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新学期です

 夏休みが終わって、久々の学校です。

 私立M高等学園一年一組佐倉こころ。結構焼けました。

 それというのも一学年上の佐藤文哉先輩と桃坂静流先輩に、夏休み中引っ張り回されたからです。

 学校一のイケメン佐藤先輩は、私が仲良くしている一之瀬理子先輩に絶賛片思い中。

 親友の桃坂先輩の協力を得て、理子先輩のハートを射止めようとがんばっているんだけど、それになぜかお決まりのように私まで借り出される毎日だったのだ。

 まあ理子先輩が佐藤先輩と二人きりでお出かけなんて、断るに決まってると思うし。

 だからといって男二人と理子先輩だとバランス悪いしってことなんだろうけど。

 おかげでこの夏休み、前半は学校の夏期講習で忙しかったし、後半はあっちこっちに遊びに連れていかれ、ゆっくりする暇もなかった。

 夏休みの予定を聞かれたときに、忙しいと言っておけばよかったとつくづく思う。

 

 新学期は、まずテストで始まる。

 うちの学校は一学年九クラスあって、そのうちの二クラスが国立大を目指す特別進学コース、四クラスが四大を目指す進学コース、残り三クラスが普通コースと成績順で分かれている。

 一応、私は特別進学クラスに所属している。

 自分のわがままで、自宅の近くにある県立高校に進学せずに、何かとお金のかかる私立高校を選んだ私は、親への罪滅ぼしという訳ではないけど、県内にある国立大学が第一志望だ。

 うちの学校のいいところは、勉強したい生徒には勉強できる環境を与えてくれること。

 七限授業のあとは、自分のやりたい教科の先生の教室に行って勉強することができる。

 もちろん自由参加。

 集まる学年もバラバラ。

 授業ではないから、分からないところはどんどん質問できるし、自分のペースでどんどん進められる。

 塾なんて必要ないから結構お得感あるよね。

 入学当初、誰も知り合いのいない私は、授業のあと一緒に遊ぶ子もいなかったし、家に帰っても誰もいない状況だったから、この自習教室に積極的に出ていた。

 偶然理子先輩に再会したのは、この自習教室だ。

 あー、でも、この自習教室がなかったら、理子先輩とのつながりが桃坂先輩たちにばれることもなかったし、利用されることもなかったんだなぁ。

 そんなことを考えながら、今日も私は自習教室に向かった。


「うわ。一杯か」


 教室をのぞいて思わずつぶやいた。

 数学の教室は満員御礼だ。

 明日は数学のテストもあるし、しょうがないか。

 教室に入るのは諦めて歩き出した廊下の先に、こっちに向かって歩いてくる理子先輩たちの姿を見つけた。

 その隣にはやっぱりというか、佐藤先輩と桃坂先輩が歩いている。

 理子先輩、この二人にこんなにくっつかれてて、大丈夫なんだろうか。

 佐藤ファンに意地悪とかされてないのかな。

 

「ここ、どうしたの? 入らないの?」

「うわぁ。満員だ」


 理子先輩の声と教室を覗き込んでいた桃坂先輩の声が重なった。


「ほんとだ。出遅れちゃったね。テスト期間だから仕方ないか」

「どの道、今日は先生に相手にしてもらえないだろうし、図書室でも行く?」


 理子先輩に早速提案する佐藤先輩。

 家に帰って一人で勉強するという選択肢は全くないんだな。


「そうだねぇ。ここも一緒に行く?」


 理子先輩のお誘いに快い返事をしたいのは山々なんだけど、後ろの二人組と一緒に勉強するのは心から遠慮したいと思う。


「あー、私は帰って……」

「じゃあ行こうぜ! 早く行かないとまた席がなくなるかも」


 だからなんで桃坂先輩、私の腕を掴んでるんですか。

 私は帰って一人で勉強しますってば。

 聞いてます?


「遠慮すんなよ。わかんないとこは教えてやるぞ」って。

 

 結構です。

 遠慮じゃないです。

 てか引っ張らないでー!!

 一人で歩けますってば!!

 

 

 

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