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砂漠王子の愛は∞!~唇から風の魔法の溺愛アラヴィアン・ラブ~ 作者:結愛みりか
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第四章 魔法? イエス、魔法!2

☆★☆
「そして! 王族反対派を、こうして王族は一掃した。そして、次なる王子も更なる良策として、精霊召喚法を駆使したのです。いいか。ここからが王族の輝かしい歴史の第一歩……ハハハハハハ。どうだ、素晴らしいでしょう!」
 部屋に戻るとアリザムの説法の声が変わらず響いていた。時折水を飲んではいるようだが、ずっと喋っていた様子だ。ラティークが吐息をついた。
(まだやってる。ストレス、溜まってたのかな。ラティークのお付きだし)
「だーっ! うるっせえ! もうやめてくれェ。おい、アイラ! 何とか言ってくれ! アイラ! な、何でも話すし、め、飯くれ、飯! 腹減って……」
「食えば?」アイラは籠に積んである棘のついた皮の果実を差し出した。「冗談だよ。ちゃんとラティーク王子に御礼言ったら? あんたに食べ物買ってたから」
 ラティークは眼の前でパンをちらつかせ、裏交渉の黒い笑顔になった。
「アリザムの話と、ありったけ情報を渡して腹を満たすのと、どちらがいいか。アイラ王女の知り合いに免じて、おまえに選択権を与えよう。光栄に思え!」
 ――スメラギはあっさり降参した。アリザムは、欲求不満げに息を吐いた。
☆★★
「ええと、何から話すかな。そうだ! アイラ! おまえの探してた石、見つけたぞ」
(いきなり本題か!)アイラはスメラギの服を掴みあげ、揺すった。
「どこに! どこにあったの! 本当に〝コイヌール?〟疑わしいね。似たような贋作の宝石もあるっていうし。そもそも、この宝石の山は何? かっぱらった?」
「人聞き悪ィな! ちゃんと交渉で貰ったんだ。石くれるって言うから」
 アイラはスメラギの袋を引っ掻き回した。
「ないわ! あんた、まさかあの高貴な石を汚れ袋に入れて持ち歩いたりしてないよね? とっくにヴィーリビアに運ばせた、のよね?」
 ――嫌な予感。スメラギはにっと笑った。パンに齧り付きながら告げた。
「いや? 売った」
 一瞬スメラギの言葉が聞こえなかった。売ったと言った? 言葉が出なくなった。
「ルシュディ王子がよ、売り払えって。代わりに報酬を用意してくれて! これが結構な額でさァ! 俺、遊んで暮らせるぜ! ラヴィアンの王族の秘宝は結構闇に流れてるってありゃマジだな。これを元手に買い占めたら俺、億万長者! 海賊の頂点に」
 ――こンの守銭奴海賊! 秘宝を売り飛ばしたァ?
 アイラは怒りの余り、ラティークがいるのも忘れて本気でスメラギを締め上げた。
「何考えてんのよ! あんたは! それ、あたしに渡せば良かったのよ! どうしてあんたっていっつもそう、金、金、かねかねかね……!」
 震えた手に涙が落ちた。なんだ、この顛末。情けなくて泣けてきた。もう、スメラギも誰も信用できない。
「アイラ、落ち着いて」黙って聞いていたラティークがようやく口を挟んだ。
「女神様に、国に、お母様にどう謝ればいいのよ! スメラギ! あんたはしっかりお兄に殺されてしまえばいいけど、石は取り返さないと! あれは女神のものなの!誰が盗んだか知らないけど、あんたを許さないからね! 水の檻にあたしが落とす!」
「いや、気持ちはわかっけどよ……そりゃ、ねぇよ……あ、俺の飯!」
「問答無用。あんたは国を売った! すべて明るみにしてやるんだから!」
 スメラギはさすがに困惑の表情になった。「また、説法しましょう」とアリザムが懲罰を申し入れたが、ラティークはさっとパンを奪って机に置き、考え込んだ。
「競りか。相当な値打ちだろうな。兄貴が女神の石を売るだけで解放や交渉したとは思えない。僕を襲った理由は何だ。一つ答えるごと、パンを返す」
「七千万エンとちょっとで売れた。あんたの腰のランプだよ。こっちはもっと売れるだろうと盗賊たちにけしかけたのもルシュディだ。精霊が詰まってる道具は貴重だ」
 ラティークは怒りのアイラを背中に隠し、首を傾げてしれっと告げた。
「あるはずがない。これは、風の爺さんと呼ばれるタダのランプ。爺さんの形見にぶら下げてるだけで、精霊なんか詰まっていないし、油で汚れまくってる」
 さすが。嘘を何とも思わないらしい。男に対して、ラティークは厳しい様子だ。単純なスメラギはランプに興味を失った。
 アイラは唇を噛みしめた。スメラギには迷惑な商売ド根性がある。いつか訊いてみたい。国の財宝を売っても良心が痛まない金への執着の理由。本当に迷惑だ。
「でもどうしよう。その宝石を利用して、みんなを呼び集めて、用がなくなったから、闇に売るなんて。本当なら、あたしはルシュディ王子を許さない! 絶対に!」
「そうだな」とラティークは額を指で押さえていたが、またにやりと薄笑を浮かべて見せた。ぞっとする恐怖の笑みだ。また知りたくもない裏の顔を知った。
「何か良策を思いついた時の表情だ。もう大丈夫」アリザムがアイラに耳打ちした。
「王子の行動を見ていろ。思いもしない解決策を導く。多少破天荒ですが、言う通りに。そろそろ、貴方の国のことも、我が国も一手に引き受けようとする勇気を認めてはどうか。意地など張っていないで」
「意地なんか張ってない」アイラの前で、ラティークは薄笑のまま、縛られたスメラギを睨んだ挙げ句、アイラの神経を逆なでする話を始めた。
「その石を僕も見たいな。さぞかし美しいんだろう? 今から競りの場所へ連れて行くなら、自由にするし、報酬も出そうか」
「ちょっと! あたしは絶対行かないからね! みんな、酷いよ! もう全員水の精霊に言いつけてやる!」
(ラティークのばかっ)と腹で怒鳴った。ラティークが流し目になった。
「交渉の邪魔だ。言いつけるならさっさとヴィーリビアに帰るんだな。全て諦めて」
(全て、諦める……)
 アイラはラティークの横顔を見詰め、気付いた。ラティークの不敵な笑顔には事態を諦める素振りなど微塵もない。〝王子を見ていろ〟アリザムを振り返ると、アリザムは呆れきった表情でアイラを睨んでいた。
(何をくよくよと悩んでいるんだろう、信じようって言ったのに)
 アイラは目を伏せた。目を背けていたら、何も救えない。正面を向いて、しっかり乗り越えるべきだ。どんな障害の前でも、ラティークを、信じよう。
(ラティークは言った。闇に染まる王国を取り返すと。なら、あたしは自分の国の秘宝くらい、自分で取り返さなきゃ)
「あたしも、行く。離れたくない」
 腕にしがみつくと、ラティークはふわりと笑った。良かった。怖ろしく黒い笑顔はアイラには向かない。また胸の小犬がきゃっきゃと騒いで駆け回った。
 ――うん、信じて行こう。大丈夫って言ったじゃん?
 魔法が心地良く、背中を押す。魔法はラティークの香りがするに違いない。
 揺れる心をしっかりと支えられている実感にアイラは口端を少し緩めた。
 あたしがあたしの声で、あたしに微笑む。
(あれ、じゃあ魔法って本当は、何?)
 椅子に丸まっていたシハーヴが小さな欠伸をした。
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