第2部 第3話【無の日々】
1992年、私はくる日もくる日もメシア家の自分の部屋である3畳間で横になり続けた。不登校の私を学校に誘いにきた他校出身の友達も何人かいたが、結局私は中学2年を最後に学校には2度と行くことはなかった。
私はてっきりストーンズは限りなく偉大なロックバンドで、ジョン・レノン没後10周年による愛と平和が世の中に満ちているのだろうと思っていたのだが、世間のドライな人間たちにとってストーンズもジョン・レノンもカスでしかなかったようなのである……。
私は3畳間でテレビを見ながら横になり、毎日のようにボーッとし続けていった。風呂にも入らない。歯も磨かない。まさに無の日々である。
眠りから起きる。そして時計を見ると2時になっていた。しかし、それが昼の2時なのか、深夜の2時なのか、すぐにはわからない━━そんな感覚に陥ってしまっていた。
そんな私は日本のお昼の顔【笑っていいとも!】を欠かさず見るようになっていた。特に理由はないが、いいともを見ることによって『ああ、今が昼の12時頃なんだな……』といった確認をしていたのかもしれない。
また、この頃、日本テレビの深夜で【進め!電波少年】というバラエティー番組がスタートしていた。私がこの番組がメチャクチャ大好きで、私の10代は電波少年とともにあったといってもいいすぎではないくらいである。とにかく電波少年が放送される日曜日がくるのが楽しみでしかたがなかった。
しかし呆然自失の感覚はしばらく続き、私のか弱いハートは外界の冷酷な記憶に脅え続けていた。
そんな私に父と姉は安らぎをもたらしてくれない。
父は相変わらず酒に酔った独り言をしゃべり続け、少年院から出てきた姉は以前と変わらぬ傲慢と残虐を爆発させた。母はパートで、帰ってくるのは夕方だった。
私は恐ろしい外界の記憶に苛まれながらも、少しずつ正常な感覚を取り戻していくしかなかった。