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二年生の終わり

実習が終わり、月末の演習が終わると、年度末を迎えた。未修得単位のある生徒にとっては追い込みの季節だ。

追試試験とレポートで、僕は二年生で必要な単位を集める。


ばたばたと過ごしている間に、僕は技術学校を卒業していた。

試験とかぶって卒業式は不参加。卒業制作は失念。どうやらマルクが対応してくれ、注文品で、まだ渡すまでに時間がある分を卒業制作として提出してくれたらしい。

あやうく卒業できなくなるとこだった。


「サム、村帰る?」


あをまり通ってないけど、技術学校の卒業は父との約束だ。試験が終われば実家に報告に行く。


「帰りたくないが、ルキノを一人にしとくのもなぁ」

「僕は迷子になんかならないぞ」

「迷子にはならなくても、寄り道ばっかりして目的地にたどり着けなさそう」


新学期になる前に帰ってくるかどうかを心配される。


「サム、帰らないならせめて手紙くらい書けよ。渡してくるから」


サムイルはめずらしく困った顔をしていた。


「お前ら故郷ってどんなとこなんだ?」

「田舎だよ」

「アル、興味あるならルキノと一緒に行けよ」

「行くのはいいが、突然だと困るだろ?」

「師匠に連絡してもらうから大丈夫」


アルシェイドが声をたてて笑う。


「サムは以外とルキノに過保護だよな」

「だって、ちょっと目離すと死にかけるからな」

「それは僕のせいじゃない」


レヴィエスの教育方針のせいだ。


「はいはいケンカしない。行くかどうかは、君らのお師匠さんに連絡をとってからにしよう」


アルシェイドになだめられ、試験勉強に意識を戻す。




無事、進級が確定すると専攻希望の調査書と一緒に、寮を移動するかどうかの調査書をもらう。


「アル、僕、ここ住んでていいの?」

「いいよ。ルキノがなにやらかすか興味あるし」


どういう意味だろう?


「しかし、サムはなんで村に帰りたがらないんだ?」

「小ちゃいときに魔力暴走起こしているから怖がられている。アルは地元でそういう目で見られたことないの?」

「オレのとこは夜泣きと魔力暴走が、同じ扱い。小さいから仕方ないくらいの扱いだよ」

「それは、おおらかでいいね」


村にはそんなおおらかな人、いなかったな。

サムイルといるのはやめなさい。それがあなたのためだと、どれだけの人にいわれただろう。誰に言われたかもう覚えてないけど、嫌な記憶として残っている。


サムイルを批難するのが正しいことだと、善意で語る人たちが僕は嫌い。サムイルに向けられた悪意よりはマシなんだろうけど、帰省にわずかな不安がよぎる。


「そういや、土産ってなにがいいんだろう?」


暗くなりそうな意識を別のものへ変える。


「何人家族?」

「祖父母と両親と兄二人に妹二人」

「家族に恵まれているな」


買い物はアルシェイドにもつきあってもらおう。


「なあ、妹は僕のこと覚えているかな?」

「最後に会ったのいつだ?」

「僕が7歳だから、妹は5歳と2歳だったはず」


村を出てから六年経っているのか。

たぶん、下の妹に僕の記憶はないな。


「上の妹のら覚えているよな?」

「ルキノ、妹は記憶に頼るより、土産で懐かせよう。村にはない女の子に好きそうな物を買っていこうな」


女の子が好きなのは甘い物に可愛い物やきれいな物だよな。日持ちする焼き菓子は多目に買おう。あとは、リボンとかレースかな。

クラスメイトの女の子たちが身につけている物を思い浮かべる。ダメだ、やつらは魔石や宝石がきれいな物の基準だ。


「ルキノ、お兄さんはどんな人だ。上なら、確実に覚えているだろ?」

「上の兄さんが跡継ぎで、下の兄さんは村出たいっていってたけど、どうしているんだろう?」


迷宮都市行きたいって聞いた記憶があるが、僕らがいたころには来てない。今も村にいるんだろうか。


「村出てから連絡してなかったのか?」

「最初は字の練習がてら手紙書いてたんだけど、返事こないから、最近は技術学校入学したって手紙を書いて以来出してない」


僕からの手紙は師匠に頼めば届く。師匠たちの知り合いが村を訪れるときに、渡してくれているらしい。


師匠たちも、師匠の知り合いも、村を訪れるのはサムイルの母に会うためだろう。サムイルの母は薬師で、その薬を買うために定期的にかよって来ていた。


おそらく、誰もがサムイルに父と縁がある。

明らかに貴族のお忍びみたいな人もいたし、サムイル宛の手紙ならともかく、僕宛の手紙なんて頼めない。返事なんてくるはずがなかった。


「オレ、数年ぶりに家族と会う感動の場面の目撃者?」

「感動の場面になるかはともかく、よけいなことはしゃべるなよ」

「例えば?」


僕はアルシェイドに微笑む。


「僕が真面目に学校にか 通って、勉学に励んでいたこと以外は話すな」

「待て、その条件だと話せることがないぞ」

「アル、僕はお金稼ぎながら二つも学校に通う勤勉な学生だよ」

「確か、ここに住むようになったのは、お金がない苦学生だった。だか、オレの前に今いるのは趣味に時間とお金をかけて、生活を圧迫している子」

「僕の志望は魔術具師だよ。素材を集めるのも、素材加工も必要な技術だ。僕は将来のために時間とお金を使って勉強しているんだよ」


疑わしそうな目を向けてくるアルシェイドに僕は言葉を続ける。


「アル、僕はウソをついてほしいんじゃない。言葉を選んでほしいだけだよ」

「ものは言いようってか?」


アルシェイドが話のわかる相手で嬉しいよ。つきあいいいし、話していいことと悪いことの区別はついている。

任せておいて大丈夫な安心感がアルシェイドにはあった。

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