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単独行動

アジアの中心には地の果てまで続くと思えるほど長大なフェンスが引かれている

実際には有限だが地元の教養のない人間たちにはそう思われても仕方のないほどの長さである

カザフスタン

キルギス

タジキスタン

パキスタン

インド

戦後も安定した戦力を保有できているカザフスタンとインドは自国の最東にあるフェンスを警戒し続けている

他三国は戦中の被害もあってフェンスの警備ができず代わって欧州の多国籍軍が警備をしている

このフェンスも多国籍軍も作られてからもう50年が経とうとしていた


「よう!ご苦労さん」


キルギスの最東

カザフスタンとの国境付近のフェンスで警備をしていた多国籍軍の小隊長が声を掛けられる

彼とは最近よく話をする

少し色黒で屈強な見た目をしているが

日本のアニメやゲームが好きだということで意気投合した

特にSAMURAI系ゲームが好きなのだという

私もNINJAが好きなのでよくSENGOKU時代について盛り上がる


「こんな時間にきて大丈夫なのか?」


時刻は間もなく0時である

いつも通りフェンスには異常はないが深夜なので何が起こるかわからないのである

この前も深夜に猪がフェンスの下を掘ろうとして威嚇射撃で追い払ったばかりだ

なお発砲を行う場合は通信で周囲とCPに(隣国の警備隊も含む)に対象と発砲理由を前もって伝えなければならない


「いや大隊長命令でこっちに来たんだ」

「問題ごとか?」


特に急いでるような感じではないが


「いや、大隊長の故郷がバルハシの近くにあってな。実家から差し入れが届いたからおすそ分けだ」

「ほう、何があるんだ?」

「そんな大したもんじゃないぞ。大量のキルマイとカマズだ」


聞いたことがないものだが


「なんだそりゃ?」

「キルマイってのは、あ~・・・・そっちではそ~せ~じ?とか言うんだったか?カマズは馬の乳で作った酒だ」


酒にソーセージか

いいね旨そうだ


「結構あるのか?」

「そっちに渡す分は40キロぐらいかな?」

「結構な量あるな」


嗜好品としてなら7小隊分くらいある


「あ、今は持ってきてないぞ?要るかどうか聞きに来ただけだから」

「そりゃ要るにきまってるだろ?」

「だよな!明日にでも届けるわ。期待しててくれ」


いやいや明日が楽しみだね

時刻が0時になる

その直後に明日の楽しみが忘れてしまう

北から爆音が響く


「なんだ!」

「光ったぞ?発砲?」

「銃撃だとしても光が大きすぎる」

「しかもイーニン側だぞ?フェンスの外だ。待て、通信だ」


隊長からの通信が入ったようだ


「CP、カザフスタン側で何か起きた」

「こちらCP、何かではわからない詳細を」

「いまあっちで通信中だ。そっちでは何も起きてないのか?」

「・・・・・・・タジキスタン、アフガニスタン、パキスタン、インド、ブータンに異常は見られない。・・・・ネパールで何か騒がしいとのことだ」


不穏なことになってるのは2か所

ネパールのほうはインドが何とかしてくれるだろう


「何かわかったか?」

「・・・・戦車だ」

「戦車?」


相方が北に向かって走り出す


「旧型の戦車が1台フェンスを破ってきた!」


振り返ることなく部隊に戻っていく


「CP聞いたか?」

「聞こえた。手伝ってやりたいんだろう?」

「許可をくれ」

「許可する。援軍も今から送る、終わったら報告しろ。死んだら何もわからんのだからな」

「了解」








-------------






その戦車は旧型の見た目だった

動きは鈍重だし砲塔の回転も遅い

だが小銃ではどうしようもないし


「弾着、今!」

「回避された!」

「7回目だぞ!偶然じゃない!」


迫撃砲を的確に回避する

対戦車兵装は迫撃砲しか用意していない


「隊長!」


キルギスの多国籍軍に話に行かせた兵士が戻ってくる


「戻ったか!ここに来るまで他に何か見たか?」

「いいえ、こいつしか確認できてません」

「陽動ではないのか?単独で何のために・・・」

「旧型ですよね。個人で修復して個人的な恨みで侵攻ですか?」

「それにしたって旧型すぎる。見た感じでは第2世代だぞ?」

「でも見た目に反してしぶといですね・・・」

「あぁ、主砲もフェンスを破壊した一回きりだ」

「・・・走るの早いなお前、初弾で破損したという可能性があるぞ?」


色白のやや細身の男が入ってくる


「呼んだのか?」

「呼んでません」

「呼ばれてないけど手伝いに来た。あと主砲が壊れてるとしたら鹵獲してしまうのがいいと思う」


そういってテーブルの上にバックパックを下す


「C4か?」

「あぁ、こいつで何とかする。あとPE4だぞ」

「いや、5キロ程度しかないだろこれ、どうやって鹵獲するんだ」

「別に戦車を爆破するとは言ってないぞ?」









------------






暗い夜に一瞬だが大きな光が発生する


「まさか落とし穴とは」

「古典的だな」

「だが実際有効だったわけだ」


隊長はもっと装備を充実させないとなとかブツブツ言っている

実際こんな面倒なことするより対戦車ロケットを用意していれば手間もかからなかったのである

兵士の数も重要だがやはり兵器の充実も大事なのだ


「気をつけろ!何をしてくるかわからんぞ!」


兵士たちは慎重に、しかし素早く戦車に近づく

錬度は高いようだ

口には出せないが他国の軍に平気で話しかけるのでその程度と思っていたのだが


手の届くところで戦車の異変に気付く


「なんだ?液体が・・・」

「血じゃないのかこれ?」

「上部ハッチが溶接されています!」








-----------






翌日6時になり多国籍軍の援軍も到着(出番はなかったが)

何人かの戦場カメラマンも騒動を嗅ぎつけやってきた

嬉々として溶接されたハッチの開放作業を映している

しかしハッチが開いた直後にカメラマンたちは戦車から離れ嘔吐してしまう

兵士たちもその異常な光景に鼻を摘まんでしまうほどだ

内部は

大量の血に漬かっていた

その中心には割れたガラスと焼け焦げた2キロほどの何かがあった

地震でパソコンがフリーズして保存してないというね

おのれ地震め!

おのれ地震め!

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