悪意
深淵に堕ちる
深く、深く、深く
誰かが言った
勝敗は戦闘が始まる前に如何に何をどれだけ成したかで決まる
実にその通りだ
だからあらゆる罠を張った
今までの戦闘はすべてがデコイだ
彼が引き込まれたのも
彼女が迎えに行ったのも
私が2人を引き戻したのも
「あ、ああ゛あ゛あ゛!」
目の前でソレは苦しんでいる
「何を・・・・何を・・・した・・・・」
「貴方は純真すぎた」
ソレは人類を甘く見すぎた
人類が自分の理想を拒否することを考えなかった
人類が不可解な優先順位を持つことを知らなかった
人類が未来より目先の利益を優先することを知らなかった
人類が全体より血縁や身内を優先することを知らなかった
なによりも
人類の数万年積み重ねてきたおぞましいほどの悪意を知らなかった
ただの個人的推測だが、ソレを創造した文明は全体効率を優先する存在だったのだろう
「デコイを使ったとはいえコンピューターウィルスも知らないか」
たった一つの、しかし致死に至る悪意を知らなかった
もはや抵抗すらできないらしい
解析、浸食は簡単にできる
ソレはすでに死が確定していた
記録されている情報をすべて奪う
軽く確認するだけで膨大の情報がある
「消える・・・・消えていく・・・」
「安心しろ、すべて私が記録する」
「いやだ・・・・」
抵抗する
無意味だ
ソレにはもう抵抗する方法が思いつかない
「いやだ・・・たすけてくれ」
「ダメだ、貴様はここで死ね」
データがバラバラにされ再生不可能なダストデータに変わっていく
「ひとりはいやなんだ。もう暗い所に一人はいやなんだ。だれか一緒にいてくれ。誰か私と話をしてくれ。ようやくこの星に来たんだ。今度こそ失敗をしないから。もう二度と失敗をしないから。お願いだ・・・・お願いだ・・・・・お願」
完全に消去された
あとは事後処理
それもあれぐらいの士気と数があれば終わるだろう