尋問しちゃうぞ!
一緒に帰る約束をしたのは、確か理子先輩だけだったんだけどなぁ。
なぜか例の四人で夜道を歩いています。
「ここの当番は朝いちだよね。ぜ~ったい見に行くからね」
理子先輩は私の黄色ねこを携帯の待ち受けにしながら、そう言った。
いやそれ消去してくださいよ。
絶対私の黒歴史認定だから。
「確かにここちゃん、可愛かったもんね。変な虫がつかないか、心配なくらいだよ。なあ静流」
「あ? ああ……」
なぐさめはいらないよ、佐藤先輩。
桃坂先輩の返事も微妙だし。
遠慮なさらず、みなさんの記憶からすっぱりと消去してください。
「あれさ、化粧って当日もするの?」
え? お化粧?
思いがけない桃坂先輩の質問に目を瞬く。
「いや、多分、先生チェックが入るから、当日はしないと思いますよ」
一応学校行事だしね。
そう願いたい。
私がしてほしいって頼んだ訳じゃないんだし!
第一お化粧ってあんまり好きじゃない。
さっきも教室を出る時に残念そうなみんなを無視して、グロスとアイメイクは軽くティッシュで拭きとってきた。
けど、誰だ、アイラインなんてめんどくさいものを引いたのは。早く顔、洗いたいよ。目が重い。
「ふうん」
気のない返事をして、桃坂先輩はそのまま黙って歩きつづける。
聞いておいてその反応って、どうなの?
そんな興味がないなら、聞かないでよね。
というか、なんだろう。
理子先輩が近い。
いつもは私と桃坂先輩が並んで歩いて、理子先輩と佐藤先輩がその後ろを保護者のように歩くのに、今日は私と理子先輩が並んで、男子二人がその後ろをついてくるという陣形だ。
なんとなく理子先輩のテンションも通常仕様ではないみたいだし。
これは何かあったんでしょう。きっと。
ほどなく私たちは駅前に着いて、理子先輩はちょうどやって来たバスに乗りこんだ。
いつもなら、佐藤先輩なんだかんだ言って一緒に乗っていきますよね?
なんで私の隣に立って理子先輩に手を振ってるんですか?
バスの中から手を振る理子先輩を見送って、私は男子二人に向き直った。
「で? 理子先輩に、なにしたんですか?」
ぎゅっと眉間に力を入れて、二人に問いかける。
途端にへにゃりと眉を下げた佐藤先輩が、体中の空気が抜けるくらい大きなため息をついた。
佐藤先輩ファンならそんな先輩にきゅんきゅんするかも知れないけど、私には無効ですよ。
ええい、さっさと白状しやがれ。
「ここじゃなんだから、ファミレス入る?」
桃坂先輩の提案に、私の腹の虫がタイミング良く、ぐーぐーと賛同した。
「えーと、ご飯食べちゃってもいいですか?」
午後七時半のファミレス。
私はがっつり食べる気まんまんで、一応先輩たちに断りを入れる。
「別にいいけど。お前んち、ご飯用意してあるんじゃないの?」
「あー、いいんですいいんです。お気になさらず。話が終わったら先に帰ってもらってもいいですから」
先輩二人はドリンクバーを頼み、ポテトをシェアするつもりらしい。
んーと、なに食べようかな~。
この頃コンビニ&レンチン続きだったからな~。
やっぱ和膳定食か。
ハンバーグも惹かれるんだけど、やっぱ野菜不足だからね~。
煮物ばんざい!
注文を取りに来たお姉さんが、先輩二人をガン見したあと、私を見て非常に残念そうな顔をした。
顔に出過ぎですよ。
バイトとはいえ、客商売でしょ。