AIM
「お~い・・・お~~い悠~」
もうみんなログインしているというのに悠が部屋から出てこない
なので部屋に押し入ってみた
「は~るか~、返事くらいしろよ~」
その悠はPCの前で一心不乱にマウスを動かしクリックを連打している
「・・・・・・・・・ん?おわ!ノックしろよ洋子」
「何度も声かけてるっつ~の、お前が聞いてねぇだけだって」
「マジで?全然聞こえなかった」
さて愛しの悠君は何に夢中になっていたのかな~?
もしや18禁のエロサイトかな?
「・・・・・なんだこりゃ?」
画面には白いボードに赤いラインの入った黒い円が現れていた
その円は時間を追うごとにだんだんと大きくなる
「エイムトレーニングだよ」
「へ~、こんなソフトあるんだ。いくらすんの?」
「500円くらいかな?」
しかしこんな努力をしているとは
こいつの化け物じみた実力の裏にはこんな努力があったのか
「ともかくトレーニングは終わり、みんな待ってるんじゃないか?」
「う~ん・・・なんかしっくりこないんだけど時間なら仕方ないか」
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「西方海域から数機で向かってくる奴がいる」
そんな広域チャットを聞き海洋を観察する
「さばみその機体か・・・」
「鯖味噌?」
「ナンバーズの番外、つまり下位メンバーの奴の機体だ」
ああ、さばみそって名前か
「そんな奴いたっけ?」
「お前はもっと仲間の名前を覚えておけ」
ゲンドゥルさんは覚えてないらしい
でもラシャプさんが知ってるならきっとその通りなんじゃねぇかな?
もうラシャプさんがリーダーならよかったんじゃねぇかな
「んで、その後ろから来てるのは?」
後方からさばみそ?の機体とは構成の違う機体が4機
あ、さばみそが撃たれた
「4機・・・全部ドラグーンか・・・」
正面から見れば細見
だが横から見ると重厚そうにみえる不思議なデザインである
「まだ陸からは遠いか、このままやられたら西でリスポーンだな」
「じゃあ助ける?」
「無茶言うな、ドラグーン4機相手にこのメンツだけでどうにかなるものか」
そんなに強いのか
こっちだって結構強化も実力も出てきたんだけどね
「それにアイアスだってまだ武器作りに夢中で工房から出てきていない」
あとサイドにエバーもね
「じゃあ見殺しにする」
「私は助けるに一票、ドラグーン対策の情報が聞けるかもしれないし」
「あぁ・・・もぅ!わかってるさ!助けるしかないって、だが言っとくが全滅したって私は知らんぞ!マジで強いんだからな!」
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「さばみそ!陸が見えた!もう少しだ」
「解ってる、あまり動くな狭いんだから」
「やっぱ1人はあっちに残ってたほうがよかったんじゃねぇの?」
「俺は嫌だ、もう西は嫌だ」
「そんなん俺だって嫌だ」
「喧嘩するなら放り出すぞ馬鹿野郎」
後方のドラグーンが攻撃してくる
「ツァーンそこ退け!攻撃が見えねぇ」
「無理だ動けねぇ」
とにかく勘で動き回る
「推進剤が切れそうだ」
「元気そうだな裏切り者」
どこかから通信が聞こえてくる
それと同時にドラグーンに何かが突き刺さる
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多少の精度は向上したのかリボルビングライフルは先頭のドラグーンに直撃した
アイアスの狙い通り重量バランスが崩れて動きにくいようだ
「普通なら一撃で致命傷なはずなんだがな」
やはりドラグーン相手に正面から挑むのは無謀である
「ラシャプさ・・・・誰だお前は!」
「ラシャプだよ馬鹿野郎!」
「私もいるぞ!」
回線にゲンドゥル乱入
「ゲンドゥル・・・さん・・・・」
「おやおや、元気がなくなったな」
そりゃ自分が裏切ったリーダーに鉢合わせたら気まずいだろうに
「お叱りはあとでたっぷりしてもらえ。いまは早く都市部に入ってこっちにリスポーンを変更しろ」
「それがしたいのは山々なんですが、もう推進剤が」
「我々がドラグーンを止める、お前たちは最短距離で都市部に行くんだよ。グズグズするな」
「う、うっす!」
ラシャプ・ゲンドゥル・セイレーン・A子
セレブリティッシュ・ネクスター
この6人で4機のドラグーンを止める
まずA子とセレブリティッシュで弾幕を張る
「2人で敵に向けて撃ちまくれ。いいか、絶対陸地に入れるな。陸に上がったとたんに機動力が1.5倍になるぞ」
ドラグーンは2人の攻撃を難なく回避する
しかし海上では慣性が強く働き急な方向展開はできない
そこに確実に一撃を加える
「1機装甲貫通、フレームが見えた」
しかし敵も食らうだけではない
巨大なライフルのような何かを発射してきた
「うわっと・・・げぇ、一発でシールドがひしゃげたんだけど」
セイレーンがA子の盾になってくれた
上手い感じにシールドを斜めに構えたおかげで貫通は免れたようだ
「スナイパーキャノンを通常機動で撃てるのか・・・しかも銃身はカットしてると来たもんだ」
現実の銃の話ではあるが
銃は本体が重いほど反動は小さくなり
銃身が長いほど精密性と射程が良くなる
その二つを削ってしまえばどうなるか
そんなものまともに扱えるはずがない
しかしドラグーンの性能でその欠点を無理やり抑え込んで
利点だけを引き出している
「しかし1発ごとにリロードが必要なのが幸いか」
フレームが露出した機体に直撃させる
1機は行動不能にできた
これを回収すればこちらの戦力にできる
しかし
「同士討ち?」
大破した機体を残り3機が躊躇なく粉砕した
「ジャンクひとつ残さないか」
「・・・でも、そんなことしてたら{こう}なる・・・」
破壊のために味方を撃った1機が腰まで水没する
「・・・ラシャプ・・・」
「お手柄だネクスター」
海中からネクスターがドラグーンの足を掴み沈める
それが最大のチャンス
即座にリロードして36発すべてをフルオートで叩き込む
手加減してパーツを残したいがそんな余裕はないと判断した
-ネクスター 死亡-
1機の足を掴んだ瞬間にネクスターは残り2機に一斉攻撃され撃破された
だが通常のBWとドラグーンの痛み分けなら大金星である
この結果を無駄にはしない
急いでリロードして残り2機に攻撃しようとする
しかし撃つ瞬間に周囲が見えなくなる
「煙幕!くそ、全員後方に下がれ!」
しかしその指示は間に合わなかった
2機のドラグーンはそのまま南大陸に上陸してしまった
陸地に上がったとたんに敵の動きは異常なまでに早くなった
「セレブ!上!」
「え?」
ドラグーンは一気に飛びあがり
そのままセレブリティッシュのコックピットを踏み潰す
-セレブリティッシュ 死亡-
あっけなく撃破された
「こ、んのやろぉ!」
敵に向けて撃ちまくる
とにかく弾幕を
あの速さの敵に接近戦を許してはいけない
瞬間、武器が破裂した
「は?」
ドラグーンは規格外の機動をしながら正確に武器だけを撃ちぬいていた
そしてその銃口はコックピットに向けて
「撃たせない」
銃弾は横に逸れて直撃は免れた
セイレーンが横槍を入れてくれたおかげだ
「早いなら掴んでしまえば!」
所謂キャットファイトである
必死に掴みかかるセイレーンとそれを引きはがそうとするドラグーン
「A子!撃って!」
「一緒に死んでも恨まないでね!」
「なんだって?」
そう、通常の武器はさっき破壊されてしまった
今手元にある武器は
ラシャプご用達のスナイパーキャノンである
「アンタが撃ってって言ったんだからね」
ドラグーンを破壊する
しかし残念ながらセイレーンは破壊できなかった
寸前で避けられてしまった
「あんた今心の中でなんて言った?」
「キノセイジャナイノー?」
「ってそれよりもう一機は?」
ラシャプの方を見る
そこには半壊しながらも何とか生存しているラシャプとゲンドゥル
「わりぃ、遅くなった」
「いや~メンゴ、メンゴ」
サイドとエバーが最後の一機を片づけてくれていた
「何とかなったか・・・しかし量産品でこれとはな・・・」
今なんて言った?
「あぁ、オリジナルの半分程度ってところか」
えっと、つまりオリジナルはこの2倍強いと?
「で、エバー達に聞きたいんだが。なんかこいつらのエイムに違和感を感じたんだが?」
「鋭いなサイド」
「お前やラシャプは確かにAIMお化けだけどこいつ等のAIMはなんか機械的過ぎてな」
「そこらへんは我々が言ってはいけない領域だ。下手するとBANされる」
「多分この戦闘で運営に検知されただろう。俺の戦闘はあいつが見てる。後日招集で説明会と言ったところだ」
あぁチートとか不正ツールの疑いか
「ドラグーンが高性能と言っても所詮操作してるのはプレイヤーだ。ならばAIMはどうしたって個人差が出てしまうからな」
「おい、ここであんまり話すなよ」
「おっと危ない」
「あーあーテステス。みなさん聞こえますか?」
何処からともなく音声が聞こえる
ここにいる全員に聞こえているのだろう
「聞こえますか!GMです!僕は!今!あなたたちの心に直接話しかけています!」
「そういうのいいからはよ要件言え」
チッて小さく舌打ちが聞こえた
「不正ツールの痕跡が発見されたので今から貴方たちと敵対者のログや通信情報を調査させてもらいます。終わるまではログインできませんのでご迷惑でしょうがご理解ください」
こっちまで調べられるのか・・・
「その件に関しましては当然ログインできなかった時間に応じて補填しますので」
「まぁ仕方ないだろ」
「調査が終わり次第メールいたしますので」
「あいよ、じゃあ皆、今日は解散という事で」
そうしていつもより早めにログアウトすることになってしまった