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青色岩トカゲ

早朝、荷馬車で魔術学院を出発する。

途中休憩で朝食を購入。朝からみんなしかっり食べる。ここには朝食いらないなんて人はいない。

昼前、昼食を購入。移動休憩に食べる。

おやつの時間に本日の宿泊予定地に到着した。士官食堂に入る許可がおりたのでおやつにする。


「今回は人数少ないね」


実習で軍施設利用は多いらしい。

魔術学院は将来国に雇われる奨学生か貴族が生徒のほとんどを占めている。施設利用は社会見学の意味もあった。


唯一の女子生徒レオナは現在モテモテ。彼女の前にはお菓子のお皿が八枚ある。全部別々の人から提供されたものだ。

こんなに食べられない。なんて、あなたはおしゃられてましたが、いつの間にかカラのお皿が十枚。

今だ食べ続ける彼女を僕らは誰も止められない。


僕らは見て見ぬ振りをした。でも、夕飯の時間になったら声かけないのは悪いと思って誘う。

断ると思っていたのに、レオナは普通に食事をした。


「女の子の胃はどうなっているんだ?」


レオナ一人別室のため、僕らは議論する。


「甘い物は別腹って物理的な意味か?」

「異空間かもしれん」


なんの実りもない話で夜は更けていった。




今日は徒歩移動する。

森を東に向かって進むと海にたどりつく。青色岩トカゲは沿岸の岩場に生息しているそうで、昼頃には到着予定。


「今日は採取しないの?」

「このあたりにある魔草は帰りに採取するつもり。行きは荷物になるし、魔物以外は狙ってないよ」


動くのは見つけた時にやらないと、帰りも遭遇できるとはかぎらない。


獣道の先頭を行くのがサムイル。次がレオナで、その後を僕とアルシェイドがテントを手につづく。最後尾がガナンだ。

一年生主導の実習なので、迷子にならないかぎりガナンは先頭にはたたない。休憩後はサムイルとアルシェイドを入れ替える。

アルシェイドが草むらにわけ入ったり木の枝を落として道を作るのに向いてなかったら、僕と交代だ。サムイルは僕が先頭だと、頭ら辺に障害物が残るので嫌がる。


実習のコースだし、職能ギルドでときどき依頼もでるそうので、道らしきものは残っていた。アルシェイドがやれそうなので、僕は真ん中でずっと荷物持ち。


海が見えたので拠点を作ることにする。

岩場はテントが立てにくいし、どこまで水がくるかわからないので避けた。ふらふら歩いて、倒木の側に開けた場所を見つける。


「内緒」


つぶやくと、ガナンは周辺の草を刈った。刈った上に草を一箇所に集める。器用な魔術を使う人だ。


テントはサムイルとアルシェイドに任せる。レオナには拠点を守るように杭状の魔具を使い結界を張ってもらう。

僕はかまどを作り、昼食を作る。食事を作る火の魔力をガナンにねだったらあっさり協力してくれた。

魔力多い人って惜しみなく提供してくれるけど、こっちは妬む気持ちもある。ここにいるメンバーで魔力を節約して使わなくてはいけないの、僕だけだ。

このやっかみを理解してくれる人がいない。


スープができたら、パンを切って温める。

干した野菜と干し肉のスープにジャムをぬったパン。なんも採取してないので、こんなものだ。

食材が増えなければ、明日の昼まで同じ食事になる。


「夜は肉食べたい」


一応スープに肉入っているんだけど、それじゃダメみたいだ。


「僕はとりあえず、海に罠仕掛ける」

「かたずけはわたしが引き受けますね。洗浄魔術覚えましたから」

「オレとアルで課題やる?」

「サムとアルは先に森の中居心地よくしてくれ。三つ気になる気配がある」


僕は三箇所指指す。


「一個しかわからん」

「気づいたなら、引率してあげる。変わりにアルシェイドこっち残って。ルキノとレオナちゃんだと何かあったときに攻撃力が不安だからね」


食事が終わると各自行動する。アルシェイドは僕の手伝いをしてくれるらしい。


「それ、魔具?」

「うん。図書館で図案見つけて作ったんだけど、現物見たことないからどうなるんだろ?」


試してみれば結果は出る。

縄をつけた魔具を五つ場所をかえて海に落とす。沈め終わると縄を岩に結びつける。あとは明日の朝引き上げるだけだ。


サムイルたちが戻ってこないので岩場を探索する。かたずけの終わったレオナが来て、僕らはナイフで貝の採取をする。


「砂抜きしなきゃいけないのは二枚貝で、この辺りの貝は毒性はないはず」


ここ砂地じゃないし、たぶん巻き貝だ。楕円形で殻口が大きくて、どこも巻いてないけど。


「浄化魔術使えば毒があるかどうかは調べられますから、お任せ下さい。毒がなかったらどうやって食べるものなんですか?」

「焼いたらいいらしいよ。いっぱいあるなら湯でて干してもいいみたい」


レオナに毒性がないのは調べてもらったので、アルシェイドに火の魔術で焼いてもらった。まずナイフで殻から外し、小さく切りとって三つに切る。


ナイフの先で各自、貝の身をさす。


「裏切りはナシだ。いいな」


アルシェイドの合図で三人そろって口に入れる。


「こりこりしてておいしいですわ」

「ダシにしたらいいかも」

「これはありだな」


二人が戻ってくるまで僕らは貝に夢中だった。




拠点近くでサムイルたちが狩った獲物は血抜き中。予備の杭を一本使って結界を作っているそうだ。


倒したのは大蜘蛛一体。魔石に足二本と蜘蛛の糸回収後、燃やして処分。毒の有無は不明で、食用になるかどうかわからなかったとのこと。

次が肉食の獣だったらしい。魔石、皮、爪、牙回収後、燃やして処分。肉質と匂いでサムイルは食べたいと思えなかったそうだ。

最後、角のある草食か雑食の獣。木の葉食べていたらしい。現在血抜き中なのが、これだ。


「ここに何しに来たか覚えてますか? 食材取りにきたのではありませよ」


ガナンがカラの貝殻を見ながら笑みを深める。

狩りに行っていた二人にも焼いた貝を食べさせた。サムイルの機嫌はすぐなおる。


「青色岩トカゲも食べれそうだし、やるか」

「あっちの張りでている岩の向こうにいそう」


どんな気配か知らないので別の生物かもしれないけど、何かが複数いる。

一度拠点に戻り、討伐用の装備を確認しておく。準備に手間取っているレオナを置いて、サムイルと血抜き中の獲物を見にいく。


歯の形状や骨格から草食の獣だ。


「ルキノ、お前が危険認識したのこれか?」

「たぶん違う。でも、今はもう近くにいない」


これとは違う何かが、昼食の頃にはいた。


「気味悪いな。実習辞めて帰りたい」

「明確な危険の証拠でもないと中止はムリだろ。帰るにしても、森を出るころには日が暮れる」


願望としては今すぐ撤収だ。だが、現実的ではないのもわかっている。


「まずは課題終わらせようぜ」

「そうだな」


足場もつかむとこもいっぱいある二階建ての家くらいの岩を僕らは登る。登りきると、岩場と砂場がまじった海岸が広がっていた。


「いっぱいいるね」

「一人一匹? 班で一匹?」

「課題用に一匹、僕用に一匹でよくないか?」

「皮に興味ないからオレはそれでいい」

「二匹で五人分のお肉あります?」


肉として考えるなら、成体一匹で足りる。


「レオナ、結界二個同時にできる?」

「みなさんが入れるくらいなら問題ありません」

「じゃ、近くにいいる二匹目結界で逃げられないように隔離して。サムとアルは討伐」


サムイルは結界なくても仕留められる。アルシェイドはどうかわからないが、魔力多いし、逃げられなかったらできるだろう。


三人を送り出し、岩の上でガナンとお留守番。


「ルキノは攻撃には参加しないんだね」

「牽制がいるなら参加しますが、必要ないでしょ」


レオナが結界作る前にサムイルが仕留めた。逃げようとするのを、レオナが結界で閉じこめる。アルシェイドもあっさり仕留めた。


仕留めた二人が一匹ずつ運び、拠点に戻る。

僕は青色岩トカゲを解体しつつ夕飯の準備を始めた。

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