未来を語る
朝6時
目覚ましも鳴っていないのに自然に目が覚める
夏妃と洋子はまだ寝ている
2人を起こさないように着替えて部屋を出る
廊下を歩くと窓から外が見える
春らしい温かい日光とちょっとだけまだ寒い空気で意識が冴える
アイアスが消えた後すぐに敵の動きがおかしくなった
あとはそのまま全員で殲滅
勝利はあっけなかった
その後は1週間ほどで様々な復旧作業が行われた
またいつもの日々
とはいかなかった
復旧が終わったら素早く卒業式が行われ
亜子と奈々子が北海道に引っ越した
そしてそれを嫌がった御門が2人の近くに転校した
亜子と奈々子は困っていたがやはり嬉しかったんだろう
あっちで3人共同生活をしているとのこと
他のメンツは変わらずここで生活
アイアスは報告やら調査やらで忙しいらしく部屋から出てこない
時々笑い声が聞こえるからちゃんと動いているようだ
その笑い声が不気味すぎて菊月が不安がっている
そして今日から遅くなったが学院生活3年目
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「オッス!」
教室でゴウダが声をかけてくる
「テンション高いな」
「色々あってな」
その色々が気になる
「俺卒業したら結婚して実家継ぐわ」
「いきなりだな」
結婚相手は当然ミカガリ先生だ
「実家って何してんのよ?」
「牛屋」
牛ですか
「肉牛と乳牛両方やってんのよ。結構規模大きいほうだぜ」
そうか、3年目だもんな
「しまった・・・・俺来年どうするか考えてなかった」
「え?夏妃先輩と結婚するんじゃねぇの?」
結婚はするよ?するけどそれだけではいかんだろ
「主夫でもするのかと思ってた」
「18で結婚して主夫とか相手が負担しかないような気がする」
「じゃあ大学行くのか?」
大学は・・・・行っといたほうがいいな
「入試は大丈夫だろ?ミカガリ先生が「あいつなら特に勉強しなくても合格するな」って誉めてたぞ?」
それで油断すると落ちるんだから慢心はしないようにしないとな
現実から目を逸らし続けることはできない
本気で将来を考えないと
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「主夫でもいいわよ?」
「主夫でもいいぞ?」
その日の夜
3人で同じベッドに寝て
2人に相談したら
2人揃って同じこと言われた
「さ、最終手段として考えておくとして。やはり大学は行こうと思うんだ」
「別にいかなくていいのに・・・」
「2人で養ってやるぞ?」
嬉しい提案だが断っておく
ここで楽な道に逃げたら絶対将来のためにならない
「まぁ行きたいなら大学もいいんじゃないかしら?」
そうさせていただきます
やっぱり大学に行くと行かないとでは将来の選択肢の数が違うと思うから
「あ!言い忘れてた!」
「何?」
「明日遥君にお客さんがくるってお爺様が言ってたわ」
お客?
誰だろうか?
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笑いが止まらない
未だ知らぬ知識を得た喜びより
これまで積み重ねてきた人類数万年の知識があまりに児戯だった呆れのほうが大きい
「フフ・・・・これは人類には明かせないなぁ・・・・」
誰にも聞こえないようにつぶやく
インベーダーの知識を解析するとそれはそれは凄まじい物だった
アレが記録していた年月がおかしかった
宇宙は138億年前に生まれたと人類は予測した
だがインベーダーの総記録時間は
288億年
である
あり得ない
人類の知識が役に立たない
答えは簡単だった
この宇宙で作られた存在ではなかった
世界中の権威ある人間たちが頭を抱えるだろう
狂ってしまう可能性だってある
宇宙の果てを超えた先にあるのは別の宇宙だった
分かりやすく言うと
宇宙は泡なのだ
小さな泡一つが我々の宇宙だった
アレは別の泡を突き抜けてきたのだ
問題は
「泡を割らずに・・・・どうやって突き抜けたのか・・・・」
それの解決法もデータに残っていた
彼方の宇宙にはこちらの宇宙にはない物質があった
名づける必要性もないその物質が作用して別の宇宙に飛べたのだ
それだけ
それ以上は考える意味はない
アレを作った宇宙は
その物質があった宇宙は
すでに崩壊している
むしろ崩壊の理由のほうが重要だった
ビッグクランチだった
宇宙の終わりの一つが観測されていた
データの海で私は狂喜乱舞する
悲しいけどそれは今の人類には明かせない
もっと先
もっと未来になってから明かすべき知識だった
知識の独占ができたことは嬉しいけど
誰にも話せない孤独さが少し寂しかった