天駆
「え~・・・本日は皆さんにとても残念なお知らせがあります」
新大陸にいるすべてのプレイヤーを集めたアイアスが話し始める
「え~~~・・・・・・・・・クロムウェルの量産化は頓挫しました・・・・・ごめんね(テヘペロ)」
「「「「「「「「「「BOOOOOOOOOOOOOO!!!」」」」」」」」」」」
そして一斉にブーイングが響く
状況だけ効くと酷いものだが全員が本気でブーイングしているわけではない
だってあんな超兵器の量産化とか絶対不可能だもん
「しかし!」
その言葉によってブーイングは一斉に収まる
「性能の70%を維持したまま廉価版の量産体制が整いました!」
はいはい予定調和予定調和
そんなわけで量産可能な新大陸製量産機「ハンマーバーグ」がお披露目された
従来の機体と比べるとややヒロイックでマッシブな外見である
内面性能のハイバランス化を目指したためハードポイントは背中の2基のみ
その2基でも十分な戦果が出せるようにアイアス製の特殊兵装が多数制作されている
そのいずれもとんでもない反動だったり重さだったりするのだがそれを苦も無く扱えるのがこのハンマーバーグである
「アイアス技師、質問よろしいか?」
「はいそこのモブ1号。質問どうぞ」
お前番外メンバーとはいえ熟練プレイヤーになんてことを
「現存する武器は従来通りに使用は可能ですか?」
「問題なくご使用いただけます。光学系に至っては出力の上昇もしますよ」
よかった。喧嘩にならなかった
「はい」
「はいそこの~・・・・誰か」
「股関節周辺にアーマーが装備されていませんが弱点にはなりませんか?」
「従来のスカートアーマーに代わりフレームに直貼りした装甲を使用しています。スカート型よりは脆いですがその分瞬発力はダンチになっています」
質問は30分ほど続いた
「他に質問はありませんか・・・・・・・・・・・・・・・無いようですので質問終了。あとはゲンドゥルさんに交代します」
アイアスが下がり代わりにゲンドゥルが前に出る
「さて、まぁこの性能で量産化は決まったわけだ。ならば全員に機体が行き渡ったら次はなんだ?」
「東にカチコミ?」
誰かが小さく答える
「正解!さぁ全員!戦争が始まるぞ!機体性能の把握。武装の確認。自身のカラーリングを今のうちに決めておけ!」
「先生!おやつの持参は可能ですか?」
「本当に持っていけるなら持っていけ」
「先生!バナナはおやつに入りますか?」
「バナナはおやつに入ります」
「先生!エバーのバナナは私が頂いてもいいですか?」
「ハハハハハハハハ!セイレーンさんちょっと笑えないですよ?」
「ハハハハハハハハハ!」
「「ハハハハハハハハハハ!!」」
2人を除きその場にいる全員が理解しただろう
今の2人に近づいたら間違いなく殺されると
「さてエバーさん」
牽制し合ってる2人を後にアイアスが話しかけてくる
「お?」
「エバーさんはハンマーバーグじゃないですよ」
「は?何に乗ればいいんだよ?」
「そりゃ正式化したクロムウェルに決まってるじゃないですか。量産化が頓挫したとは言いましたが作れなかったとは言ってませんよ?」
確かにその通りである
そしてそこに立っていたのはよく似た。しかし全く別物の機体であった
ハンマーバーグと比較するとやや大きく
各部は角ばっている部分が多かった
そして機体には最初から武器が装備されていた
「クロムウェルからの改良型で機体名は「オリバー」としました」
「これ武装は固定か?」
「残念ながら拡張性は皆無ですね。性能を極限まで高めた結果です」
右手に大型のライフル。下部からはチューブが飛び出し機体の腰に繋がっていた
右肩にはさらに巨大なキャノン?本体の大きさに比べると口径はかなり小さい
左手にはバックラー?ナックルガード?判断が付かない謎の武装
左肩には極めて分厚いショルダーガード。そこから柄のようなものが飛び出していた
「では説明します。右手のライフルは試製可変型万能狙撃銃をさらに改良しました」
「具体的には?」
「ざっくり言いますと射程を削って中、近距離武装です。なんで狙撃は出来なくも無い程度になっちゃいました」
「・・・・・そのための右肩?」
「そのとうりでございます!これ、対物ライフルです」
またとんでもない武器装備させたなぁ
「見た目より弾丸の口径は小さくなっていますが。発射直後に銃身内部で弾丸が半プラズマ化します」
「は?」
「これにより光学兵器と同じ装甲溶解効果を持ちつつ物理的貫通能力を持っています」
「簡単に言うと?」
「コックピットに当たれば問答無用で死ぬ」
おお・・・なんだそれ
「左腕に装備してるのは攻防格闘ユニット・・・・って名前にします?」
「いや俺に言われても」
「先端で殴ることで高電圧によるスタン効果、内装展開によって使用回数5回きりのパイルバンカー、あと盾になります」
盾というにはかなり小さいが
殆ど前腕と同じ大きさである
「左肩は装甲兼カウンターウェイトです」
「飛び出した柄は?」
「一応プラズマ発生式のブレードになっています」
某ロボットのビームでサーベルみたいなもんだな
「尻に刺さってる2本のタンクは増漕?」
「です、自動で最初に使い切って勝手に切り離されます」
なるほど、思ったより使いやすそうだ
「アイアス製にしては珍しく普通だな」
「いえいえ、ここからが普通じゃないんですよ」
あ、やっぱり?
「東側は砲撃主体って情報をいただいたので・・・」
「頂いたので?」
「エバーさんは単機で砲兵を殲滅してもらうってゲンドゥルさんが言ってました」
ま~た単機駆けだよ
「たまには普通に戦いたいんだが」
「諦めてください」
ひでぇ話だ
「んで?今回はどうやって強襲するんだ?」
「空からです」
「・・・・・・・ちょっと何言ってるかわからないんですがぁ?」
「船から空に上がって砲兵の真上から落ちてください」
「君が何言ってるのか全っ然理解できない」
そんな話をしていると番外メンバーの整備班の皆さんがオリバーの背中に巨大な何かを取り付け始める
「・・・・う~~ん・・・普通じゃなかった」
「だから普通じゃないって言ってるじゃないですか」
装着されたパーツはオリバーの2倍はありそうなものだった
そして側面には翼が折りたたまれている
「グライダーか?」
「一応ブースターもついてますよ。出力低くて姿勢制御くらいにしか使いませんが」
「普通のブースターじゃないのか?」
「上空で三式弾が埋め尽くされた状況で誘爆したいなら変更しますが?」
「や、遠慮しときます」
「仕組みとしてはMPDアークジェットみたいなもんですね」
あ~電気式のブースターだっけ?
確か大昔から研究されてるけどいまだに実用レベルに至ってない奴だ
いや、宇宙空間では試験されたんだっけ?
「一応名前は「ウルリッヒユニット」というとてもかっこいい名前を付けてます」
「自画自賛乙」
とりあえずルーデルさんに謝っとけ
「それで専用の船も用意しまして」
またか、また専用か
「今回は強襲船ではなく高ステルス船です」
「レーダーに映りにくい?」
「いえ、レーダーにも目視でも{確認できない}レベルです」
そんなものよく作ったなぁ
「まぁ通常航行時限定ですけどね。機体が甲版に出たらあっさりバレますし。武器は一切つめませんでしたし」
「それじゃあウルリッヒユニット?は何のためにあるんだ?」
「武器はありませんがカタパルトは装備されてますよ」
だがそのウルリッヒユニットの推進装置は出力が低いと言った
それはつまりカタパルトなんてものじゃなく
「それ打ち上げ台って言わないか?」
「あ~・・・・そうとも言います?」
「そうとしか言わねぇよ。どんぐらい上昇するんだよ?」
「50キロまでは確実に上がれます」
「お前頭おかしいんじゃねぇの?」
50キロと言えば成層圏と中間圏の間くらいである
「あ、低かったですか?一応頑張れば85キロまでイケる設計ですが?」
「高すぎるんだよ馬鹿野郎!」
ちなみに85キロと言えばオーロラが目の前にあるレベルである
下手したら流れ星に直撃する
「お前グライダーが打ち上げでそんな上空まで行くって・・・」
「現実じゃ無理ですよねぇどう考えても」
ケラケラと笑う
「人間が死ぬわ」
「でもゲームですから」
そう、ゲームなのである
だから何でもできる
たぶんアイアスが暴走してるのはゲーム内だからこそだろう
っていうか現実でこんなものジャンジャカ作られたら地球がヤバい