情けは人の為ならず
「爆発魔法!放つぞぉ!」
数十人の魔法使いが一斉に大爆発を巻き起こす
開戦の合図だ
「今のでどんだけ落とせた?」
「小が40、中が3、大は無傷だね」
多少の効果はあったってことか
「あ、小が70追加で~す」
「焼け石に水かよ」
「多分持ちこたえればいいと思うよ?」
「どういうことだ?」
「アイアスが付け焼刃とかそんな無駄なことはしないと思うし」
まぁ無駄は嫌うよなアイツなら
っつかついに呼び捨てか
「とにかく倒しまくって全滅しないで時間稼げば勝ちってことか?」
「多分ね」
「じゃあ俺らも行かないとな!」
「大型優先的に狙おう。多分私達じゃなきゃ消耗する」
「あいよ!」
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スポンサーが付いてプロゲーマーになって何年たっただろうか・・・
15年くらいまでは覚えていたんだが
・・・・何もすることがない
電力は回復したがネットは繋がらないままだ
することもないのでこうして昼寝をしている
他の国のことは何もわからない
ほとんど鎖国みたいな状態でこの混乱だ
多分政府が今頃必死に頑張っていることだろう
前の戦争でアメリカは失敗を犯した
参戦しなかったのだ
それは良い判断だっただろう
反戦デモも起きていたし
もしかしたら核戦争になっていたかもしれない
しかし
秘密裏に武器を売っていた
敵も味方もなくすべての勢力に
何時バレたのかは知らない
隕石でなし崩し的に終戦した直後に誰かが暴露した
当然世界中から非難された
多分責任を取らせる敵が欲しかった
国民も責任を取りたくなかった
だから当時の政府は崩壊した
政治家たちが丸ごと入れ替わってもそこまで変わることはなかった
いや
国外との接触を極端に避けるようになったことは違うか
まどろみの中でそんなことを考えていると玄関のドアを誰かがノックした
カメラを覗くとスーツ姿の男が立っていた
身なりがいい
どこかのエリート会社員か
いや訪問販売かもしれないな
「押し売りはお断りしていま~す」
「私はFaNNET社の者でして」
驚いた
金儲けのための道具でしかない俺にスポンサー様が直接会いに来てくれたというのだ
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とりあえず家に入れてコーヒーを出す
「貴方に依頼があります」
「報酬は?」
スポンサー様が嫌な顔をした
だが金は大事だ
見合った金が出るならなんだってやってやるさ
「前金20万ドル」
マジか
「依頼達成でさらに50万ドル」
いいねいいね
「内容は?」
CDケースをテーブルに置いた
「PCにネット回線とHMDを繋いでこのディスクを読ませてください」
「どうなる?」
「ネットに繋がり特定のサーバーにアクセスします。そこで戦闘をしている味方を助けてください」
「どうやって助けろってんだよ?」
「貴方が一番得意なゲームでですよ」
「バトルウォーカーに繋がるのか?」
「明確には違いますが似たようなものです」
「日付は?」
「できるだけ早く、今すぐにでも」
「金はちゃんと払えよ?」
「もちろん。あ、当然依頼を出したのはあなた1人ではありませんよ?」
「ほかに誰が?」
「ランカー2から15まで」
「ハッ!楽しそうだ」
「あぁそれと・・・」
「まだなんかあんのか?」
「J6もいま戦っているらしいですよ?」
Japanの6番か!
「あ~1回戦ったことがあるぜ?」
「強かったですか?」
「サイコーにな!」
なんで6番なのか分からねぇぐらいに強かった
当時の、そして現在の。日本のトップゲーマーとは格が違う
腕を上げたか?
それとも訛ってるか?
楽しみだな
「やる気が出たようなのでこれで帰ります」
「おう、帰れ帰れ。とっとと帰って社長にでも報告しやがれ」
「ではご検討を。№1・PHANTOM」
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依頼の承諾も確認したので運転席に座る
「受けたのか?」
後部座席から声がかかる
「ええ、報酬の話をしたら目を輝かせました」
「ふん、たかが70万で大喜びか。貧乏人は扱いやすい」
「こちらとしては助かりますが」
「それもそうか・・・70万で命を救われた借りが返せるのは安くはあるか」
それだけだったらわざわざ私についてくる必要もないのだが
後ろのデブ・・・・おっと失言
後ろの我が社の社長は・・・・
まぁ・・・・率直に言うと白人至上主義だ
白人が一番優れていると常に主張する
だが矛盾して実力主義でもある
自分が認めた相手なら人種も性別も関係ない
まぁ超上から目線だから嫌われてるのだが
「日本の子猿に命を救われた・・・・それが腹立たしい」
軌道エレベータから帰って来て早々そんなことを言い出した
「上の者が下の者に借りを作ってしまったのだぞ!これが如何に屈辱か!」
「はぁ・・・・」
しかもそのためにその日本人は骨折してしまったらしい
しかも借りを返すために手術費用を出そうとしたら丁重に断られたのだという
「あぁ腹立たしい!腹立たしい!」
「社長。あまり怒ると血圧が・・・」
「しかも!しかもだ!一緒に来たガードは一目散に逃げたではないか!情けない!なんと情けない!」
受けた借りはきちんと返す
社長は凄まじく嫌われている
しかし
長く付き合いのある者たちは知っている
この男は律儀なのだ
絶対に裏切らない男なのだ
だからこの会社はここまで大きくなれた
だから社員は陰口を叩きながらもしっかりこの社長についていくのだ