1年の終わり
3月下旬
春休みである
桜の舞う道路を1台の車が走る
運転は夏妃が
助手席には俺である
「初心者と思えないほどスムーズに運転するな」
「多分バトルウォーカーのおかげじゃない?」
そこでなぜゲームが出てくるのか
「10月のアプデでジープとかバイクとかも追加されてたからね。街のレンタルジープで練習したら普通に運転できるようになってたわ」
それそんな使い方するもんじゃねぇんだけどな
「それより左見て。あそこが私たちが通う大学よ」
桜並木が途切れると同時に左に大きな建物が見える
大学と言うだけあり敷地が非常に大きいのだが
「学院がもっと大きいせいで大学が小さく見えるんですがね」
「学院の卒業生はみんなそう言うっておじい様が言ってたわぁ」
夏妃は4月から大学生になる
だが寮は出て行かない
車の免許を取った理由は寮から大学まで通うためなのだ(俺は先日知った)
徒歩では2・3時間かかる道でも車なら15分程度で到着するのだ
それなら使用人の運転で通えばいいじゃん?って思うが
「プライベートで洋子と悠君と一緒に出掛けたいときもあるかもしれない!」
と言う理由もあったりする
「まぁそんなわけで大学を通りすぎま~す」
「あ、寄って行かないのね」
どこに行くのかは教えてもらっていない
そしてそこからさらに2時間ほど進む
そこは山の中の急なカーブだった
カーブの先には海が見える
「ここに来たかったの」
そう言う夏妃の声は少し震えていた
その様子を見て察した
「・・・ここでね、お母さんが死んだの・・・・・」
なんとなく予感はしていたので特に驚きはなかった
「別にここにお母さんが居る。とか、お母さんに悠君を見せたかった。とかじゃないの」
震えた声で
でもその視線はしっかりと俺を見ていた
「ちゃんと自分の過去を見て。受け入れて。前に進みたいなって」
「良い事だと思う。でも急ぎすぎちゃいけないとも思うよ」
ある日突然家族が居なくなったら
そんな事めったに起こることじゃない
でも絶対に起きないわけじゃない
「わかってる。走ったりしない。歩いて進む」
「じゃあ俺は一緒に歩くよ」
夏妃の傍に居てあげよう
と言うよりも俺が一緒に居たい
「あ、でも洋子も仲間に入れてあげないとイジけちゃうね」
そう言って夏妃は笑いだす
「悠君・・・・大好き」
そう言ってキスをされた