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もしかしたら、ここってテーマパークみたいなもので、皆さんの服装は凝ったコスプレと言えなくもないが。

が!

そもそもだ。

この状況って、自分ちのトイレのドアを開けたらこうなってるじゃない?

あの時点でおかしい……とは思ったけど、何せ膀胱が危機的状況だったしな!つられて私の思考回路も崩壊していたがな!

生理現象による成人女性としての矜持は保たれた訳だが、すっきりさっぱりした状態で落ち着いて考えたら、どうにも首を傾げる事ばかりで。

私の家のトイレのドアの向こうに誰かが無理やりテーマパークを造って、ドッキリよろしく私を騙くらかしてるって可能性も、まああるかもしれないが。でもそんなんで誰が得をする?

そして問題は窓の外。

私は本日の業務を18時に終えて家に帰って来た訳だ。つまり、外はもう陽が落ちて暗かった。

で、私の目にはこの部屋の窓の外に男性が見えるのだ。綺麗に整えられた庭も、はっきりと。

つまり、外が陽が射して明るいのだよ!?

いつの間に戻ってきたんだ、太陽!?今日から西から昇る事にしたのか!?

落ち着いて考えているようでそれなりに混乱していたらしい私に、目の前に座った可愛らしいお姫様――マリエルがにっこりと笑顔で私の質問に答えてくれた。


「ここは――と訊かれましても。ここはわたくしの屋敷ですわ。街の名で言うなら王都エーベルシール。国名でしたらサファリスですわね」

「サファリス……エーベル……」


そんな国、あったか?

元々地理は苦手だし、知ってる国なんて有名どころだけだ。

それでもこれだけは断言できる。

日本の中にはそんな国は無いよ!しかも、私の家のトイレの向こうとかありえないよ!


「ミァコ。わたくしもあなたに訊ねたい事があるの」

「……はい。何でしょうか」

「あなた、どちらからいらしたの?」


正直に答えていいだろうか。

自分の家のトイレからだって。

でもさ。

信じてもらえなかったら、なんか拙い事になる気がするんだ。

だってさ。

庭からテラスを通って部屋に入ってきた男の人がね。その手がね。

しっかり腰の剣の柄を握ってるんだよ~!

明らかに不審人物だって疑っているよね!?

もしかしてバッサリ斬られちゃう!?

だらだらと冷や汗を流しながら、私に言えることは一つしかない!


「あの、日本って知ってますか?」

「ニホン……いいえ」

「私は日本という国の、自分の家でドアを開けただけなんですが……」

「ミァコのお宅?」


 私の名前を言い難そうにマリエルが口にする。


「はい。で、開けたら何故かここに……」


嘘は言っていない。なのに、このひしひしと迫る危機感は何だろう――って、そこの剣を構えた男の人だよ!怖いよ!?仕舞って仕舞って、そんな物騒なもの()


「リック。剣を納めなさい。ミァコが怯えてしまっているわ」

「マリエル様、彼女は誰です?」

「さあ?今それを訊いているところなのよ」

「つまり不審者ということですね」


リックと呼ばれた男の人の目が眇められる。

怖い。怖いよ!

もうね、背中を流れる汗が止まらないよ!

お願いだから睨むのやめてえぇ!


「リック。あなた、ニホンという国を知っていて?」

「……いいえ。耳にした事はございません」

「ミァコはそこから来たのですって」


男の人の不審そうな目は怖いが、やっぱりマリエルが呼びにくそうに私の名前を口にする事の方が気になる。


「あ、あの!」

「なぁに?」

「ミヤコと呼びにくかったらミヤと読んでください」

「ミア?」

「ああ、それでいいです。呼び難そうだったので……」

「まあ。ではミアとお呼びしますわね」


楽しそうにマリエルは笑っているが、リックはにこりともしない。メイドさんは……ちらりと横を見たら我関せずを貫いておりました。うん、すごいな。

そういえば、私がこの部屋に入ってきたドアってメイドさんの向こうにあるやつかな?もしかしたらそこから戻れるんじゃないだろうか?


「あのあの!」

「どうしたの?」

「ちょっと、あそこのドア開けてみてもいいですか?」


訊ねるとマリエルはちょっとだけ首を傾げて(こういう動作がやたら似合ってて可愛いな!)頷いた。


「マリエル様!」

「ドアを開けるくらい、なんですの」


咎めるようなリックの声にも平然としていて、何だかびくびくしている私の方が情けないような気分だ。……ちょっと落ち込む。

とにかくこの妙な状況から脱する為にも、ドアの向こうがどうなっているかは大問題。

まあ、期待はしていなかった――――んだけど。

かちゃりと開けたドアの向こうには、狭いながら見慣れた我が家の廊下がありました。


どうゆうこと!?


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