宇宙へ
「東京と大してかわんねぇぞ・・・」
菊月の感想にみんなが納得する
ビルの大きさは一番高くてもせいぜい30階程度であろう
まぁその分
「でも軌道エレベーターのワイヤーは圧巻の一言ね」
一個だけすごいものがあるのが強調されるわけで
「これどこまで続いてるの?」
「35,000キロマデ続イテマスヨ」
とんでもないな
「すごいですね~私のウルリッヒユニットでも80キロなのに」
「いやゲームと現実を一緒にするなよ」
皆で盛り上がっている目の前で何やら騒ぎが起きている
「何あれ?」
「なんかオッサンが喚いてるね」
遠くて声は聞こえないが金髪で腹の出たオッサンが警備員らしき人物に怒鳴っている
「はいはいアイアスちゃんにお任せあれ!」
「解るのかよ?」
「唇の動き見れば余裕ですよ」
そう言ってアイアスは読唇術を始める
お前ほんとに何でもできるんだな
いや本当にできてるのか適当言ってるのか判断できないんだけどね
「「なんだあのアジアの猿共は!」」
「おい?」
「私じゃないですよー!私が言ってるんじゃなくてあのおっさんが言ってるんですよー!」
「・・・・続けて」
「はい、「私をあんな野蛮人と一緒に宇宙に送るつもりか!何かあったら貴様は責任とれるのか!」」
「酷い言われようね」
「アジア嫌いに金髪って言うとアメリカ人かしら?」
「その発言からするとKKKかな?」
「だったら国土から出るなよってな」
「「「それな」」」
わざわざアジア圏に来て文句を言うとかどういう神経してんだあのおっさん
「ミスター源十郎!」
オッサンの反対方向から声がかかる
源十郎?誰だそれ?と全員で首を傾げるがしばらくして理事長が反応する
「おぉ!ヘンリーか!久しいなぁ」
「夏妃、誰?」
「ヘンリー・ボールドウィン。宇都宮の卒業生でイギリスの国会議員」
あらやだ大物
「お~夏妃ちゃんか、大きくなったなぁ。一部を除いて」
「ヘンリーさんも相変わらずのセクハラ発言で」
「発言する相手は考えているさ。他の女にこんなこと言ったら即辞職だよ」
「私に言わないという選択肢はないんですかね?」
「それはアレだ。親しみを込めたジョークという事で」
なるほど、なかなかに酷い人間のようだ
「おぉ!かわいらしい子がいるじゃないか。名前は何というのかね?」
学生の一人に目を付け話しかけてくる
ってなぜ俺を見る
「森口悠です男です」
「男だったか!これは失敬」
「何言ってるの悠君?」
は?
「悠君に性別は無いのよ。悠君は性別は悠なのよ」
何言ってのこの女?
「あ~・・・何時か合わせようと思っていたんだがなヘンリー。この子は夏妃の婚約者じゃよ」
「・・・・マジで?」
「マジでマジで」
「悠君」
「はい」
「考え直しなさい!料理もできない、メカ大好き、胸が無い、変態淑女な女だぞ!」
散々なことを言っている
まぁ本気の発言ではないだろう
笑ってるし
「で、もう合体したのかね?」
この人ほんとに議員なの?
さっきから問題発言しかしていない
「皆サン、ソロソロ軌道エレベーターニ乗リ込ンデクダサイ」
------------
軌道エレベーターに乗り込んだのは
俺達・ヘンリーさんとそのSP2名・喚いていたオッサンとその警護?の5名
あとエルノーさん
「あのおっさん結局乗ったんだ」
「ヘンリーさんの話だとやっぱりアメリカの人だって」
「でもヘンリーさん大丈夫なの?議員なのにSP2人って」
ヘンリーさんの話だと
オッサンはアメリカの有名な富豪らしい
「あまりド派手に動けないんですよ。ばれたら怒られるし」
「誰に?」
「然る高貴な女性に」
その然る高貴な女性がある日突然
「宇宙に行きたい!」
と言い出したそうで
年齢による危険性&そもそも宇宙というリスク
当然行かせるわけにもいかなくて
結果現首相に
「こっそり行って動画とか写真とかいっぱい撮ってこい」
「な~んて言われて連れてこられたわけでね」
議員に何か起きるリスクは考えないのか
「エルノーさん、何分くらいで到着するの?」
「7時間クライデスヨ」
「結構かかるんだね」
「ソノ分窓モ大キメニ設置出来マシタカラ上空カラノ景色ヲオ楽シミクダサイ」
外からサイレンの音が聞こえる
室内に英語の音声が流れる
多分注意事項だろう
乗務員が全員のシートベルトをチェックする
あのおっさんも不機嫌ながら大人しく座っている
窓の景色が少しづつ上昇していく
50メートルくらいまではとてもゆっくりと
超えたあたりから体に強い圧が掛かる
一気に速度が上がる
「おっほぉ!うっほぉぉ!」
ヘンリーさんが興奮している
あぁそうかぁ結局この人もこれに乗りたかったのか
速度が一定になったところで
「シードベルト外シテモイイデスヨ」
その言葉に合わせてみんなシートベルトを外して自由に行動を始める