生体
「そんなわけでカザフスタンのフェンスの戦闘は終結したわけだ」
仮想空間の会議室で多くの国家代表を前にカザフスタン代表は話を終える
「で?結局戦車の中身は何だったわけだ?」
肝心なところを教えてくれてないわけだが
この問いに多くの代表も頷く
「脳髄だ」
ほぼ全員が「やっぱりな」という反応である
「65年前に無法地帯に復興ボランティアが向かったの覚えてるか?」
覚えてる
戦後復興支援として200人近くがあの場所に行った
そして誰も戻ってこなかった
「脳髄のDNAが完璧ではないが似ているそうだ。おそらく行方不明者の血縁だろうな」
「行方不明の原因は拉致だと?」
「聞かなくても予想はできてただろ?明確な証拠が出てきたというだけだ」
国家が拉致・人質交渉に屈すれば延々と奪われるだけである
かといって被害者を放置したら
自称人権団体とマスコミが被害国家を叩く
そしてなぜか犯人たちには何も言わないのである(なんでだろうね?)
だから拉致ではなく事故及びそれに起因する行方不明にしたかった
「家畜のような扱いでも受けてるのか?」
「それは知らんが、まぁ当時の200人はもう死んでるんだろうな」
「わざわざAIや機械ではなく脳髄を使う理由はなんだ?」
「そっち方面の技術と半導体がないんだろうな」
人間の脳髄をCPUにするなんてSFの世界のようだ
「あとは適当に何か食わせれば10年ほどでパーツとして完成するということかもしれん」
「脳髄は1個だけか?」
「そうだ。1個で1台の戦車を自分の手足のように動けたのかもな」
内部がそれで何とかなるならあとは外装の金属だけである
あちらにとって幸いなのは戦争でどこにでも大量の金属が落ちてることだろう
「対戦車装備が欲しいな」
「こちらも戦車と戦闘ヘリ、爆撃機も必要かもしれん」
「欧州側で余ってるのはないか?」
「余ってるとは言えんが何とかそっちに回す」
「この騒動に関しては今できることはこれぐらいか」
「あ、すまんその脳髄についてこっちでも伝えることがあった」
イギリス代表が手を挙げて話し出す
「何かあったのか?」
「エレベーターに接触した破片はやはり無法地帯のミサイル片だったよ」
「今さらだな。それと脳髄が何の関係が?」
「それと同じミサイル片がヘンダーソンに流れ着いてな。弾頭部分だ」
「まさか・・・」
「中央に焼け焦げた脳髄が入っていた」