困らぬ。娯楽にもことかかぬ。欲しい物は全て手に入る。しかしじゃ」

おきまりの囚われの…

「まぁその通りじゃ。我の外に我のなすべきを為すものはない。我が受ける神の信託、それは唯一無二のもの。大国ではない我が国が建国以来一度の侵攻も、ましてや敗戦すら経験しておらぬのはまさに神の御技に外ならぬ。我は神の代行者、不敗の城壁である。それ故に門外不出、そのものじゃ」

で、その姿で遊びに出た、と。

「はっはっは!その通りじゃ!不意を突かれて弓矢にて撃ち落とされてな、全く不届きな輩もおるものじゃ!」

自覚ないのか…

「あるに決まっておろう!ただ、いつもより少し余計に…魂を分けてしまったものでの…」

ドジっ子か。

「ほぼ全部な!」

自覚ないな、絶対。

「おお、森が見えてきたぞ。あそこならば戦いやすかろう」

遮蔽物がある屋内や森などでは無勢を帳消しにできる各個撃破、という手が使える。

リビエナルー教徒には破壊工作や暗殺を行う部門があると聞く。あの4人は少なくともそのどちらかであるのは間違いが無い。

巫女姫の加護を受け、全力で走り続けている俺の後を一定の距離を空けて余裕でついてきている。

あいつら人間か…?

「人の身ではあるであろう。しかし、かの宗教では我も知り得ぬ術式をもって肉体を強化し、人外の域にまで到達せしめると聞く」

強化人間か…。

一騎打ちで戦うにしても分が悪いかもしれないな。

街道からほど近い森に飛び込む。土地勘はないが、追手を倒した後ゆっくり森を出ればいい。きっと出れる。

…はずだ。

「何か言ったかの?」

「しらんっ」

背後から迫るクナイを叩き落とした。

「何をする!!我は盾ではないぷにゃっ!?」

「痛みはないだろ!少し我慢してくれ!」

「そういう問題ではないわ!」

俺は新しい装備を手に入れた。


ビンクのうさぎのぬいぐるみ[装備スロット:左手]<種別:盾>特徴:しゃべる

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