遊泳
シャトル?エレベーター?が止まり出口が開くと
「お~・・・結構広い・・・」
「宇宙って言うから無重力かと思ったんだけど?」
「あれじゃね?遠心力とかで重力作り出すやつ」
俺達が軒並み普通の反応をしている横で
「おぉぉぉ・・・おぉぉぉおおおおお!」
ヘンリーさんは子供のようにはしゃいでいた
「ア、チョッ・・・ヘンリーサン走リ回ラナイデクダサイ」
そんな二人を見下すような感じで例のオッサンが警護を連れて偉そうに奥に歩いていく
「・・・感じ悪いねあのおっさん・・・」
「あぁいうのはぁ処したくなるよねぇ」
ちょっと危険そうな発言も聞こえるが無視しよう
関わらないほうがいい
「悠君悠君!」
「はいはい悠君ですよ。どした?」
「ほらここから地球が見える」
「お~・・・」
「100年前まではもっと青と緑が多いって・・・」
「教科書に載ってたな」
「これが青い惑星って言われてたって思うと人間も業が深いわよね」
「将来的には火星みたいに赤くなるんじゃね?」
「そのころには日本も土色になるのかしら?」
「そん時は俺達もう死んでるだろうけどな」
赤くなるころには人類が絶滅してるかもしれんね
20世紀には人間は60億人いたらしいけど
戦後の今では30億人にまで減っている
まあ戸籍で確認できてる人間が30億なだけなので実際はもっと多いかもしれないが
アインシュタインだっけ?
「第三次世界大戦がどうなるかわからない。しかし、第四次世界大戦が起きれば、人類の武器は石とこん棒だ」
って言った人
「全員、こっちに来とくれ。話があるそうじゃ」
理事長に呼ばれ全員がそちらに向かう
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楽しいかと言われれば、まぁ楽しい?
夏妃は平静を装っているが今にもはしゃぎたい状態なんだろう
洋子は話の内容に理解できなくて思考停止している
ヘンリーさんはもはや自重していない
研究者の話を聞くたび「おぉぉ!」とか「うほぉぉ!」とか興奮してる
「何人カ退屈ソウデスネ。仕方アリマセン、皆サン広場ニ戻リマショウ。」
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「おぉぉぉ!やべぇ!アイアスどけどけ」
「ふげぇ!」
菊月とアイアスが空中で盛大に激突した
「「アハハハハハハハハ!アハーハハハハハハ!」」
ヘンリーさんと夏妃はもう壊れていた
例のオッサンはもう今にも吐きそうな感じで壁にしがみついている
俺?俺は流れに任せてふわふわ漂っています
ここまで言えばもうどういう状況なのかわかるだろうか?
重力装置を一時的に停止して無重力体験を満喫中である
「悠く~ん・・・ど~ん!」
後ろから夏妃が取りついてくる
「楽しくないの?」
「いや・・・このSFな状況をどう楽しめばいいのかわからないな」
お互いに手を繋ぎクルクル回りながら会話をする
「これってアレよね?アレが欲しくなる。宇宙戦艦物の定番」
「動く取っ手?」
「そうそうそれそれ、実際にあったほうが便利なんだろうねアレ」
「夏妃~・・・夏妃~!助けてくれ~!」
2人で話していると少し遠くの位置で洋子が情けないことになっていた
どうやら無重力が苦手なようである
背を丸めたままて足をバタバタさせてあらぬ方向に漂っていた
「もぅ、ちょっと行ってくるね」
「あぁ」
そう言って夏妃が洋子に取りついた時に
それが起きた
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部屋?施設?
いや多分エレベーター全体に大きな衝撃が走った
無重力を楽しんでいた皆が壁に叩きつけられる
例外なく自分も背中から落ちる
この場合落ちると言うのは正しい言い方なのだろうか?
そんな気楽な事を考えていたのが悪かったのだろうか
自分の上からあのおっさんが勢いよく落ちてきて下敷きにされてしまった
ピキッ
と嫌な感覚がした