マリッジブルー?
広い荒野を4機のBWが走っている
初めは10機だった
しかし今から10分前に6機が一瞬のうちに粉砕された
「スマン!ブースターが熱でやられた!」
1機が急停止する
「わかった。少し止まろう」
「各機、周囲を警戒。冷却が終わり次第また動くぞ」
1機を警戒のために残し3機が弾薬の補給や機体の整備を始める
「アレは、何なんだろうな」
「少なくとも西でも南でもねぇや、あんな化け物見たことねぇ」
「もうあれはBWじゃないぜ?」
「噂に聞く東の巨大BWの関係か・・・それとも新しい大り・・・・・」
その言葉を最後まで言うことなく警戒していたBWの上半身が数十メートル先まで吹き飛んだ
「ヴィンチェンツォ!クソッもう追いついたのか?」
「動け動け!14時方向に発砲煙」
2機が起動を完了しその場から動き出す
「ディーオ!動け、何してる!」
「まだ冷却が終わってない、俺に合わせると追いつかれる。先に行け」
「・・・わかった。12時間後にプラントで待ってる」
「おう。レア素材よこせよ?」
ディーオというプレイヤーが1人足止めのために残る覚悟をした
勝利も生存も不可能だ
冷却もまだ終わってない
そもそも6機が瞬殺されるような敵なのだ
覚悟を決めて銃を構える
「そうだ・・・まっすぐ来い・・・そうじゃないと2機が逃げちまうぞ・・・」
曲がることなく突進してくる敵
だからこそ狙いやすい
「そうだ・・・まっすぐ・・・まっすぐだ・・・55ミリのタングステンが待ってるぞ・・・・」
いまだ!と引き金を引く
機体に大きな衝撃が走る
だがいつもの発砲の衝撃とは違う
構えた銃は撃たれることなく機体から吹き飛んでいた
「その速度でカウンターかよ・・・・」
もうできることはない
ディーオの機体は敵の体当たりで粉砕し
死亡判定が出るまでの間ディーオは空を飛んでいた
-もうこいつはBWじゃない、こんなのを使いこなせる人間なんているかよ-
------------------
西でも南でも見かけることがないほど巨大な船が海の上を悠々と進んでいた
目指すは我が家の新大陸
エバーが操るセイバーの新型拡張装備を他の大陸でテストしていた
「しかしすげぇなこの機体」
セイバーを整備するのは新生バレットナンバーズの仲間たち
「6本脚のケンタウロス・・・ゲームだからこその無茶だよな」
「なんかもうこれバトルウォーカーなのかな?」
「安心しろ。操作が複雑すぎてエバーさんかアイアスちゃんしか動かせねぇよ」
「量産不可能?」
「こんなの量産出来たらゲームバランス崩壊だっての。運営が絶対ナーフすっぞ?」
「そりゃそうか」
会話してる集団の横をエバーが通っていく
「あ、お疲れさんッス!」
「・・・・ん・・・・・・」
軽く手を挙げるだけで何も言わずに甲版に登って行った
「なんか最近エバーさん元気ないっすね?」
「あ~アイアスちゃん曰くマリッジブルーなんだってよ」
「マリッジブルーって、エバーさんが?」
「お相手は美女だってことしか聞いてないけどな」
「か~、うらやましい悩みだこと!」
------------------------
「大丈夫?」
地平線を眺めているとセイレーンが声をかけてきた
「ん~・・・・大丈夫だと思う」
「そうは見えないけど?リアルでもあんまり元気ないし」
「アイアス曰くマリッジブルーの一種だってさ。不安を取り除けば何とかなるらしい」
「何とかなるの?」
「何とかするよ」
突然セイレーンに後ろから抱きしめられた
「VRでこんなことやられてもなぁ・・・」
「現実だったら逃げるでしょ?最近一緒に寝てくれないし」
「ごめん」
「謝るんだったらあとでちゃんと抱きしめさせて?」
「うん」
「あとキスも」
「うん」
「そのあと舌絡めるから」
「それはやめて」
「待ってるからね?言いたいことあれば言っていいからね?吐き出したほうが楽になることだってあるんだし」
「ありがと」
---------------
もうすぐ日が昇る
そんな中ものすごい速度で荒野を十数台の軍用車が走る
その中で一人落ち着きのない兵士がいた
「新入り、落ち着け」
「はい、でも」
「大丈夫だ、家族はきっと無事さ」
フェンスを越えての戦車の襲撃はあれから増え続けている
多くの兵士がフェンス前で待機して即座に対応できるようにしていた
毎日のようにフェンス前で対戦車ライフルで黙らせていたところだ
だが今夜は違った
アルマトイの司令部から報告があった
「ここから40キロ離れた村に化け物が現れて村人を襲ったらしい」
40キロを一心不乱に走ってきた村人の1人が助けを求めてきたという
目の前の新人はそこに住んでいた
父、母、妹、妻、娘、そして妻の腹の中にももう一人
「全員、すぐ動けるようにしろ」
「多国籍側もこっちに向かってきている、対応できない場合は時間稼ぎだけでいい」
「止めます!」
車が一斉に止まる
「よしGO!GO!GO!」
隊長の掛け声とともに声も出さずに全員が一斉に動く
村の外周3方向に5人ずつ
残る1方に全員
3方はそれぞれの位置から警戒する
「静かすぎる・・・」
「新人、村に電気はないのか?」
「奥に一機発電機があってそれで街灯を3基照らせます」
「よし、それを点けよう。案内を」
「はい」
発電機が大きな音を鳴らし村を街灯が照らす
「何だこの穴は・・・・」
明りに照らされて見えるのは大人が通れるほどの大きな穴だった
たった一つだけの
日の出と共に多国籍軍が来たが結局この村には生存者はなく死体もなく血の一滴すら見つからなかった
そして同じことがフェンスの近くの村で複数発生していることが判明した