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突然の襲撃

 

 正直、そのあとの記憶は曖昧だ。

 なんと言って先輩たちのテーブルを離れたのかも、先輩たちがいつ教室を出ていったのかも、全く記憶にない。大丈夫か? 私。

 

「お疲れー。こころー。交代の時間だよー」


 里香ちゃんの声に我に返ると、いつの間にか交代の時間になっていた。

 それでも誰にも突っ込まれなかったから、多分カラーねこの仕事は無意識のうちにこなしていたんだろう。私、エライ!


 隣の空き教室で着替えを済ませ、さあ自由時間になったけど、どうしよう。

 私が仲良くしている数少ない友達のさっちゃんはこれから二時間、黒ねこに変身しちゃうし、一緒にウエイトレスをした四人はみんな彼氏と一緒に回る約束をしてるみたいだ。

 


 とりあえず、朧先輩と真理奈先輩に来てって言われてたし、覗きに行ってこようかな。

 お疲れーと言う委員長に手を振って、私は二年教室棟に歩き出した。

 


 二年教室棟に行く途中で、やきそばとフランクフルトの屋台が出ていた。

 こういう、電気ではなく火を使う場合は屋外のテントで店を出す決まりなのだ。

 うわ。美味しそうな匂い。

 そう言えばそろそろお昼だよね。

 お腹が空いてきたのを急に自覚する。

 一人飯っていうのも淋しいけど、あと二時間、さっちゃんが来るまで待つのは辛い。

 どこか人気のないところで食べればいいか、と私は焼きそばの列に並んだ。


「あらあら。今日は珍しくひとりぼっちなんだ~」

「本当だ。そう言えばいつもと違うメンバーだったよね」

「はっきり言われたんじゃない? 修羅場になってたって噂だし?」

「別にこの子じゃなくてもいいんだよね~。静流くんは」


 桃坂先輩の名前が出るまでは、自分に話しかけてきたとは思っていなかった。

 驚いて振り向くと、私の後ろに並んだ女子生徒三人が嫌な笑いを浮かべていた。

 三年生か。そういや桃坂先輩って、年上のファンが多そうだもんね。

 どうしよう。何か言うべきかな。

 でも何を言えばいいのか、よくわからない。

 

「いらっしゃい。ご注文は?」


 ちょうどタイミング良く、私の番が来たので、お金を払い焼きそばを受け取る。

 そのままその場を離れようとした私を、彼女たちは鋭く呼びとめた。


「ねえ、何か言うことはないの? ちょっと可愛いからって、調子に乗らないでよね」


 いや、別に私は可愛くなんかはないのですが。


「もう静流くんに纏わりつかないでくれる? ベスパコンも辞退したらどうなの?」


 纏わりついてるつもりは、ないけど。

 でも周りから見たら、そう見えるんだろうか。

 今日ねこカフェで見た、桃坂先輩と石川先輩の姿が脳裏に浮かぶ。


「あの……」


 ベスパコンだって出たいなんて一言も言っていない。

 それにベスパコンの桃坂先輩のパートナーは別の人になったんだし。

 言いたいことはいっぱいあるんだけど、何をどう言えばいいのか頭が混乱する。

 上手く言葉に出来ず、口ごもる私に、彼女たちは苛立った表情を浮かべた。


「もう! 苛々する!」


 突然、一人の先輩が手を振り上げた。

 うそっ。まじ!?

 こんなときなのに、なぜか先輩の爪が綺麗にネイルされているのが、はっきりと目に映った。



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