↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/96

学外実習班編成

魔術学院の授業はなかなか始まらない。

測定や検査、試験といったものが続く。おかげで師匠におどされていた宿題やレポートはまだ発生していない。

僕は魔術学院が終わると技術学校の図書館に入りびたり、寮で夕食をとったら夜間補講に出ていた。魔術学院が忙しくなる前に、素材をもらいたい。でも、なかなかレポートが仕上がらなかった。


技術学校は学生証を即日くれたが、魔術学院は入学から三日かかった。木札でできた技術学校の学生証とは異なり、魔石が使われ魔方陣が刻まれている。

ギルドカードに近い機能があり、魔術学院の学生証は町の出入りにも使えた。


僕の学生証はシルバーと呼ばれるもので、他にAクラスの生徒に与えられるゴールド、CとDクラスに与えられるブロンズ、Eクラス以下に与えられるアイボリーがある。

学生証の差は学院内の待遇差であり、図書館での閲覧許可範囲や備品の使用に大きく影響していた。


学生証ができたのでやっと魔術学院の図書館が利用できる。学園区最大の魔術学院の図書館だ。

技術学校の夜間補講で毎回された無茶振りのあげく、すすまなくなったレポートの助けになる本があると、期待している。

日に二回技術学校に行くよりラクだしね。


一般教養の授業が始まった、午後。AクラスとBクラスの合同授業が行われる。検査も測定も合同だったが、互いにそこにいるだけで、かかわりはなかった。

しかし、学外実習の班を作りなさいとなれば、無関係ではいられない。

女子生徒二名以上を含む、AクラスとBクラス同数の八人班が望ましいとのこと。女子だけ男子だけや、AクラスだけBクラスだけというのがよくないらしい。


席を立って自由に話し合うそうだ。

クラスメイトが怖いから僕は教室の隅から動かない。


一週間もあれば、怖いクラスメイトの見分けくらいつく。

制服着用指定のある式典だけ。おかげで、服装でほぼ判別できる。何人か例外もいるが、そのくらいの誤差は言動で修正した。


怖い連中でだいたいの班は決めてくれ。

そして、サムイルとアルシェイドとは目を合わさない。


クラスメイトの行動をながめていると貴族の序列がわかる。Bクラス単独授業と合同授業で態度の違う人も多いし、主持ちは行動基準が明確だった。

主に害がなければ、どちらかといえば寛容でもある。だいたい年上だし、主の同級生をしているだけで能力も高い。

彼らは同じ学院にいるのが目的で、勉強のためじゃないのがよくわかる。


「座っているだけではいつまでたっても決まりませんよ」


クラス構成を理解したうえで行動を求めるエミール先生は鬼だ。先生の優しそうな笑顔が優しくない。


こっちはまだ動ける状態じゃないんだよ。

僕は初日に脅されたし、それを見ていた秀才くんたちも大人しくしている。野心より保身の人ばかりのようだ。


「ルキノ」


主持ちの中でも有能組がかたまっている場からの呼び出し。ヒエラルキー下位の僕に拒否権はない。

視界のすみでサムイルがムッとしていたが、大人しくしていてくれることを祈る。


「なんでしょうか?」

「女の子五人。男子用テントなしで野営できるよな?」

「できますが、僕以外の男誰ですか?」

「私です」


にっこりと大変すばらしい笑みを見せてくれた。

クラーク・ハッセン。Bクラス最年長の15歳。

主持ちの中でもレイム・フラレットと双璧をなす笑顔で脅す危険人物だ。


「君は脅しに素直ですから」


笑顔が真っ黒。

威圧がヒドイ。

視線をそらしてもう一人の男子生徒をさがす。


「オレ」


やたらきれいな顔をしたスーフ・メテロ、14歳。女装しても似合いそうな優美さだが、眼ざしが冷たく近寄りがたい。

性格はたぶん双璧よりマシ。というか、アレよりヒドイ人に存在してほしくない。


班決めは少数派の女子生徒が多数派の班ができたあと、スムーズに決まった。女の子の主を持つ有能な連中が、自らの主の安全性に最大の配慮をしていた結果、何も決まらなくなっていたらしい。

男の主持ちも、野営があるため決まるまでは大人しくしていたようだ。問題のある組み合わせになって恨みを買いたくなかったそうで、状況が読めないまま班を作ろうとしていたAクラスの生徒の牽制もしていたらしい。


班が決まると班別に話し合いがおこなわれる。


「中庭のカフェテラスでやりましょう」


Aクラスの女の子が提案した中庭のカフェテラスの利用は有料だ。金がないので、不参加表明しようとしたら足を踏まれる。

クラークが女の子たちからの壁になり、スーフに口をふさがれる。


「おごるから黙ってろ」


首を立てにふると手をどけてくれた。

歩き出し、女の子たちとばらけるのを待つ。


「僕、参加する必要ないだろ? 決定事項だけ教えてもらえば逆らいようもないし」


「お嬢様は生徒に身分はないとお考えです」

「仲間はずれはよくないですから」


逆らわないで、お嬢様たちからは平等に見えるようにしろということかな?

細かいこと気にしてもわからないし、大人しくしていればいいだろう。


テーブルを二つつなげて八人座れる席を作ってもらう。クラークとスーフに視線を向け、座っていいか確認する。

一応、今は同じ学生同士の扱いのようだ。

簡単に自己紹介しあう。

クラークの主は最年少10歳の女の子で、スーフの主は13歳の美少女。それからAクラスの姉とBクラスの妹の姉妹。 仲よさそだが、異母姉妹だそうだ。

あと一人は異国からの留学生。

Aクラスには女の子の主はあと二人いる。自分の主の側に近づけたくなかったそうでクラークとスーフが拒否。で、選んだのがレオナ・ミルフィーユ。12歳と同い年だが、年上に見えた。


数合わせの僕は沈黙する。

ミックスジュースと蜂蜜たっぷりのホットケーキ。餌付けされた僕に不満なんてない。

なるべく丁寧にゆっくり食べていたら笑われた。


「おいしそうに食べますね」

「おいしいですから」

「では、わたくしも何かいただこうかしら」


真剣な目をして、レオナはメニュー表を見つめる。

どうやら彼女もここにいるだけで、話し合いに参加するつもりはないようだ。


「いちごのクレープなんて一緒にどう?」


スポンサーに視線をおくれば、うなずいてくれる。当然、一緒に食べることにした。


話し合い、必要ないな。

エサもらっているから付き合うけど、班員決めたときにはもう僕以外のBクラスメンバーで予定は全部決まっていたのだろう。

クレープ食べ終わったら終了だったからいいんだけどね。


「時間のムダだわ」


一瞬、心を読まれたのかと思ってしまった。


「全部やってくれるのはラクですけど」


にこっと笑いと、一人で歩いて行く。

その姿を見送り、僕はそっと息を吐き出す。

誰にどう利用されても危険や害がないなら、それでいい。主を持つ彼らは生きている世界が違うし、見えている世界も違うだろう。

彼らは彼らのルールで動き、それを僕に押しつけただけ。怒るほどのことじゃない。と、思うんだけど……


あいつは違うらしい。


図書館へ寄るをやめ、寮に戻る。部屋のドアを開けると待ち構えていた相手が二人いた。

サムイルの予想どおり、アルシェイドの態度は意外だ。


「暴れるならつき合わないよ。サム」

「なんなんだ? お前のクラス」

「Bクラスは例年、クセの強い連中が集まるらしいよ」


部屋に入り後ろ手でドアを閉める。

いっそう険しくなったサムイルを僕は笑う。


「僕は彼らにとって、餌付けした犬だよ」


拳が飛んでくる。

ぎりぎりで避けたら、風切り音がした。でも、避けれたから手加減はしてくれている。

部屋入ってすぐの狭い廊下で一歩分避ければ壁ぎわで、次は逃げられなかった。サムイルは掌で肩を押さえ、壁におしつける。腕をあごの下にとおしてのどを圧迫してきた。

同い年なのに、背の高いサムイルはいつだって僕を見下ろす。


「怒れよ」

「なんで?」


「抵抗しろ!」

「面倒」


感情的になったサムイルの青い瞳が魔力に染まる。危険な兆候だがこの瞳は好きだ。

空に太陽を閉じこめたようで、見ていて飽きない。


「お二人さん、座らないか?」


鑑賞の邪魔をしたアルシェイドに視線を向ける。

アルシェイドの姿がぼやけて見えた。頭痛がする。アルシェイドの声が聞きとれない。音の反響に耳が痛みをうったえる。


「アル、魔術使うのやめて」


指向性のある魔術が止まる。サムイルに手を放され、その場座りこむ。


「感情的になっていたから、落ちつかせるつもりだったんだ。ごめんね」

「精神干渉された冷静さなんていらない」

「もうやらないよ」


少し、アルシェイドが落ちこんでいるように見えたが、慰めはしない。今後がないように、しっかりと反省してもらいたい。

僕に視線を合わせるようにサムイルが座りこむ。怒りが落ちつくと、すねたようだ。


全身でかまえとうったえてくる。僕はうっかり吐きだしそうになったため息をのみこむ。


「サムに助けてもらいたくなったらちゃんと相談する。だから、怒るなよ」

「学院に来てから、まったくオレのトコ来ない。どうせ相談なんて来ないんだ」


うん。そうだけど、同意すると長くなるな。

図書館はあきらめたが、夜の補講には行きたい。


「寮ではアルに餌付けされてたから」

「まて、餌付けされたのオレのほうだろ」


アルシェイドの発言はスルーだ。


「クラスメイトもな、今まで見るだけて食べたことのない物ばかり持ってくるしさ、食べ物に罪はないだろ?」

「食い意地はりすぎだ。バカ」

「師匠も常に新しいものに興味を持てっていっていたじゃないか」

「それで、新素材みつけたらオレのこと忘れるんだ」


笑ってごまかせないかな?


今日はちょっとこった料理を三人分作ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。