第6部 第4話【母の友人】
ある日の昼頃のこと。散歩から帰ると中に女性の客がきているらしく、『あら、息子のメシアくん?』という声が聞こえてきた。
そういえば先日、母の山形県時代の友人がメシア家にやってくるという話を聞かされていた。たしかスヤマさん(仮名)という人だった。
私はスヤマさんにあいさつして3畳の自分の部屋に行こうとしたのが、話好きらしいスヤマさんに止められてしばらく雑談をすることになった。
「……お母さんに聞いたところ、メシアくんは今、仕事を探している最中らしいわね」
そういわれて私は少し返答に困ってしまった。
「いや、仕事を探しているというか……」
「これ、少ないけど、職探しに役立てて」
スヤマさんはそういうと、1枚の封筒を私に手渡した。あとで開けてみると、中には5000円札が入っていた。
「はあ、どうもありがとうございます」
それから私たちの話は【四次元の視点】の話題に移っていった。
「よ、四次元?」スヤマさんが不思議そうな顔でいう。
「そうです。この世界は三次元じゃないですか?しかし、私は世界でひとりだけ、四次元の視点を持っているんです」
不思議そうな表情のままのスヤマさん。
「四次元の視点を持つ私から見れば、三次元の支配者である人間は皆、地面のアリみたいなものなんですよ」聞き入るスヤマさんに私は特別サービスをした。「私がボタンを押せば地球がひっくり返り、私がボタンを押せば朝と夜が逆になり、そして私がボタンを押せば……人類が滅亡します」
言葉もなく聞き続けるスヤマさん。
そのとき、しばらく黙り続けていた母が笑いながら口を開いた。
「汗水流して働いてさ、自分の話をいろんな人に聞いてもらってさ、自分の考えを広めていけばいいじゃないね?」
「……そうじゃないのよ」スヤマさんである。「彼の考えはそうじゃないのよ!」
理解の進まない母とは対照的に、私の話をわずかな会話だけでさっと理解できたスヤマさんに私はいった。
「あと10数年ほど生き続けてください。そうすればおもしろい時代の到来を目にできるはずですから」
そして私は立ち上がり、自分の部屋に戻っていった。
そのときである。6畳間からスヤマさんの絶叫が聞こえた。
「今日はここにきてよかったぁぁぁ!」
母の中学時代の友人のスヤマさん。どうやら彼女は私とのほんの2、30分ほどの会話で、私がなんらかの特別な力を持つ特別な人間であることを理解できたようである。




