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進路相談

カールクシア王国の首都リシアン。

この街へ来るのは二度目だった。


最初に訪れたのは7歳のとき。サムイルのオマケで弟子してもらい、村を出たばかりの頃だ。

村長さんに通行手形を作ってもらい、関所ですごく待たされた記憶がある。

その時に通行手形じゃ時間がかかるって、師匠の紹介でギルドカードを作った。師匠たちは大規模ギルドに属していて、実績かそれなりの紹介がないと発行してもらえないやつらしい。


そのギルドカードの信用が高いおかげで、二度目のリシアン入りはカードの本人確認だけですんだ。けれど、荷車には素材がいっぱいで手続きに時間がかかった。


やっと荷車が審査を通過すると、大勢の人が行き交う大通りを関所からまっすぐに進む。そうすると、高級商店街と庶民的の商店街の境ある広場にたどり着く。そこに大規模職能ギルド大翼はあった。


師匠に連れられ受付カウンターに行くと、ギルドカードを新しくしてくれるらしい。どうやら今までのは新人用だったそうで、正規用になるそうだ。

功績によって三ヶ月から二年くらいで変わるそうだが、ずっとダンジョンのある迷宮都市にいたのでそんな手続きはしてなかった。


幼なじみはドラゴンスレイヤーなので、新人用から特典がいっぱいついたガードになるそうだ。優遇措置がとられるかわりに、拒否権のない指名依頼が発生するらしい。


ガードの発行を待つ間に宿をとり、今夜の寝床を確保する。いつもよりあきらかにいい宿で、一人一部屋使ってもまだ部屋があまっていた。


「広すぎて落ちつかない」


いつもみんなで一部屋か、サムイルと相部屋。実家にいたころも一人部屋とは無縁だった。


「ライセ師、お金大丈夫なんですか?」

「落ち着け。必要経費範囲内だ」


守銭奴の師匠がおかしくなってる。


「ルキノ。ドラゴン討伐はカジノで大当たりだしたようなもんだ。安宿だと際限なく強盗がわく」


ゆっくり寝るための必要経費だそうだ。


新しく発行されたギルドカードを受けとりに行くと、残高がすごいことになってた。ドラゴン討伐の報酬を師匠が分配した結果とのこと。

一番少ない僕でこれって、怖い。

金融投資を受付で勧められたが、師匠の言に従い銀行に預ける。それから服を買いに行き、夕飯を食べに行く。


ドレスコードのある店なんて初めてだ。食事の仕方は師匠のマネをしたらいいらしい。


「サムが学院に行ったら、こういう食事を日常的食べているやつらがクラスメイトになる」

「食事や礼儀の授業あるから、なるべく早く覚えろよ」


なんか面倒そうなクラスだ。

嫌そうな顔をしているとこを見ると、サムイルも似た感想なんだろう。


「手続きしたら、学院入り決定のサムはいいとして。ルキノ、お前どうする?」

「技術学校に行くよ」


村を出るとき、父から出された条件が技術学校を卒業して手に職をつけることだった。


「親父さんとの約束あるからな」

「オレらとしてはお前にも魔術学院にいって欲しい」

「今なら学院の授業料もある」


庶民が魔術学院に入るのは狭き門だ。入学レベルではなく、奨学生レベルが必要になる。この二つ差は大きく、庶民はたいてい魔術学院の下位になる技術学校を目指す。


「親父さんにはこっちで連絡するから、とりあえず学院の入試受けてこい。技術学校は日程が違うから両方受験できるし、な?」


どっちも受験料はかかる。だか、ギルドカードの残高を見て気が大きくなっていた。

そのせいで、受けるだけならいいかと気がるに返事をしてしまう。


僕がそのことを後悔するのは合格発表のあとのこと。


父は技術学校の卒業にこだわった。手紙なんかじゃ説得されてくれないし、なるべく要望にはこたえたかった。そして、技術学校と魔術学院併用入学が可能だと知る。


どちらかだけなら余裕のあった貯金は、二校分の授業料と寮費で大部分が消える。魔術学院の授業でつかう教材費は別途発生するし、食費だって必要だ。


ドラゴンの恩恵による優雅な学生生活は僕にはムリらしい。

師匠に借金しに行かないですむように努力しようと思う。


そもそも試験が簡単なのがいけない。

ある程の魔力があって、授業料が払えれば魔術学院に入学できる。厳しいのは奨学生だけで、通常入学間口は広かった。

で、卒業時に求められる基準は高いから退学者がごろごろでる。


入学前から授業要項を読み込み、時間的にも、労力的にも、金銭的にも最も負担の少ない方法を模索していく。

技術学校の一般教養は魔術学院で単位を取得すれば、取得したことになる。なので、技術学校ではひたすら専門分野の単位を取ればいい。

魔術学院で、最初に一般教養の単位を中心に取得しておけば、技術学校飛び級で卒業できるはず。

三年制の技術学校を二年以内に卒業すれば、金銭的にらくになる。


やればできる。と、思い込みたいが、不安だ。

やらないと大変なのはわかっているが、できるんだろうか。


「大丈夫、大丈夫」


ドラゴンの鱗にうっとりしながら、師匠が慰めてくれる。

首都にある中流階級向けの一軒家。しばらく首都にいるからと借りた家で、この師匠はずっと素材をいじくりまわしていた。


「オレがお前に教えたのは錬金術だぞ。技術学校の授業より上位の技能だ。ルキノの器用さがあれば簡単、簡単」


なるべく幅広く技術を身につけると、錬金術の幅も広がるらしい。最短卒より、多技能習得に重点を置くべきだそうだ。


「フォート師、技術学校はわかりましたが、魔術学院はどうすればいいんでしょうか?」


技術学校についても納得はしていないが、授業を受けてみないことには不安が増すことがあっても軽減することはない。


「オレらはお前なら卒業できると思ったから勧めた」


鱗から視線をはずすと、ため息をつく。


「ルキノ、学生生活の間に悩む意外の趣味がみつかるといいな」

「そんなもの趣味にしてない」


師匠は僕の叫びを笑って聞いてくれなかった。

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