家系
ってことでやってきました小笠原諸島近海
今私は非常に不安に駆られています
だって周りに、っていうよりこの船に俺が知ってる人が1人もいない
訂正
知ってる人がいた
沢山いた
自分が座るやたら豪華な椅子
その対面に20人ほど
そのうち何名かはテレビでよく見る顔である
首相とか大統領とか国王とかその類の人
そりゃこんな人たちが1つの学院のプライベートにかかわってくれば国際問題である
「さて・・・・」
「はい!」
思わず声が裏返ってしまう
「くっ・・・・」
おや?様子が
「ハッハッハ!そこまで緊張しなくてもいい」
1人が表情を崩す
「ダルシア、あまり威圧するもんではないぞ?」
「すまんなぁ。反応が面白くてついつい」
「は?」
「いや、我々としては別にお前と夏樹の結婚に反対はしていないんだよ」
「むしろ感謝してるくらいだ」
感謝?
「夏妃は我々にとって娘みたいなもんでな」
「年齢的には孫ではないかね?」
「どっちでもええわい、話続けや」
どんどん皆の姿勢が崩れていく
「夏妃の・・・・うん、歯に衣を着せておこう。あの子の心の闇を取り払ってくれただろ?」
「払えたんですかね?」
「払えたさ。感謝してるよ」
「私たち大人ではあの子の心のケアはどうしようもないからな」
うん、出来たのであればそれは嬉しい
「だが一つ大きな問題があってね」
「問題ですか?」
「その一つの問題が・・・・・いくつくらいだっけ?」
「そこから枝分かれして3つの問題に派生してるんだよ」
3つ
「森口遥君。君は自分の親や祖父について何か知ってるかね?」
「えっと・・・母には・・・うん・・・・」
「あぁ、すまん。母のことはやめておこう」
「はい・・・父はあったことありませんし名前も知りません。祖父もあったことありません。伯母には育ててもらったので」
「そうか、知らなかったのを幸いとするか。これから知るのを不幸とするか」
あれ?俺の家系ってヤバかったりする?
「森口という苗字は君が生まれた後に作られた苗字だ」
「君の祖父の名は麻上周郎という」
麻上周郎
現在の野党がまだ与党だったころの総裁である
突然行方不明になって今現在も生死不明の・・・・
「え、そんなのが俺の祖父なんです?」
「う~ん、気持ちはわかるがそんなのが君の祖父だ」
「まぁあんなのと同じ血筋と思ったら日本人としては不快感MAXだろうな」
「アレのせいでどんだけ経済が混迷したか」
「財政問題を埋蔵金で何とかします!出来ます!とか言って結局埋蔵金なんてなかったってオチだもんな」
「無法地帯にボランティアとか言って無駄に人員送り込んで何人・・・・ゴホン!まぁそれが1つの問題だ。それ自体はマスコミに見つかれば話題になるくらいなんだがね」
散々な言われようだがこれが麻上周郎の世界からの評価である
これが原因で戦後の復興が40年遅れたとか言われたりもする
「派生する問題の一つが麻上の犯罪隠蔽のためのフリージャーナリスト暗殺事件だな」
「ネットでもテレビでも取り上げんかったよなコレ」
「知られたらマスコミも息の根止まりかねんからな」
「暗殺って物騒ですね」
「物騒だろ?君が結婚した後にマスコミが知ったらどうなると思う?」
「そりゃ確実に「政府が不正隠蔽のためにマスコミを暗殺した。その家系が名門学院の関係者!」とか言い出すでしょうね」
与党か野党かは絶対に言及しないだろうな。いや(当時の)与党ガー!とか言い出す可能性もある
「その問題は事実をきちんと報道できる環境を整えれば何とかなるだろうな」
「んで、その暗殺されたフリージャーナリストなんだがね」
「忰田と言う」
いやちょっと待て?
「気づいたかね?洋子ちゃんの父だ」
いや・・・・いやいや・・・じゃあ何か?洋子の不幸は俺の家系のせいで・・・
ちょっとまて!夏妃があんな目にあったのだって洋子の父親の事故に巻き込まれて
・・・・・・・・・・・・あ、ダメだ。全部俺の家系のせいじゃん
「いや、君が罪悪感を持つ必要はないから!」
「君は何も悪くないからな!」
「それが2つ目の問題だ。それを知ったら2人は婚姻を破棄するかもしれん」
っ・・・・・
「おまえ!彼の状況を考えろ!」
「もうちょっとオブラートに包むってことを考えろ!」
「そもそも落ち着いた状況になってから言えよ!」
「だが事実だ。事実は知らなくても何時か突きつけられるんだから先に知って対策をするべきだろう」
・・・・・
「3つ目の問題だが」
「やめろ!畳みかけるな」
「君の父は麻上周郎だ」
・・・・・・・・・・・・・・・・え?
「・・・・え?・・・・・・・・・え?」
ちょっと待って意味わかんない
「え?俺の祖父が麻上周郎なんですね?」
「そうだ」
「俺の父が?」
「麻上周郎だ」
「同姓同名?」
「同一人物だ」
「・・・・母は・・・・・」
なんとなくここで理解してる
でも
本当は違うかもしれない
「母は・・・養子かなんかです・・・か・・・?」
むしろそうであってほしい
最悪な答えだとしたら
「麻上周郎の実の娘だ」
「カッ・・・・ゲホッ・・・・」
脳で理解できた途端に息ができなくなる
というか呼吸の仕方がわからなくなった
「遥君!落ち着け!落ち着きたまえ!」
「医者だ!救命員を!」
体に寒気が走る
凍えそうなほど寒いのに全身が焼けるように暑い
汗が止まらない
息を吐くことはできるのに息を吸うことができない
体の震えが止まらない
平衡感覚がなくなって立っていられない
「鎮静剤!鎮静剤を!」
腕に何かを刺される
直後に意識が遠くなっていく
理解できた
母の口癖だ
「お前なんて生まれてこなければよかったのに」
この意味が17年たってようやく理解できた