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卒業式
数日後、できあがった千羽鶴を学年主任に頼み辻川先生に届けてもらった。
「先生も奥さんも皆にありがとう。って言ってたよ」
そう学年主任から聞いた。
三年生になっても辻川先生は戻って来なかった。
時折、他の先生から話を聞いた。
「辻川先生はだいぶ危ない状態やけど頑張ってはる」
私はそれを聞いて不安で仕方がなかった。
小学校の時に祖母やピアノ教室の理事長、一人の恩師をすでに亡くしていた。
「また、私は誰かを失わないとダメなのか」
そう思いながら辻川先生の復帰を願った。
中学時代で先生に会えたのは卒業式…
前々日の最後の全体予行練習の日に辻川先生は来てくれた。
「俺は卒業式当日は医者に止められて来られへんかもしれん…
お前らが俺の最後の生徒になるかもしれんから
ここで予行ではない卒業式を見せてくれ」
そう言われ皆が真剣に本番のように卒業式の予行をした。
練習が終わり先生は「ありがとう」と言って帰って行った。
卒業式当日…
先生は来てくれた。
だいぶ無理をしていたように思う。
けれど、嬉しかった…




