後悔はあとからするから後悔って言うんですね
桃坂先輩をコンビニに置き去りにしてしまいました。
どうしよう。
ごめんなさい。
『逃げちゃだめだよ』
折角の理子先輩の忠告も無駄になってしまいました。
譲先輩のおかげで答えは出た。
けどあれ?
これって、私から桃坂先輩に気持ちを伝えなきゃなんないってことだよね?
けど私、おそらく迎えに来てくれたであろう桃坂先輩を、コンビニに置き去りにしましたよね?
だって桃坂先輩、鬼みたいな顔してるんだもん。
怖くて反射的に体が動いちゃったんだもん。
でもって、つまり。
桃坂先輩に気持ちを伝えたければ、置き去りにした桃坂先輩に私から会いに行かないとだめってことだよね?
ただでさえ鬼みたいな顔してたところに私に置き去りにされたりしたら、絶対桃坂先輩怒ってるよね?
えーーーーー。
無理。
無理無理。
どうしようー。
やっぱ逃げなきゃよかったよー。
あの時の私のばかーっ。
後悔の荒波にもまれた一夜が明けて、今日はバレンタインデー本番。
朝から学校はそわそわした空気に包まれている。
そんな中、私は別の意味でそわそわしていた。
どうしよう。
昨日のことを謝りに行かなきゃならないし、気持ちも伝えなきゃならない。
けど無理だよ。
行かなきゃならないのは分かってるけど、どうしても勇気が出ない。
「どうしたの? こころ。今日は更にテンション低いねー」
ぐったりと机に顔を伏せていたら、さっちゃんが話しかけてきた。
「ほら。甘いもの食べたら元気出る? 私の友チョコ、どうぞ」
ことり、と小さい音がして、綺麗にラッピングされた小さな箱が私の前に置かれた。
ありがとー。
私も早速お返しに持ってきていたチョコを渡す。
すると少し離れた所に立って、委員長がそれをじーっと見つめているのに気が付いた。
欲しいのかな?
もしかして委員長、義理チョコももらえてない組なのかな。
「委員長も、いる?」
少し多めに持ってきているから、欲しいならあげるよ?
私がごそごそとチョコを出そうとしていたら、慌てたように委員長が飛んできた。
「いや。いらない。欲しいけど、佐倉さんのはだめだから」
委員長は焦った様子で、私が差し出そうとしたチョコを押し戻した。
欲しいけど私のはだめって、どういう意味かな?
「それよりっ。余計なお世話かもしれないけど」
そう言って私の机の横にしゃがみ込んだ委員長は声を落とした。
「静流先輩に、チョコ渡しに行かないの?」
「……」
「昨日も言ったよね? 佐倉さんたちが別れたって噂が流れてるから、今年、静流先輩にチョコ渡そうとしてる子、結構な数いるんだよ? いいの? 佐倉さん」
いや全然よくはないのですが。
タイミングというものがなくて……。
答えあぐねていると、さっちゃんが助け船を出してくれた。
「こころの好きにしたらいいと思うけど。でも確かに今年の桃坂先輩の人気すごいもんね。隣のクラスの子たちも、集団で渡しに行ったみたいだよ?」
そ、そうなの?
「静流先輩は誰からも受け取らないって断ってるみたいだけど。でも佐倉さんのチョコは欲しいんじゃないかな」
え、うん、分かってるけど。
委員長、代わりに渡してきてくれないかな。




