見えない敵
「全員、今回の作戦をもう一度確認する」
森林を歩く10機、その部隊長が言う
「知ってると思うが
この森を抜けるとエリア42の荒野地帯の高台に出る。
そのエリア42中央にメリアリス同胞だ・・・・
訂正、革命の部隊が集結している」
別に訂正しなくてもいいんだろうがこの部隊長は生真面目に言い直している
この隊長、いわゆるロールプレイをしており軍人になりきっているのだ
ゲームなんだからそこまで拘らなくても。
と、思う人もいるだろうがゲームだからこそこだわりたい人もいるのだろう
「我々の目的は集結部隊の戦力把握。
可能であれば妨害、及び殲滅だ」
集結してるって判明している時点で殲滅とか不可能な戦力なんじゃないだろうか
「森を出るぞ、周囲の確認を怠るなよ」
開けた荒野に出る
周囲には敵影はない
「敵影無し。このまま向かいますか隊長殿?」
「そうしよう、索敵を怠るなよ」
天候は晴れ、やや風が強く荒野には土煙が少し舞い上がっている
他の大陸の状況はわからないがこの西大陸では遠距離攻撃と言えば榴弾砲が主流だ
榴弾砲は長大な射程、爆発による範囲攻撃、放物線による直線状障害物の無視という利点がある
ただし弾薬費が高い、発射から弾着までが長い、1発ごとに装填(例外はある)という欠点もある
今注目するのは{発射から弾着までが長い}と言う点
これだけ開けた場所なら発砲煙や閃光、弾体の軌道も丸見えである
要するに「見てから回避余裕でした」ができるのである
それどころか砲撃した敵の位置がわかるのでむしろ「見てるならいっそ撃ってこい」
という状況である
この部隊10人全員がそういう認識である
そしてその認識は正しい。正しかった
昨日までは・・・
何かが蒸発する音が一瞬聞こえる
「対光学行動!」
隊長が即座に叫ぶと全機で地面を撃ち始める
10機の周りには何も見えなくなるほどの土煙が巻き上がる
「誰がやられた?」
「7番機っす。照射時間0.4秒、肩部の3枚装甲全部持っていかれました。フレームも被弾しましたが問題ねぇっす」
「榴弾ではなく光学で狙撃ですか?この荒野で?」
自分たちが巻き上げる前から荒野には土煙が起きていた
光学兵器は狙撃に向かない
榴弾とは真逆で距離減衰が激しく射程が短い
一応出力を高めたものであれば射程は伸びるがそんなのを苦労して作るより実弾の狙撃武器を作ったほうが実用的だ
そして照射時間0.4秒で装甲が全部貫通したことが異常だ
従来の光学兵器では1秒は照射されないとそこまではいかない
「5番、照射受けてます。これだけ光学対策すれば威力はないですね」
それでも土煙を厚くしているのに照射を感知できるほどの熱量だ
「土煙が晴れる前に動くぞ、合図と同時に1番から3番までが前方。4番から7番までが左。8,9,10が右に飛べ」
3度目の照射
「3」
照射時間は3秒、照射間隔は15秒
「2」
おおよその位置は把握した
「1」
あとは散開して光学対策をしながら包囲する
「GO!」
全機が飛ぶ、その直後に
「うそだろぉ!」
まるで知っていたかのように榴弾が落ちてくる
そして榴弾の雨は飛んでいる10機に直撃していく
9機は榴弾の直撃により大破
生き残ったのは一番装甲が厚い6番機
その装甲も榴弾の雨によって殆どが剥がれた
1機だけ残ってももはやどうしようもない
できることはただ一つ
可能な限り接近して写真を撮り今後の戦いに生かす
ジェネレーターのリミッターを解除する
ブーストを最大まで吹かす
左腕でコクピットを守る
右腕で唯一残ったマシンガンを移動先に撃ち光学対策をする
榴弾が降ってくるが動き回れば致命傷にはならない
移動しながら一機では光学対策も万全とはいかない
フレームにダメージが蓄積していく
止まらない、止まれない
せめて敵の存在を確認する
そうしなければ気になってゲームをやめれない
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「と、そんな経緯があってこのスクリーンショットが撮影されたわけです」
そんな感じでリグレット同盟の幹部が言ってきた
「なんてドラマティックな・・・・どこら辺までがあなたの妄想?」
「なんのことかな?」
幹部は誤魔化した。
「とにかく10機ががんばって撮影してくれたこの写真と戦闘記録
気になるのは光学兵器の射程増大
予知のように直撃させた榴弾の雨
そしてそれらがたった4機で行われたこと
あなた方バレットナンバーズにこの謎を晴らしていただきたい」
まぁこちらとしてもそういうのは対策しておきたい
10月のアプデ二日後にさっそく新兵器らしき情報が来たのだ
早め早めに対策しとかないと時代遅れになってしまう
「依頼承諾しました。報酬を用意して報告をお待ちください」
リグレット同盟の建物から出る
ワクワクが止まらない
久しぶりに未知の案件
そうして3番・ゲンドゥルはバレットナンバーズの施設に報告に向かう