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功績と偽装工作

臭いのキツイ煙を洞窟に送りこむ。

どうやら他に出入り口はないようで、魔物が出てくる。

基地から増員を呼び、魔物はローテーションで討伐していた。ワイゼンには魔力を温存してもらい、親玉が出てくるのを待つ。


ごちゃごちゃと大量にいた魔物がいなくなったおかげで、洞窟の奥がわかりやすくなった。終わりが見えてくる。

僕はワイゼンの隣に移動し、ささやく。


「大量に出てくるのは、あと一回分。だだ、今までより強いのが二体、親玉とは別にいる」


このまま、洞窟の外に引きずり出せれば制圧は時間の問題だ。僕は次の魔物波がくる前に洞窟から離れる。




離れた場所から、僕はすべての魔物が洞窟から出たのを認識した。感覚がよくなりすぎている。

見えないはずの場所を見てしまっている様な不快感があった。ずるいことをしているようで、レヴィエスを恨みたくなる。


素質のある人は少なくないらしいが、竜に開花させられたこの感覚は扱いきれるものか?

ひどく危険なものを与えられた気がしてならない。


娯楽の駒に善意で授けはしないか。それとも、疑うことが罠なのか。

うだうだ悩んでいる間にも、状況は変わる。


魔人が逃げた。


魔力は多い。だが、荒々しさはなかった。戦闘が苦手なのかもしれない。

だからといって、見逃せないけど。魔物を量産する魔人は隣人にできない。僕は魔人に向けて照明弾を撃つ。


ワイゼンが反応した。魔人を追い、走る。

僕はワイゼンが魔人を見失ないそうになる度に照明弾で場所を知らせた。




我慢できなかったのだろう。

最後に最後でワイゼンが爆発起こした。雪崩にのみこまれたのがワイゼンだけだからいいけど、迷惑な。

自力で雪溶かして出てくる人だから、誰も心配しない。撤収作業してたら、普通に戻って来ていた。


「ルキノくん、もう魔物いないか?」

「このあたりにはいませんよ」


調査隊と見張りを残して基地に戻る。僕は第一陣で、基地に戻してもらい本日の実習は終了となった。


基礎過程の冬の基地実習は内勤のはずなんだが、単位くれるんだろうか。実習レポートに何を書けばいいか困る。




翌日、朝からワイゼンに呼び出された。

ここの基地の司令官よりワイゼンの方が偉いらしい。ワイゼンの命令がここでは最優先される。


ちゃんとした格好で、立派な部屋にいるとワイゼンが偉い人に見えた。場所と服装は大事だね。


「ルキノくん。昨日の功績にどんな褒美がほしい?」

「沈黙と隠蔽」

「目立つのは嫌か?」

「軍属になりたくないだけです。目立てば強制されるんでしょう?」

「まあな。君にやる気があるなら士官学校に推薦状かいてやるよ」


とりあえず、ワイゼンは僕に強要するつもりはないようだ。その点だけは悪くない。


「軍属拒否の騎士嫌い。思想犯の疑いをかけられたくなかったら、態度は改めておけ」

「僕の人生に置いて、騎士と会う必要はないんですが?」

「サムイル・ベルテアと一緒にいるかぎり、騎士と遭遇しない人生はおくれない」


誰ともしれないサムイルの父親は大物のようだ。


「サムが知らないのに、そういう話を持ってこられるのは不快です」

「そうか。だが、いつまでも知らないままではないだろう。彼は彼で目立っている」


師匠たちはあえて、サムイルを目立たせようとしている。僕と違って目立って困ることはないだろうし、持ち上げられたからといって勘違いして潰れることもないだろう。


「一緒にいるかぎり注目する者は出てくるぞ」

「僕は自らの身を守る方法が目立たないことだと思っています。今回の実習も目立たないかたちでおさめてほしい」


僕個人の評価はおいておくとして、僕の両腕にある腕輪は知られるとまずい。殺してでも奪いたい人はいくらでも発生する伝説クラスの名品だ。

腕輪について知られないためには、腕輪の守りを発動させないようにする必要がある。


どっこかで隠匿生活したいが、やったとたん竜の里に強制連行されそう。冬季休暇が終わるから帰してくれたぽいし、人間社会から離れるのはダメだ。


「では、残りの実習はオレの秘書をしてもらおうか」

「室内では魔術使いませんよね? 僕、火傷はしたくないですよ」


笑ってごまかし、言質はとれなかった。




机に向かって書類仕事をしているのが、似合ってない。でも、ワイゼンはやれない人ではないようだ。

僕は書類を持って基地ないをぐるぐるまわる。


洞窟の調査隊が帰ってきて、報告があがってきた。

魔物が基地周辺で増えた理由は魔人によるものと確定し、討伐済みとして処理される。


「討伐参加者には報酬があるぞ」

「僕は心と人生の安定がほしいです」


魔人討伐の報告書を見せてもらい、僕はずっと基地にいたことになった。それに合わせて、学院に提出するレポートを書く。


僕は怖くて、基地に引きこもっていたことにする。

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