拾壱・子供
浅葱橋の手摺に、橋姫である浅葱が足をブラブラさせながら座っている。
彼女は橋を行きかう恋人や家族を見ながら、彼らがこれから先も、幸せであってほしいと願った。
そうでなければ、自分が望んで人柱になったのか、わからなくなるのだ。
浅葱がこの橋を護る神となったのは、孤立していた遊郭にいる遊女たちが、見世物小屋にくる客以外の男と知り合い、あわよくば、結ばれてほしいと思った。
それはかつて自分が民宿街の若旦那であった喜助を好きになったことに対しての答えである。
ただ、今は数年後の李夢と穐原が幸せであってほしいと心から願っている。
そうでなければ、大禿の思いが無駄になってしまうからだ。
大禿はあの火事の時、李夢だけを助けようとしたが、李夢はそれを拒否した。
大禿はその行為に理解出来なかったのだ。
自分を痛めつけている母親を護ろうとする李夢に困惑しながらも、大禿は二人を護ったのである。
「人は変われる。変われなかったら、またあなたが李夢を助ければいいでしょ?」
浅葱はそう言いながら、ゆっくりと姿を消した。
空は快晴。雲ひとつない。
人の心も、そんな風になればいいのにと、浅葱は思っていた。
はい。第十三話終了です。感想なんかありましたら、よろしくお願いします。