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学園への道

 玄関を出て空を見上げる。

 春とは思えないほどの強い日差しが全身に降り注ぐ。

 ん~いい天気だ。

 僕は精一杯伸びをしているといきなり後ろから抱きつかれた。

 結構衝撃があって前に倒れそうなのを声を出して踏ん張った。

「もうキー姉! 抱きつくのはいいけど、少しは加減してよ!」

「アハハ! ゴッメ~ン!」

 黄花姉さんは、笑顔で僕の体をギュッとした。こうやって朝に抱きつかれるのは、もう日課になっている。

 まあ、朝だけでなく、僕を見かけたら所構わず抱きついてくるんだけどね。

 ふと左手を握られた。

 見てみるとそこには青流姉さんがいた。

「さあ、行きましょう天満さん」

 僕は返事をして歩き始める。黄花姉さんは、右手を握る。

 まさしく両手に花状態なのだが、いかんせん実の姉なわけで、しかも学園でも大人気美人三姉妹の方々でもあり、こうして登校するのはハッキリ言って恥ずかしい。

 よりにもよって今日から高校生活が始まる僕としては、できればもっと距離を置きたいとか思ってるわけなんだけど…。

 二人の顔を見たら、どうしても手を離してくれないようだ。

 僕は深い溜め息を心の中でしていると後ろから声が聞こえた。

「相変わらずイチャシス全開だな」

 そこにいたのは、短髪の髪を逆立てた親友というより悪友の新垣剣斗あらがきけんとだ。ちなみにイチャシスとは、イチャイチャシスターズの略であり、仲が良過ぎる僕達を見て剣斗が名付けた余計な肩書きだ。

「あ、おはよう剣斗」

「お~っすケント!」

「おはようございます剣斗さん」

 僕達三人は一様に剣斗に挨拶をした。

「おはようさんです。また今日からよろしくです。青流さん、黄花さん」

 剣斗は姉さん達を見て挨拶したが、ふと首をかしげた。

「あれ? 赤世さんは?」

「何か用事があるって言って先に出たよ」

 剣斗はふぅんと唸って、また笑顔にもどった。

「珍しいこともあるんだな」

「ん~アカ姉のことだから、新入生相手にまた何かやるんじゃないかな?」

「中学の時みたいなやつか?」

 剣斗は嬉しそうに言った。そう、中学の時、今日みたいに新入生が登校する日、アカ姉はある催し物を行った。

 それは、運動会でもよくある競技の一つである借り物競争だ。

 新入生全員に封筒が配られ、その中に書かれてる物を探して赤世姉さんの所へ行かなければならない。

 もちろん登校初日にいきなり借り物競争とか言われても、普通は誰も相手にしない。

 だが、この催し物の優勝者には、生徒会からの素敵なプレゼントがもらえる。

 プレゼントの内容はハッキリ言って誰にも魅力的なものばかりだった。

 学園生活を間違いなく有意義に暮らせるくらいの条件を天秤にかけられたら、どんなに興味が無くても、是非優勝を狙いたいと思ってしまう。

「今回はどんなことすると思う?」

「嬉しそうに言うなよ剣斗。どうせまたとんでもないことが起こりそうで嫌なんだから」

 僕はこの後間違いなく何か起こる予感がして身震いした。

 はあ、急に学園へ向かう足取りが重い。

 アカ姉、頼むから平和に過ごさせて。

 そんなふうに、きっと届くことのない願いを心で般若心経を呟くが如く唱えていると、目の前に学園が見えてきた。

 願いは、音を立てて崩れていった。

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