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姦~霊能三姉妹の怪奇事件簿~  作者: 乙丑
第三話:窮奇(かまいたち)
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肆・未遂 

「皐月ぃっ! ちょっと霊視してくれない?」

 給食の時間、飯塚いいづか萌音(もね)に突然そう言われた皐月は、口に含んでいたお茶を吹き出してしまう。

「ちょ、変な事云わないでよ!」

 皐月はあたふたと汚れた机の上を拭いたり、何事かと思って皐月の方を見る他の生徒たちに謝りを言ったりしている。

「いやね昨日さぁ、ちょっと怪我しちゃって、脹脛を何かで引っ掻いちゃったみたいでさ?」

「――脹脛?」

 皐月は萌音の脹脛を一瞥するが何ともなっておらず、疑うように萌音の目を見た。

「いや本当だって、気付いた時には血がドバドバッて」

「ご飯食べてる時にする話じゃないでしょ?」

 他の生徒にそう云われ、萌音は話を止める。

「昼休みに話すから、教室に残ってて」

 そう云われ皐月は頷いた。


 それから昼休みに入るチャイムが鳴り、教室に残っている生徒、校庭や他のところへ出て行く生徒と教室内はまばらになっていた。

「それで話って?」

「だから脹脛に何か取り憑いてないかなって」

 そう云われても皐月は霊視が出来る訳ではない。

 以前の話で説明しているため細かいところは割愛するが、皐月は霊というものが見えない。

 そもそも萌音の脹脛からは妖気すら感じられないでいた。

「どこで怪我したの?」

「えっと、たしか駅前の――」

 皐月が通り魔が起きている場所と聞き返すや、萌音はそうそうと相槌を打った。

「それって昨日の話よね?」

「うん。学校に帰ってから駅前のスーパーに買い物に行ったその帰り」

「それで誰か近くにいた?」

 その問いに答えるように萌音は首を横に振る。

「近くに花壇があったりとか」

 そう尋ねるが否定するように萌音は手を振った。

「――でさぁ? 実際のところどうなのかなって」

「怪我をしたのはたしかなのよね? それなのに起きた時には既に治っていた」

 皐月は何かを考えながら、マジマジと萌音の脹脛を見ていた。


「まさかねぇ……」

「え? 何? なんかわかったの?」

「白昼夢とか?」

「っなわけないでしょ?」

 皐月がボケるや萌音はツッコミを入れる。

「ごめんごめん、うちは神社だけと霊が見えるとかそう言う力はないし」

「そうなの? それじゃ無駄骨だったかなぁ……あっ!」

 萌音が自分の席に戻ろうとした時、何かを思い出したのか慌てて皐月を見遣る。

「昨日の夜さぁ、あそこで殺人事件が起きたって……恐いよねぇ? 全く町の役人は何してるんだか……」

 そう云うや、萌音は自分の席に戻っていった。


 皐月は確定してはいないがあるひとつの考えが浮かんでいた。

 それは“かまいたち”の存在である。

 しかしそれは弥生も感じていた疑問であり、弥生が襲われたのも“かまいたち”というのなら萌音を襲ったのも“かまいたち”という事になる。

 かまいたちは“鎌鼬”と書かれる事から鎌を持った鼬と考えられている。

 科学的に云えば“旋風つむじかぜによる負圧が人の肌を裂く現象”とも云われている。

 余談だが、某有名医者漫画に森の中でロケットを発射する施設があり、その発射による風圧によって一時的に科学証明でのかまいたちが引き起こされるという描写がある。

 またかまいたちの伝承が東北地方に多い事から、あかぎれ(急激な寒さによって皮膚が裂ける事)ではないかという説もある。

 が、皐月がそんな小難しく面倒な考えがある訳ではなく、もうひとつの方を考えていた。


 それは一匹でのかまいたちではなく三匹でのかまいたちだった。

 一匹目が獲物の足取りを止め、二匹目が皮膚を鎌で切り裂く。

 が、三匹目が持っている傷薬によって、その傷はなかった事にされるという。

 皐月は今さっきまで相談していた萌音の話を聞く限りではそう考えてしまっていた。

 だが昨日の夕方弥生を襲ったのは一体なんだったのだろうか……

 そう考えているといつの間にか昼休みは終わりを迎えようとしていた。


皐月の友人に名前を入れてみました。

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