ラザード帝国
大陸中央に位置するラザード帝国。
乾燥した風の吹く暑い国で、魔草が高く売れる国らしい。
素材を売るのは好きではないが、カールクシア王国の相場に倍から数倍は魅力的だ。
帝都には職能ギルド大翼の支部もあるし、両替がわりに売ることにして、荷物につめこむ。
飛竜に乗る前、レヴィエスに声をかけられた。
「今回の大会は勇者が三人とも参加する。よく見てくるといい」
いつからかは知らないが、選手団の一員になることは決められていたのだろう。たぶん、手の平の上で踊らされている。
根拠のない決めつけだが、レヴィエスの作為を感じた。
しかし、 飛竜貸し屋って、どこの店もレヴィエスの信奉者がいる。レヴィエスを邪険にすると必ずにらまれてしまう。
人知を超えた存在なのは認めるけど、信仰したところで恩恵はないぞ。存在が違いすぎて、連れまわされると死にそうになる。
僕にはレヴィエス信仰も、ゲームの駒扱いする竜の信仰もムリだ。
救いがないんだよ、救いが。
なんで今回の国際交流会、竜信仰が盛んなラザード帝国なんだろう。ここの文化って僕に対する嫌がらせだよな。
大昔、魔人によって人類が滅びそうになったとき、竜が現れて人類を救ったらしい。その竜が現れたのが、現在のラザード帝国がある地だ。
竜が人類を救ったのは、滅んだら玩具が減るくらいの感覚だ。人類救済は善意じゃない。
手枷のような腕輪に意識を向ける。普段は重さを感じないが、意識するとひどく重い。
この国で腕輪がばれたら竜の加護として崇められそう。僕を殺して奪うか、僕ごと安置するかはわからないけど、どっちもいい未来じゃない。
警戒心と慎重さが必要だ。
二日かけてたどり着いたラザード帝国は、評判どおり暑い。断熱加工したマントを使いたいが、宿までは制服で移動しなくてはならない。
宿にたどり着いたら即、着替えてやる。
フード付きのマントを頭からかぶり、手には手袋をはめた。太陽が攻撃的で、素肌が見えていると痛い。
フライにミーティングの参加を頼む。
「ダ、ダメだよ」
「今の僕に必要なのは練習じゃないんだ」
僕は真面目に休養の必要さを語り、街へ出る。大翼の場所はカールクシア王国にある本部で聞いてきた。大通りを歩いていたら着くはず。
しかし、この国金ピカ商品が多い。宝飾品が人気で、鉱山があるからよそで買うより安いそうだ。
なんか、ここの宝飾品のモチーフが微妙というか、いたたまれない気分になる。この国の宝飾品は僕には合わない。買うなら原石にしよう。
迷うことなく大翼についた。ギルドカードを見せると奥の部屋に案内される。部屋に入ると、僕はマントの下に背負っていた鞄を下ろす。
密輸業者になった気分だ。
書類としては僕はカールクシア王国の大翼本部で魔草を売っている。僕は荷物の移送を請け負い、その成功報酬をラザード帝国の大翼で受け取るようになっていた。
販売目的の持ち込みより税金がちょっと安くなる。鞄は小さいけど、たくさん持ち込んでとお願いされたから鞄は空間拡張していた。
量が多いと監査が入りやすいそうで、書類はきっちりと作ってくれている。しかし、カールクシア王国の三倍超えははいいね。
気分良く帝国硬貨を並べてもらっていると、気分が一気に下がった。逃げてもばれるのが辛い。本当に、この腕輪どうにかする手段はないんだろうか。
いるのに気づかなかったなんていいわけも通用しないよな。レヴィエスが気配消してくれてたら試してみるが、主張されたら仕方ない。
大翼の待合ロビーにいたレヴィエスに連れられ、誰かの家に入る。住宅地だし、何かの店ではないはず。
「レヴィエスの家?」
「愛人宅」
「へっ⁉︎」
「もう、若い子をからかったらダメですよ。レヴィエスは大昔のご先祖さまです」
お盆を持って現れた女性がにこにこと告げる。
「うっかりできちゃった子の子孫だから、愛人宅でも間違ってはいませんけどね」
何百年も見守っているらしい。
「うちの一族人が増えないからいいですけど、子だくさんになったらどうするつもりかしら?」
「子だくさんはないよ。わかりにくかったけど、混じっている。よほど相性が良くないと子どもは産まれにくそう」
異種間の子どもができにくい。大家族は望めそうには感じられない。
「そうなの? もう、わたしが離縁されたのレヴィエスのせいなワケ?」
「責任とって家を用意しただろ?」
「サイテー、バカ、感謝した気持ち返して」
罵られてもレヴィエスは楽しそうだ。叫んでも悪い感情が言葉には含まれていないし、この女性も玩具枠かな。反応を楽しまれているよ。
「メシ」
レヴィエスの催促にお茶の準備をしてから、きっとにらむ。せいいっぱいレヴィエスをいかくしているが、怖さがまったくない。
「お客さんに用意するついでだからね」
むっと怒りながら、食事の準備びをしに行く。
待つ間、僕はレヴィエスから話を聞いた。
ラザード帝国は水の質が悪いそうだ。外食は極力避け、買った水を魔術で浄化してから飲むといいらしい。
宿の食事は外国人ように気づかわれているはずだか、地元の人はそこまでしなくても大丈夫なので、徹底されているかどうかは宿次第。
この街で食べ歩きはやめたほうがいいらしい。
外食は不安だが、きっと異国の料理が食べたいであろう僕のためにレヴィエスはカヌメを紹介してくれたそうだ。
この国は辛い料理が多いそうなので、今回は香辛料を控えめにしてもらう。
レヴィエスとしては僕に食事を、カヌメにはお金を稼ぐ機会をあげたい様子だ。おいしかったので、宿では用意してもらえない昼食を有料でお願いする。
思いのほか、居心地がよくて長々と居座ってしまった。
夜のミーティングもフライ、よろしく。頼んでないけど、人のいい君ならやってくれるはずだ。
おやつから夕食までいただき、お土産までくれる。生活の面倒は金銭的にレヴィエスがみているらしいから、遠慮なく受けとった。
レヴィエスと一緒に通りを歩く。
風が冷たい。一日の寒暖の差が激しいとは聞いていたが、身体に負担になりそうな気温の変化だ。
視界に家を飾る石像をとらえる。少し悩んで、気になっていたことを口にした。
「この国の宝飾品って、ドラゴンですよね?」
「ドラゴンの姿を知る人は少ない。竜の姿を見た人はさらに少なく、両方を見た人はなおいっそう少ない」
作っている人はどっちも見たことがなく、想像で作りあげている。時代により特長が変化するそうで、今は砂漠にいる地中に潜るドラゴンに飛竜の翼をつけたようなのが主流らしい。
それは竜としていいのか?
ちらっと視線を向ける。
「この大陸で竜が活動するなら、真っ先に潰すべき地点という意見はある」
ドラゴンと同列扱いはやっぱり嫌なんだ。
竜信仰の地が竜の標的候補地か。僕、竜信仰の信者にだけはなれない。
「ルキノ、カヌメは人か?」
「グラス一杯の水に白ワインを一滴いれたら、水? それともお酒?」
何も知らない人にとっては水。お酒に過度に反応する人はお酒とするかもしれない。だか、売り物として商品名をつけるなら水になる。
レヴィエスはグラスに白ワインをいれた側だから、過度に反応していそうだ。
宿に戻ると、サムイルが怒る。出かけるなら誘って欲しかったみたいだ。
フライは心配してくれており、期待通りにミーティングは体調不良でごまかしてくれたらしい。
僕は二人から宿の食事がどんなものだったか聞きだす。明日、カヌメに三食準備してもらうように頼みに行こう。
食事はおいしく、安全なものが食べたかった。
更新ペースを変えました。
次は11月23日です。




