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付き合ってないよほんとだよ

 テストが終わって日常がやってきた。

 なのに私の周りはなんだかおかしなことになってます。


「毎日暑くていやになるわねぇ。佐倉ちゃん、このひんやりクールキャンディどう?」

「はいありがとうございます」

「ねえねえ佐倉ちゃん。この服どう思う?」

「可愛いですねー」

「でしょでしょー。やっぱカリスマ読モの私が着ると、どんな服でも可愛くなっちゃうのよねー」

「真理奈ったら、学校にまでそんな雑誌持ってこないでよ。それに佐倉ちゃんは服を褒めただけで真理奈のことなんか一言も言ってないでしょ」

「なによ。朧こそ、馬鹿の一つ覚えみたいにひんやりクールなんとかって。まずはあんたの頭を冷やしなさいよ」

「なんですって。頭を冷やすのは真理奈の方でしょ」


 なんでもいいけど、先輩たち、私がちっちゃいからって、頭越しに喧嘩をするのはやめてください。

 なんだか私が怒られてるみたいで怖いです。


「ほら朧。佐倉ちゃんが怯えちゃったじゃない。ごめんね。佐倉ちゃん」

「なによ。私だけが悪いみたいに。大丈夫? 佐倉ちゃん。ごめんね。泣かないで」


 泣いてませんよ。

 ちょっと怖かったけど。


 あんまりにも私が怯えた顔をしていたからか、先輩たちは喧嘩をやめて私の機嫌を取りだした。

 ああもう。なんなのこの状況。


「ねえねえ。お詫びに帰りにケーキ奢ってあげるよ。そうだ。桃坂と佐藤くんも誘う?」

「ちょっと朧! 抜け駆けはダメだからね! それより今度の休み、遊びに行かない?」

「真理奈! 話の途中に割り込まないで!」

「……!」

「……!」

「……」


 このところ、なぜか登校時間に私に纏わりついてくる二年の朧先輩と真理奈先輩は学校でも有名人だ。

 美人系代表の朧先輩と可愛い系代表の真理奈先輩。

 どちらも男女問わずファンの子が多い。

 その二人がなぜ一般人代表である私に構うのか。

 


 その理由が分かったのは文化祭の詳細が発表された日のことだった。



「ベスパコン?」


 みんなで文化祭の日程を確認していたら、不思議なワードを発見した。


「ああ、それはね、後夜祭のメインイベント、ベストパートナーコンテストのことよ」


 首を傾げていたら、実行委員の里香ちゃんが説明してくれた。


「ベスパコンにカップルで出るのは、全女子生徒の憧れだよ。佐藤先輩、今年は出るのかなぁ。去年はなんだかんだで出なかったみたいなんだけど、佐藤先輩のパートナーの座を狙ってる人多いんだって」


 ふうん。そうなのかぁ。

 もしかして佐藤先輩は理子先輩とベスパコンに出たかったりするのかな。

 でもまだお付き合いも申し込んでないんだし、理子先輩が遊び感覚でベスパコンに出るとは思えないな。


「こころは桃坂先輩と出るの?」

「出る訳ないでしょ」

 

 里香ちゃんから飛び出てきた思いがけない言葉に、目を丸くして即答する。

 なぜに私が桃坂先輩と。

 なのに里香ちゃんは心底不思議そうな顔で続けた。


「なんで? 付き合ってるんでしょ」

「付き合ってませんから」

「え~~~~。結構夏休みの目撃談、多いんだけど」

「それは佐藤先輩の……」


 いけないいけない。佐藤先輩の片思いについては他言無用だ。

 不自然に言葉を切ってしまったけど、誰も気にする様子もなく会話は続いていく。


「佐藤先輩? あ、そう言えば、二年の朧先輩と真理奈先輩、佐藤先輩とベスパコンに出る宣言したんだってね」

「あの二人、佐藤先輩の彼女候補本命だもんね~。そっかぁ。とうとう宣言したのかぁ。どっちが佐藤先輩の彼女になるんだろう。こころは桃坂先輩から何も聞いてないの?」


 なんで私が桃坂先輩から何か聞かされなきゃならない……あれ?

 はっと私の頭に一つの仮説が閃いた。

 もしかして朧先輩と真理奈先輩も、私と桃坂先輩が付き合ってると思ってるとか?

 だとしたら、二人が私に纏わりついてる理由って、これ?

 桃坂先輩と付き合っている (これ誤解) 私と仲良くなったら、桃坂先輩の親友である佐藤先輩に一気に近付けるとか思ってるの?


 はあっ。

 全力でため息が出てくるよ。

 明日、桃坂先輩と私はなんでもないって、早速誤解を解かなくちゃ。

 ただ一つ大きな問題は、ふたりが喧嘩しないで、ちゃんと私の話を聞いてくれるかだけど。

 誤解がちゃんと解けますように……。






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