表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/57

第5部 第6話【ブタとサルたちからウジ虫たちへ】

 中学時代、自分たちのダサさとマヌケさにまったく気づけず、世界一カッコイイ男であるこの私をあざけ続けていたクラスメートたち。彼らの存在をブタとサルたちのように感じるようになったと書いたが、とあるさらなる衝撃の事実によりブタとサルどころか、“地面のウジ虫”のように感じるようになっていった。


 


 

 それではもったいぶったいい方はやめて、その【さらなる衝撃の事実】というのを説明したいと思う。


 


 

 中学時代の同級生たちは1991年当時、ほんのわずか数ヶ月前のジョン・レノン没後10周年記念のことをまったく知らなかったのである━━!


 


 

 ━━この事実に気づくまで、私は実に5年もの時間を要してしまった。そして1996年当時も、この事実をなかなか肯定する勇気が湧いてこなかった。


 


 

 中学時代の同級生たち━━たしかに彼らはローリング・ストーンズのロの字も、ロック・アンド・ア・ハード・プレイスのロの字も、ユー・キャント・オールウェイズ・ゲット・ホワット・ユー・ウォントのユの字もなんのことか理解できないスーパーバカだった。しかし、それでも、いくらなんでも、わずか数ヶ月前の地球的ビッグイベントであるジョン・レノンの没後10周年記念のことは知っているだろうと思い続けていたのだ。


 


 

 『オレはてっきりジョン・レノンの平和思想に世界中が満たされ、争い事はしばらく世界から消えてなくなっているのだろうと思っていたのに、世間のドライな人間たちにとってはジョン・レノンなどくだらないカスだったようだな……』━━中学時代、クラスメートたちに罵倒と嘲笑を浴びせられ続けていた私は、毎日のようにこのようなことを思ってはため息をついていた。


 


 

 が、どうやら、それも大きな勘違いだったようである。中学時代の同級生たちはジョン・レノンのジの字も、イマジンのイの字も、なにもかもまったく知らなかったのだ。


 


 

 そういえばクラスで新聞をつくることになり、私はほかのふたりほどの生徒たちと担当することになった。そしてほかの生徒が新聞に【ドリーム】などというつまらないタイトルをつけようとしていたので、私は少しひねって【ドリーム&イマジン】というタイトルにした。


 


 

 きっとクラスメートたちは『ドリームはわかるけど、イマジンってなんなんだろ?』という感じだったのだと思われる(笑)


 


 

 また、ほかのクラスの他校出身の嘲笑的な男子生徒たちが、私にからかうような口調でこのようなことをいってきたことがある。


 


 

 「メシアは平和だよね?平和なんだよね?」


 


 

 「へー、見た目とちがうね!」


 


 

 彼らにとっての平和というのは、おそらく喧嘩の仲裁などを指すのだろう。まさか自分たちがのほほんとしている間にも、世界中で戦乱が巻き起こっていたとは夢にも思っていなかったにちがいない。


 


 

 そして彼らもわずか数ヶ月前にこの地球上で、ジョン・レノン没後10周年記念という大イベントがおこなわれていたことを知らなかったのだと思われる。


 


 

 このことに気づけてから中学時代のクラスメートたちの存在が、きゅゅゅゅゅっと縮みに縮んでウジ虫ほどの小ささになってしまった。


 


 

 たとえばだ。西暦3000年の12月に、あなたの住む国の首都を大地震が襲って数万人の死者が出たとしよう。


 


 

 翌西暦3001年の4月、あなたは中学1年生になった。しかし、自分以外の同級生全員が、ほんの数ヶ月前に発生した大地震のことをまったく知らなかったとしたらどうだろうか?……同級生たちの存在が一気にきゅゅゅゅゅゅっと、限りなく小さくなるような感じがするはずである。


 


 

 ローリング・ストーンズのロの字もわからない、テレビの深夜番組を1度も見たことがない━━これらの事実によって中学時代の同級生たちがブタとサル、または幼児くらいの小ささになったが、ジョン・レノンのことでそれがさらにウジ虫ほどの小ささになってしまった。これによって中学時代のつらい過去は完全なる無と化した。


 


 

 それにしても、ジョン・レノン没後10周年記念の余韻がまだ残り続けていた1991年当時、正義や平和を重んじて真面目に生きることこそが最高にオシャレでカッコイイ生き方だったのだ。しかし、それとは真逆の生き方をしていた同級生たちのダサさは、もはや究極の境地にまで達していたといっていいだろう。


 


 

 ……が、そんな中、ジョン・レノン没後10周年記念のことを私以外に知っていた生徒が、実はたったひとりだけいたのである。それは1番最初の班で一緒になった他校出身のコウヤマ(仮名)という男子生徒だ。


 


 

 私は彼の家に遊びに行ったことがあるのだが、なんと彼は私でさえ持っていなかったジョン・レノンとオノ・ヨーコの写真集などを持っていたのである!


 


 

 私はのちに救世主に覚醒する特別な人間なので、幼くして驚異的な早熟性を示しても不自然ではないが、コウヤマはあくまで普通の人として生を受けた人間だ。それでこの私に接近するほどの知識を持っていたのだからすごいものではないか。


 


 

 しかし、クラスメートたちは私の偉大さをまったく理解できなかったのと同じように、コウヤマの偉大さにも微塵も気づくことはできていなかった。


 


 

 さてと、私はこのように次々と新しい世界観を発見し続けていたのだが、私の胸にはひとつの大きな疑問が残っていた。


 


 

 中学時代の嘲笑的な生徒たちは、ローリング・ストーンズも知らない、テレビの深夜番組も見たことがない、挙句の果てに数ヶ月前のジョン・レノンのこともまったく知らない━━そんなからっぽ頭の白紙のような状態にもかかわらず、いったいなにに影響を受けてあのような残虐な性格になったのだろうか?


 


 

 これは私の救世主としての最大の難関として、いつまでも立ちはだかり続けていった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ