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第1部 第10話【プリンス】前編

 国籍不明の謎のアーティスト、プリンス━━それからの私はプリンスについていろいろ調べるようになっていき、どうやらプリンスはアメリカ黒人で、老若男女誰もが知る世界のスーパースター、マイケル・ジャクソンのライバルなのだという。そして代表曲の【パープル・レイン】は20週以上もチャートの1位に君臨した歴史的な名曲らしい。


 


 

 プリンスの【パープル・レイン】━━いったい、どんなすごい曲なのだろうか?私のプリンスへの関心はますます高まっていった。


 


 

 と、そんなある日の夜のことである。仏壇に向かって勤行をする母のそばでテレビを見ていたのだが、いまいちおもしろくないのでテレビ朝日にチャンネルを変えてみたのだ。すると暗闇に覆われたなにかのステージが映し出された。


 


 

 『ん?これは普通の番組じゃないな!』と感じた私は、急いでビデオに録画した。この頃の私はちょっとでも気になる番組があればすべてビデオに録画していたのである。


 


 

 テレビに視線を戻すと、長髪の黒人ギタリストが甘い音色のギターソロを弾いていた。やがて帽子をかぶったひとりの小柄な人がピアノにさっと飛び乗り、美しいファルセットで【ドゥー・ミー・ベイビー】という歌をうたいはじめた。


 


 

 突如あらわれた小柄で色白な女の子のような黒人青年━━それが、プリンスだったのである!


 


 

 【ドゥー・ミー・ベイビー】が終わるとCMに入った。そして急いで新聞のテレビ欄を開いてみると、やはりそこにはプリンスの初来日東京ドーム公演のことが書かれていた。【パープル・レインからバットダンスまでヒット曲のオンパレード……】といった内容だったか。


 


 

 CMが開けると次の曲は【ザ・フューチャー】。次は近未来的なサウンドの【1999】。それが終わると【ハウスクエイク】【セクシー・ダンサー】という曲が演奏された。


 


 

 プリンスの『トキヨォォォー』という叫びとともにCMに入る。どうやら提供はサザレグループという会社らしい。


 


 

 CMが開けると次の曲は感動のバラード【リトル・レッド・コルベット】。ミコのギターソロがめちゃくちゃカッコよかった。


 


 

 次に演奏されたのが、私がプリンスに興味を持つすべてのきっかけになった曲【バットダンス】だった。しかしオリジナルとはだいぶちがい、非常に短めにつくり直されたライヴヴァージョンだった。


 


 

 プリンスはその中で『ウイェーイ ウイェーイ』とうたっているのだが、私の母にはどうしても『うげー うげー』としか聞こえなかったという……。


 


 

 【バットダンス】が終わるとステージは暗闇に支配され、バックダンサーのザ・ゲームボーイズの3人が出てくる。その中のひとりがすっとマイクに近づいて曲名を告げる。


 


 

 「オー、ヒーズニューキン、パーニメーン」


 


 

 次の瞬間、ガガガーンというコンピューター音が響き渡る。と、そのとき、黄色のスーツに着替えたグラサン姿のプリンスの姿が映し出される。


 


 

 【パーティー・マン】である。それが終わると最後のCMに入る。


 


 

 CMが開けると最後の曲【ベイビー・アイム・ア・スター】が演奏される。


 


 

 プリンスの体に骨がないのかと思わせるほどの超絶ダンス、ゲームボーイズのタンバリンパフォーマンスと最後のスーパーダンス、ドラムのマイケルの最大の見せ場、女性キーボーディスト・ロージーのパワフルな歌声━━1990年に日本に上陸したプリンス率いるスターたちの夢の宴はかくして幕を閉じた。


 


 

 最後はエンディングロールとともにロージーのバラードが流れた。それが終わってから録画を止め、翌日からプリンスのビデオをくり返しくり返し見続ける日々がスタートした。が━━私は完全に満足はしていなかった。なぜなら1番の楽しみにしていた【パープル・レイン】を見逃してしまったからである。


 


 

 私はプリンスの来日東京ドーム公演を後半しか見ていない。きっと【パープル・レイン】は前半に演奏されてしまったのだろう……私は憂鬱の底に沈み込んでいった。


 


 

 が、そんなある日のことである。新聞のテレビ欄を見た私は飛び上がって狂喜した。なんとプリンスの来日公演が深夜に再放送されるのだ!

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