三人の姉
今日の朝食はトーストにハムエッグにサラダ、そしてコーンスープ。
こんなメニューを毎朝四人分作るわけだが、もちろん手抜きはできない。
特に長女の赤世姉さんは手抜きが大嫌いであり、中途半端なことをしようものなら、破滅の電気アンマが待ってる。
以前寝坊してしまい、おかずが一品しか作れなかった時があったが、その時はあまり時間もなかったせいか、軽く泡を吹く程度まで股関を責められたくらいで許された。
これで軽くなので間違わないようにしてほしいのだが、赤世姉さんが本気になれば、気絶しても無理矢理起こされ、何度も昇天させられる。
僕だけでなく、よく失敗する父さんや黄花姉さんも、そのペナルティーは経験済みである。だから誰も逆らえないのだ。
「うむ、今日もまあまあの味だぞ天満」
そりゃ良かった。どうやらお気に召したようなので安心した。
腰にも届く長い黒髪を揺らしながら赤世姉さんは笑顔になった。
「いつもありがとうございます天満さん」
同じ長髪だが、青みがかった髪で、先の方でくくり、胸の前に携えてる青流姉さんも、笑顔を向けてくれた。
「うんうん♪ いっつもウマいよテンマ♪」
嬉しそうに言うのは、金髪を肩まで伸ばした黄花姉さんだった。
「でも嬉しいな♪ 今日からまたテンマと同じ学園に通えるんだもんね♪」
「はあ、でもキー姉、中学みたいにいきなり僕のクラスに来たりしないでよ」
「え~何で何で? いいじゃんよ~」
黄花姉さんは、中学の時、いきなり僕のクラスに来て、僕を抱き締めたり、歌を歌ったり、僕の過去話をしたりと、好き勝手してくれた。
僕がどれだけ恥ずかしかったかもしらないで、いや、僕の恥ずかしがってる姿をみたくてやってるんだろうけど。
高校こそは静かな学園生活を送りたい。
ま、姉さん達がいるんだからほとんど諦めてるけど、それでも一応は希望として持っておきたい。まあ、無理だろうけど。
「だ~め」
「ぶ~ケチ~! いいもんいいもん、そんなこと言っても勝手に行くもん」
ほらね、何言っても無駄でしょ。
「そういえば天満さん、また剣斗さんと同じクラスになれたみたいですね」
「うん、本当にアイツとは腐れ縁だよ。まさか小学校からずっと同じクラスだなんて、正直呪いじゃないかって思ってるくらい」
「ふふ、ですが一生を通じて仲の良いお友達に恵まれるのは喜ばしいことですよ」
「そだね」
僕と青流姉さんは互いに笑い合った。
「さて」
いきなり赤世姉さんが立ち上がった。
「どうしたのアカ姉?」
「今日は少し早めに行かなければならないんだ」
そう言って赤世姉さんは、身支度を整えて家から出て行った。
何か学園に用事でもあるのかな?
残った三人で食器を片して玄関に向かう。
さて、今日から高校生活が始まる。
何事もなく平和に過ごせればそれが一番だけど、僕の思いがその日に破れるとは、玄関を揚々と出た僕には予想もしていなかった。