第1部 最終話【卒業式】
学校に向かう前、私はとあるアニメ番組を見ていた。タイトルは忘れたのだが近未来を舞台にした物語で、主人公たちがジェットのような乗り物に乗って悪と戦うのだ。
特に記憶に残っているシーンが、登場人物のある女性が主人公の青年との叶わぬ恋に泣き崩れるシーンである。なぜ叶わぬ恋なのか?その女性が実は“機械”だからである……。
とてもおもしろいアニメだったのだが、はっきりいってこのアニメを知っている人、このアニメを当時見ていた人を探すのは至難の業だろう。
私はこうしたブームにもなににもなっていない、視聴率もスズメの涙以下であろう番組に強烈な関心を示し、毎朝欠かさず見続けていたのであった。
と、そのとき、メシア家のドアをノックする音が聞こえてた。私は同じ団地に住むニウラとサカシタとともに登校していたのだが、彼らがむかえにきたようである。
━━教室にたどり着く。この日は小学校の卒業式。私たちは体育館に向かって歩を進めた。
体育館のすぐそばには知恵遅れの子たちの教室がある。彼らともよく遊んだものだった。
体育館にたどり着く6年生の全生徒たち。仲が良かった子、仲が悪かった子、仲が良くも悪くもなかった子、みんなの姿が見える。
私たちは2クラスだったので、担任の先生もふたりだけ。私のクラスはケイノ先生(仮名)というふたりの子を持つ30代後半の女性で、【勧善懲悪】という言葉を絵に描いたような人だった。
実はジョン・レノンの【イマジン】の存在を私にはじめて教えてくれたのが彼女で、提出する日記にジョン・レノンのことを書いたら『イマジンという歌もいいですよ』と返信されており、そこから『イマジンってどういう歌なんだろう?』と【イマジン】への関心が高まっていったのである。
隣のクラスの先生も女性で、これがまたものすごい美人だった。
よくテレビのバラエティー番組などに【学校自慢の美人教師】とかが出たりするが、その中に彼女と勝負ができる美人は存在しなかった。
卒業証書を受け取り、最後にパイプ椅子についての記念撮影。
と、そのときのことだった。どこからか子供の哄笑が聞こえてきたのだ。
「アハハハハ、あの人、怒ってるよ!あの人、怒ってるよ!」
子供が指をさしているのはどうも私らしく、私の顔を見て哄笑しているらしかった。
どうやら私の顔は遠くから見ると怒っているように見えるらしい……。
しかし、人から顔を【怒っている】と嘲笑された経験などないので、どうすればいいかわからない私は全身に汗をかいてしまい、ぎこちない表情で記念撮影をすることになってしまった。
最後の最後にちょっとしたハプニングはあったが、私たちの小学校の卒業式は無事に感動のうちに終わりをむかえるのであった。