第1部 第6話【壮絶な感受性】
私は金曜ロードショーで放送された【火の鳥】をビデオに撮り、毎日のように何度も何度もくり返し見たと書いたが、それは【火の鳥】に限ったことではない。私は当時、その強烈すぎる感受性を駆使し、ありとあらゆるものに興味を抱いては、ビデオに撮って毎日毎日見続けていった。その代表的なものをいくつかあげようと思う。
ものまね番組━━特にフジテレビで放送されていた【ものまね王座決定戦】が大好きで、ビデオに撮って毎日見続けていた。
厳密にはものまねというお笑いジャンルが好きだったわけではなく、いろいろな時代のいろいろな名曲を知ることができる番組だったから好きだったように思う。
1番好きだったタレントは実力派コミックバンドのビジー・フォー。彼らは海外のアーティストのものまねを得意としており、私がのちに洋楽に関心を抱くようになったのは、彼らの影響が極めて大きいといえる。
クイズ番組━━特に日本テレビで放送されていた【アメリカ横断ウルトラクイズ】と【高校生クイズ】が大好きだった。膨大な知識と頭の回転度を駆使して難問に答えるおにいさんたちがとにかくカッコよく、自分も高校生になったらクイズ研究会に入って高校生クイズに出てみたいといったことを思ったものだった。
また、ただ難問に答えるだけで終わらないのが【アメリカ横断ウルトラクイズ】と【高校生クイズ】の特色。頂点にたどり着くまでの険しい道やヒューマンドラマが刺激的なのだ。そのあたたかく魅力的な声で番組を盛り上げる福留さんの司会も最高だった。
トレンディードラマ━━元祖といわれる【君の瞳をタイホする】を皮切りに、【抱きしめたい!】【君が嘘をついた】【愛しあってるかい!】【恋のパラダイス】【101回目のプロポーズ】など、ほぼすべてのトレンディードラマを1話残らず見つくした。
はっきりいって姉が見ていたからついでにという感じだったのだが、トレンディードラマは見てみるとすごくおもしろく、特に1992年頃に放送された【素顔のままで】というドラマは『ああ、このドラマと出会えて本当に良かった……』と、ただただ感動に浸るばかりである。
深夜番組━━私は当時、規則正しい生活をおくらなければならない子供の身だったのだが、ほぼ毎日深夜の2時くらいまで起きてテレビの深夜番組を見続けていた。
ゴールデンの番組もおもしろいものはたくさんあったが、深夜枠にもおもしろい番組が山のようにあり、月曜の深夜はあれで、水曜の深夜はあれで、土曜の深夜は【イカすバンド天国だな】といった感じで、私の夜更かしは延々と続いていった。
ところで、今書いた【イカすバンド天国】という番組。これはロックバンドのオーディション番組で、ここから多くのスターが誕生していった。このあたりから私のロックバンドというものへの憧れが、本格的な形をとり出したといっていい。
映画番組━━現在はもう終わってしまったものもあるが、当時は月曜から日曜までほぼ毎日のように夜9時から映画番組がやっており、私はその映画番組を本当にひとつも欠かさず観つくした。観た映画のタイトルをメモにとったりしていたので、これは本当のことである。
生まれてはじめて観た洋画は中国の拳法映画で、ひとりの青年が悪に立ち向かい、のちにその拳法の最高指導者として多くの弟子たちを導いていくというお話だった。ちなみにフジテレビの【ゴールデン洋画劇場】だったと記憶している。
次に観たのは【荒野の七人】か【ベストキッド】だった。ほかにも思い出深い映画はたくさんあり、【オペラ座の怪人】【アンタッチャブル】【ラストエンペラー】【スターウォーズ】【ポリスアカデミー】【コマンド5】【ダーティ・ダンシング】【バック・トゥ・ザ・フューチャー】などなどなど。
少し変わったところでは、映画ではなく海外ドラマの【冒険野郎マクガイバー】というのもおもしろかった。主人公が豊富な知識をいかして危機を乗り越え、事件を解決していくお話である。
そんな私の影響からか、映画など一切観ない人間だった姉も【マック】という映画をビデオに撮って何度もくり返し観たりしていた。
そんな私の壮絶な感受性は、とある外国のロックバンドとの出会いによって頂点をむかえることになる……。
ローリング・ストーンズ━━テレビ東京の深夜に、昔のストーンズのライヴ映像が放送され、それをビデオに撮って見続ける日々がスタート。
今思うとその番組は、1989年に初来日するストーンズを記念した番組だったように思う。
ここから私の生活はストーンズに支配されるようになっていく……。