残滓
そして4日が経過した
「暇ぁ~暇ぁ~ぁぁぁぁ・・・・」
「お前そればっかりだな」
調査のためにログインできなくなってからというもの夏妃は自堕落になっていた
大学から帰ってきたらずっとリビングでだらだらしてる
そしてタブレットでネットをしていた
「あれ?悠君悠君」
「なんだよ?」
「国会前でデモだって」
デモってこのご時世に?
「内容は?」
「えっと・・・首相の家族が犯罪を犯したすぐ退任しろ~的なデモ?」
「なんだそりゃ?」
こちらでもスマホで確認してみる
{先週末、大規模ネットワークゲームで不正ツールを使用したとして首相の親戚が任意同行に応じた}
首相の親戚とはいっても
夫人の父親の妻の従弟の母親の父親の妻の連れ子の息子
「殆ど他人やんけ・・・」
「っていうより先週末の大規模ネットワークの不正ツールって」
ですよね
俺達もしかしてヤバいことに首突っ込んじゃった?
「お~い2人とも。お客さんだぞ」
洋子が玄関から声を駆けてきた
「お客?誰さ?」
「お久~6番」
って4番かよ
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「へ~・・・つまり旧4番のあなたが今ではGMと?」
「そゆこと。今頃他のGMがゲンドゥルさんたちとも接触してると思うよ?」
「ふ~ん、で調査結果は教えてくれるの?」
そして4番は笑顔で
「むしろ知ったうえでこちらの要請に応じて欲しいなって?」
「要請?」
「そう、さすがにちょっとこのツールは重犯罪沙汰になりかねないツールでさ」
「そんなヤバいツールなんですか?」
「ツールを使う側としては数年前に流行したファブニルというツールとほとんど変わらないよ。6番は良く知ってるだろ?」
「ファブニルか・・・懐かしくも思い出したくない名前だなぁ」
射撃武器を使う対戦ゲームで重要なのは適切なAIMである
バトルウォーカーも同様で
基本自分で照準を合わせ撃って当てる
ただし追加装備でロックオンパーツというものが存在する
機体のどこかにカメラを装着し専用の火器管制チップを装着
さらに機体のOSも自分用に設定しなければならない
非常に強力なのだがジェネレーターのエネルギーを常時大量に消費
カメラが大きいためその部分が非常に脆くなる
しかも壊されたら機能が発揮できない
OS設定もとても面倒というデメリットが大きい
そんな中作られたのが外部ツールのファブニルである
使い方はとっても簡単
HMDにインストールして
ツールを起動して
ゲームを起動する
これだけである
なお有料配布であった
このファブニル
起動中に事前に設定した条件を満たすと
敵性の当たり判定に自動で照準を合わせるものである
「ファブニルってどっかの神話のドラゴンの名前・・・・あ!」
洋子君正解である
作ったのはドラグーンの制作者である
つまり1番
「でもそんなの猛威振るってた?聞いたことないけど?」
「西で一気に流行しだしたんだけどその次の週で即座に全員BANしたみたいなんだよね。当時は僕もただのプレイヤーだったからそこらへんはわがんね」
「そんな大規模BANも聞いたことないけど・・・」
「ばれたら警察沙汰じゃないか?だから当時の運営が黙ったんだよ」
結局逮捕者出てちょっとニュースになったんだけどな
ついでに言えばその運営の一部も1番とグルだったのである
お金回して黙らせてたそうだが
他のユーザーにバレたため尻尾切りしたと思われる
なお後日入社した4番はそのあたりに詳しかったため即座に密告
全員解雇させて自分は運営のお偉いさんとコネ持ったそうである
逞しいね
「んで?ファブニルとほとんど変わらないって事は、その変わってる場所が重要なんだろ?」
「正解、色々なセキュリティ会社の知り合いに聞いたけど今までにないタイプだそうだ、が」
「が?」
「さらにAs extension, so is forceとまったく同じ機能が発動できる」
要するに自分は無敵で敵には絶対に攻撃が当たるツールである
「さらにさらに」
「まだあんのかよ」
「HMDから個人情報やパスワード、それと連動してるスマホのIDとパスワード等々とにかく何もかも丸裸になってしまうツールだよ」
完全に犯罪である
「んで今話題になってる首相の親戚さん、あれがドラグーンで君たちと戦った奴の一人」
やっぱりかよ
「と、言うことで以上で説明を終わりにしたいと思います。んでこっからが要請」
夏妃と洋子も真剣に聞いている
「君たちのHMDに私と上司が用意したプログラムをインストールしたい。それで西に渡ってドラグーンの関係者と接触してほしい」
「え?GMだったらそういうの簡単にできるんじゃないのか?」
「出来るねぇ・・・でも上司が一部の人間が怪しいから行動できないって」
「あぁ、また運営買収されてるのか?」
「上司の勘だけどね。でもよく当たるんだよあの人の勘」
もう運営全部見直すべきじゃないのかね?
「なんで運営として行動するとまた尻尾切りで大本に逃げられる可能性があるわけよ。協力してくれるかな?」
「私たちの利点は何かしら?」
「残念ながら特には無いな」
「どんなプログラムなんだ?」
「チートツールの検知と無効化&私とその上司のPCに使用者のIDが送られる」
「そう、やりましょう悠君」
え、なんでそんなやる気になってんのコイツ
「だって卑怯じゃない!私たちがどれだけ悠君に匹敵するような実力を手に入れるため必死に努力しているか!」
「努力してたか洋子?」
「いんや別に?っつかお前ここ数日ゴロゴロしてたじゃん?」
「ログインできなかったんだもの!何をしろというのよ!」
「「勉強」」
「ちくしょうぐうの音もでねぇ。いいもんエンジョイ勢だから別に楽しめれば」
6行前になんて言ってたよお前
「えっと・・・受けてくれるのかな?」
「まぁここの3人は了承ってことで、他のメンツは要相談かな?」
「そうか、助かるよ。あ、それと」
まだあるのか
「今回の騒動が解決するまで私と上司も通常のHMDで君たちと行動させてもらうよ」