Le Bateleur
「ポイント62の2部隊全滅!」
「ポイント58の6部隊も全滅!」
CPは完全に混乱していた
2分足らずで8機が大破
増援の24機に至っては{単機を相手に}5分で全滅している
「最後の通信によると照準補正装置が作動しないと言っていました」
「照準補正機能に頼りきりなのが裏目に出た、といったところか。ル・バチュラー、どうする?」
隣で何やら思案している男に話しかける
このル・バチュラーという男が海底に沈んだオリジナルのドラグーンの座標を知っていた男である
そして照準補正装置を作った男でもある
「どうするも何にも、従来道理に戦闘してもらうしかないんじゃないかい?補正装置が無かった時と何も変わらないさ」
「対抗策は無いか?」
「無いね・・・あったとしても他の奴らに教えたりでもしてみろ?どこかからバレて2人で仲良く垢BANさ」
ル・バチュラーと話す男こそメリアリスの団長
2代目メリアリス団長のエドワードである
メリアリスがリグレットに喧嘩を売る直前に二人は出会った
戦乱のどさくさに紛れてオリジナルのサルベージ
その廉価版の量産
そしてその廉価版であるレプリドラグンに搭載している・・・と、{偽って}不正ツールを堂々と使っている
正直エドワードは垢BANされても大した問題ではないと考えている
それが{今}でなければいいのだ
この機体が高性能と判断されれば多くのプレイヤーがレプリドラグンを買うだろう
そこで製造者である自分たちが故意に製造数を搾ればいい
そうして欲しいけど買えない状況になるとネットではRMTに走る人間は多く存在する
その元締めにエドワードはなりたいのだ
そうなってしまえば垢BANされても問題ない
他のオークションサイトでも。それが禁止されれば裏サイトでデータを売ればいいのだ
所詮はデータ
ゲームデータを解析すればいくらでも量産できる
「数で押すか?」
「それしかないねぇ・・・しかし6部隊を単機で全滅出来る敵となればどうしようもない」
「ではどうする?」
「単機の方は私が出るさ。もう片方は数で押せ。補正が使えないと言っても面で押せば磨り潰せるだろう?」
「そうだな。じゃあこっちはCP全体で62の奴らを迎撃する」
「ここを出るのかい?」
「どうせオリジナルを出すんだろう?なら巻き込まれないようにする。相手もこっちに向かってるみたいだからな」
「そうだね。感謝しておくよ」
「全員搭乗しろ。ここを出てポイント62方面に向かう。敵対する奴らはすべて押しつぶせ!」
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「ハニカム火山か・・・・・懐かしいなぁ・・・」
最後にこの火山に近づいたのは3年くらい前か
6番としてなかなか楽しい時期だった
ガチ勢だったこともあって結構精神擦り減ってる時期でもあったが
そんな懐かしい感覚を感じながらもジェルジオは凄まじい速度で進む
しかしその足は膝で衝撃を緩和してはいるが歩いてはいない
あの後追加ブースターには問題があることが分かった
推進剤の使用量が凄まじいのである
そのためブースターの慣性を消さないように足の裏にはローラーブレードを装着することになってしまった
これがまた使いづらいことこの上ない
使いこなせれば延々と高速機動ができるというのは美味しいのだが
なお、ジェルジオだけを乗せた高速艇は大量の推進剤と弾薬を積み込んでいた
おかげでここまで長く戦い続けられたのである
「エバー、聞こえる?」
「はいはいエバーだよ」
「なんかメリアリス全機がこっちに向かってきてるのよね。どうしよう?」
「ん~・・・サルバトレルさん聞こえる?」
「聞こえてるぞ、なんだ?」
「別に接触しちゃえばこっちは全滅しちゃっても問題ないんだよね?」
「そりゃそうだが・・・・いいのか?」
「いいでしょ?・・・敵の全滅が目的じゃなくて接触して不正の痕跡を押さえるのが狙いなんでしょ?」
「まぁな」
「この機体は自分の愛機ってわけでもなし。盛大にドンパチやって清々しく壊滅しちまおう」
「ちょ!エバーさん!それ私が一生懸命作ったんですよ!」
「ごめんアイアス、諦めて。また作ればいいじゃん?」
「この鬼!悪魔!独裁者!」
「アイアスっていつもこんな役割ですネ」
「それがコイツのアイデンティ・・・・・」
通信が突然切れる
代わりに見知らぬ声・・・・いや、この声は良く知った声だ
雑音交じりで聞こえる
「・・・お前は楽しそうだな、羨ましいよ」
「1番・・・・ツール配布はアンタの仕業か」
「ああ・・・・ああ・・・お前があの時俺たちを見捨てなければこんなことになってなかった」
「プロゲーマーになりたいから勝つために不正する。論外なんだよそんなのは」
「MODと呼んでくれたまえ。海外のゲームでは当然のように使われているんだぞ?」
「命中率100%と無敵化をオンラインでするのがMODであって堪るか」
これが部隊を抜けた理由である
最初のころはこうではなかった
みんなで試行錯誤して作り
僅か1%の装甲や機動力の向上でみんなで嬉々としていた
最初は勝利する回数が多かった
しかし上に行けばいくほど敗走する回数が増えていった
この男はそれを受け居られなかった
最初のころのように連勝を!
ネットで知られるようになってスポンサーを!
そうして俺が気が付いたころには勝つことだけを考えるだけの部隊になっていた
初期の面子は抜けていき
談笑しながら倒したり倒されたりしていたのが勝つことだけを考えて罵声を浴びせるばかりの部隊になっていた
「新しいアカウントを作ってまで戻ってきた理由は?」
「お願いされたんだよ・・・高値でな。儲かったぞ?あとはついでに復讐かな?」
「復讐?誰に?」
「テメェーに決まってんだろうが!俺の夢をぶっ壊したテメーに!」
火山に建てられた拠点から巨大な光線が発射される
即座に機体をのけぞらせるが
「左腕の装甲が溶けるか・・・」
幸い内部にまではダメージは無い
「垢BANされても俺には関係ねぇんだよ!てめぇをボコって自慢の愛機を破壊出来ればな!」
「なるほど!でもすまん!これ愛機じゃないんで壊されても特に問題ないんだ!」
「こっ・・・・てめぇは!どこまで俺をコケにすりゃいいんだ!」
拠点には巨砲を構えたドラグーンがいた
ブースターを全開にしてジェルジオを全速力で接近させる